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沙耶は回廊を一周した。だが、ただ茫然と美景に酔っていた訳ではない。沙耶の集積データは、東京23区人口→13,215,048人(H24.9.1)という数値データを瞬時に抽出していた。

『狭いのに、寿司詰め状態なのね…』

 つぶやく沙耶は、にべもなく即答で判断した。そして、小声ながらも冷静に言い切った。ただ、冷たい感情などではない。事実、入力データに寸分の違いもなかった。丁度、昼時となり、「少し早いけど、お食事にしない」と、小さい子供連れの親子の会話が沙耶の耳に聞こえてきた。食事・・保に作る料理・・人の生命維持行為・・人の食欲を満たすための行為・・社交場にも使用される・・政治家の場合は特に料亭・・日本の食文化・・世界的にも恵まれた日本の食文化・・飽食の時代の現代日本・・食料自給率が低い日本…。結果、沙耶の予測システムは数十年後の日本の姿を予測した。

『だめだわ…。私はいいけど、みんな、どうするのかしら?』

 厳しい予測結果に、沙耶は少し躊躇ちゅうちょした。だが、正常な沙耶ならこういう発想にはならなかった。それはプログラムを組んだ保が一番よく知っていた。では、問題が発生したのは・・。そうである。スクランブル交差点の雑踏が引き起こす微細な振動騒音に、その因があった。以前、保がプログラム修正した電磁波バリア(シールド)は完璧に機能を果たしていた。だが沙耶の耳から入る音圧レスポンス(反応)には、何の処置もされていなかったのである。その耳に入った微細な振動騒音が感覚機能を少し狂わせたのである。

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