夢の内容を決めましょう
主人公視点です。
アレクとミラはニスが塗られた黒い木製カウンターを挟んで、椅子に座り、向かい合っていた。
アレクは、考えあぐねていた。
木製でニスが塗られた白い丸椅子に座らせているミラについてだ。
歩き方、発音の仕方を考察すると庶民に頑張って化けているようだから、にじみ出る高貴なオーラ。
明らかに貴族、思い詰めた表情をしている。
下手に突っ込めば厄介ごと待ったなし。
無難に夢の内容だけ聞いていこう。
アレクは営業スマイルを作りながら、話しかける。
「それでは、夢の内容について話しましょう」
「口に出すのが恥ずかしいので紙に書いてきました」
ミラは顔を赤めて、カウンターの上には、びっしりと文字が書かれた白かったであろう紙が二枚が置かれる。
「わかないところ、詳しくしたいところだけ聞いてください。」
そう言われて、紙に目を通す。
要約するとこうなった。
かわいい顔になりたい。
命をかけるような大恋愛をやりたい。
結ばれて、自分に似たかわいい娘を持ちたい。
田舎で穏やかな場所でゆったりと過ごして生活を送りたい。
「内容はわかりました。ですが、ストーリーを決めすぎてしまうと、自由度が下がります。
それに、夢から覚めることが遅くなりやすいです。
それでも構いませんか?」
遠慮しがちを装って、遠回しにやめておけという。
アレクは真顔でミラの顔を見てはなす。
「構いません。
私が一日いなくたっても誰も困らない。」
アレクから目を背け、店に飾られている蝶たちに執着が宿った目を向ける。
どこか諦めが入ったような表情は見せて、ミラはその夢をのぞんだ。
カタカタとガラス玉が当たる音がする。
地震かと思った。
しかし、アレクは気づく。
締め切りの室内のはずなのに風があること。
それがミラを中心に風がてでいることに。
「羨ましいの、愛に命を捧げることができた妹が。
羨ましいの、伝統に縛られずに好きな色を着ることができる人々が。
羨ましいの、自分に似た娘と一緒に劇団を見に行くこととかしたかった。」
それと同時に強い風が起こる。
このまま魔法が暴走してしまっては、店が壊れる。
アレクは諦めて、夢を作ることにした。
「わかりました。ではいまから夢を作ります。だから風を押さえて」
そういうと、風はぴたりと止んだ。
「すみません、私としたことが最近、魔法のコントロールが効かなくて困ってるんですよ」
申し訳なさそうな様子で、ミラは謝る。
「大丈夫です。お値段は夢を一から作るので、20,000リトほどです。」
アレクは、謝罪を受け入れつつ、値段を提示する。
20,000リトは一般市民にとっては平均給料の半分くらいだ。
だから普通の客は既製品の2,000リトから500リトの夢を買って満足する。
普通の人ならためらうところをミラはなんのためらいもなく出してきた。
アレクは思った。
今ほど2枚の1,000リト金貨の輝きが怖いと思うことはないだろうと。
「わかりました。これから作ります。」
これほど細かい夢を作るのには、すこし時間がかかる。
とりあえず、マティスの宿屋で待機してもらおう。
カウンターの後ろにある棚から蝶の形に折った紫色の折り紙を取り出し、ミラに手渡した。
「店の向かいにある宿屋で休んで待っておいてください。
できたら、この蝶が羽ばたいて知らせてくれます。
この蝶を受付に見せれば、案内してもらえます」




