11 『ランナー』
11 『ランナー』
月曜日。
「学校」は相変わらず、巨大な工場のように稼働していた。
チャイムが鳴り、生徒たちが廊下を行き交う。
僕もまた、その中の「生徒A」として席に座り、窓の外を眺めていた。
しかし、世界の解像度は少しだけ変わっていた。
教室の中央で、月島レイナが談笑している。
彼女は相変わらず完璧な笑顔で周囲を魅了しているが、時折、ふと窓際へ視線を投げるようになった。
目が合う。
ほんの一瞬、コンマ数秒。
彼女は誰にも気づかれないほどの自然でゆっくりな瞬きをした。そして、また優等生の仮面を被り直す。それは僕たちだけの秘密のサインだった。
放課後になれば、僕たちはまたあの場所へ行く。
生物準備室の隅。オレンジ色のランプの下で、羽毛が乾き、ふわふわになった黄色い雛が、ピヨピヨと元気に鳴いているはずだ。
そして、その横で僕は、傷だらけで泥まみれの、世界で一番かっこいい「ガンダム」を完成させるのだ。
もしかしたら、その手にはまた、購買で勝ち取った「メロンパン」が握られているかもしれない。それをレイナに奪われているかもしれない。
僕たちはまだ、この閉鎖的な学校という枠組みの中にいる。
ランナーから切り離されるその日まで、もがき続けるしかない。
でも、大丈夫だ。
僕たちの胸の奥には、あの時指先で感じた、確かな熱が灯っている。
成形色の青の空の下、僕たちは自分たちの熱を抱いて、今日を呼吸しているのだから。
第一部 完
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
このep.011『ランナー』で『プラスチック・ブルー』第一部は完結となります。
第二部につきましては、構想の練り直しと執筆の時間を半年ほどいただく予定です。
再開は10月頃を目標にしています。
しばらくお時間は空けてしまいますが、続きをお待ちいただければ幸いです。
追伸:
『プラスチック・ブルー』とは別に、テーマにこだわらない短編も執筆しております。
『プラスチック・ブルー』の世界と交差する物語もあるかもしれません。
もしどこかでお目に留まることがあれば、その時はよろしくお願いいたします。




