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良い夢をみてください。

アレクは自分を褒め称えていた。

3時間で俺はよくやった!

拳大のガラス玉の中には、片方は青い羽、もう片方は白い羽で金色のラメが振られたような模様が入った蝶が入っていた。


ミラを店から、セフレが経営する宿屋に追い出した後、アレクは急いで、夢の作成に取り掛かった。

そうしなければ、自分の店やセフレの宿屋を含む一帯が竜巻にあったような被害になることが予想されるならだ。


アレクにとって、今の状態のミラは導火線が乾燥した状態の爆弾だ。

どれだけあのご婦人は、悩みを背負い込んでる。

誰が背負い込ませた。


この世界では、人は誰もが全ての魔法を持つことができる。

そして、利き腕のように得意な魔法などが存在する。

体の一部のようなものだが、時に魔法は暴走する。

欲望を抑え続けると、魔法が無意識に発動し、その欲望を叶えようとする。

たくさん眠りたい、食べたいなど単純な願いなら、起きてやればいい。

けれども、猫になり日向ぼっこしてごろごろしたい、人魚になって綺麗で広い海を漂いたい、理想の王子様と結婚したいなど現実では難しいこと。


それらを夢で叶えることにより、魔法の暴走を防ぐことを生業としているのが、夢魔法使い。


しかし、魔法の暴走などは一年に2回あるかないか。

アレクを含む彼ら、彼女らは普段娯楽として、夢を提供し、生計を立てている。

アレクは、この場所で暴走しかかった人などの相手をすることはここ数年なかった。

この街の人々は暴走する前に、精神的に疲れてきたと思ったら、アレクのもとや宿屋を訪れて、夢を見せてもらっているからだ。



出来たことを知らせようとし、棚から、ミラに渡した折り紙の蝶と対となる蝶を取り出し、魔力を流した。


そうすることにより、ミラに渡した方の蝶は羽ばたき、ミラに夢ができたことを伝えてくれる。

すぐに来るだろうと思っていたが、来ない。

5分は待った。


ここと宿屋とは徒歩1分の近さだ。

何かあったのかと思い、アレクはガラス玉を持ち、宿屋に向かう。


外は夕暮れ、日が沈みかけ。

ただでさえ暗い通りをより暗くしていた。

鮮やかにペイントされた白い胡蝶蘭と白い花カマキリが彫られた木看板。

それを下げる扉を静かに押し開ける。

するとそこには、紫色の蝶を持った大男が立っていた。

男は、いきなり、アレクの両手を握ると言葉を頭の中に伝えてきた。


この宿屋は眠ること専用の宿屋だ。

すこしの物音でも、お客さんの睡眠を妨げるリスクがある。

伝心魔法や筆談を使って会話することが必須になっている。


「アレク、ミラ夫人は今、僕の睡眠魔法で眠ってる。」

男はアレクのセフレで、この宿屋の主人であるマティス・オーキンドである。

「こんな濃い色の蝶が来たのは、数年ぶりだね」


アレクは、自分の意志を伝える。

「お前が眠らせたってことは、もう彼女はかなり暴走しかかってるってことか」

マティスは整った顔の眉尻と口角を下げ困った顔を浮かべる。

「そうだよ。彼女、部屋の黄色のカーテンの色が嫌だって言っていきなり風魔法が出たから、眠らせたよ。」

「それは、いくら契約を結んでいるとはいえ、酷い目に合わせてすまない、あとで予定空けて、付き合う」

アレクは、恥ずかしがりながら伝える。

マティスはにっこりと笑みを浮かべた。

「彼女に夢を見せたいから、一度睡眠を浅くして、彼女を起こしてくれないか。」

そう伝えると、マティスはアレクの手をひきながら、宿屋の奥の部屋の一つに導いた。


ミラはベッドの上で、眉間に皺を寄せながら眠っていた。

アレクはその顔にせっかくの綺麗な美人なのに勿体無いと思った。

服装はローブから、眠る時のゆったりしたパジャマに変わっている。


マティスは、空いている左手をミラの頭の上にかざす。

するとミラの目が開き、寝ぼけ眼でこちらをみた。

完全に目を覚まし、魔法が暴走する前に夢を見させよう。

「ミラ様、夢ができましたよ。どうかいい夢を見てください」

ガラス玉をミラの額に優しく当てる。

ガラス玉の中の蝶がミラの頭に溶けるように消えていく。

ミラは再び目を閉じた。

先程とは違い穏やかな顔をしている。


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