復讐
奴隷の街を出てから数日後、王都に到着した3人は、宿を決めてからギルドに向かった。
ギルドの買取カウンターに行き、アイテムボックスに収納していた必要の無い物を売った。
その後、依頼ボードを確認した。
今迄は、字が読めず、受付で聞いていたが、今回は、アーシェとティナがいるので
2人に読んで貰う事にした。
「ナッシュ、今日依頼を受けるの?」
「受けないよ」
「わかった」
ギルドを出ようとすると冒険者の女性が声を掛けて来た。
「すいません、依頼を受けたいのですがメンバーが足りなくて
良かったら、一緒に行って貰えませんか」
「嫌です」
ナッシュは、バッサリ断りギルドを出て、市場に向かった。
「あの子達、どんな依頼を受けたんだろう」
「分からないけど、全然知らない人とは組みたく無い」
「そうだね、今迄いい思いしていないものね」
「うん」
「それに、ナッシュは、やる事あるでしょ」
「うん・・・・・」
3人は、市場で買い物をした後、ティナの武器と防具を買った。
「あたしの分を買って貰って良かったのですか」
「いいよ」
買い物を済ませた後、宿に戻り休んだ。
翌日、ギルドに行くと昨日の冒険者が、まだ仲間を捜していた。
「アーシェ、聞いて来てよ」
「気になったの」
「うん・・・」
アーシェは、仲間を捜している冒険者に声を掛けた。
「ねぇ、ちょっといい?」
「はい」
「どうして、依頼を受ける為の仲間を捜しているの」
「一緒に行って頂けるのですか?」
「内容次第かな、勿論事情も話してね」
「はい」
女性の冒険者は、話し始めた。
「私の名前は、セシルと言います。
前は、5人で依頼を受けていました。
ですが、ある時、とある貴族様の依頼をギルドを通さずに受けました。
その依頼に、失敗してしまい、賠償を要求されました。
その賠償が、山の向こうに住み着く盗賊から宝を奪い返す事なのです」
アーシェとナッシュは、その話を聞いた時に、
盗賊がもういない事が分かっていたが話を続けてもらった。
「それで、宝ってなに?」
「はい、宝飾品の付いた金の剣だと聞きました」
「そうなんだ、それで貴方の他の仲間はどうしているの?」
「貴族様の屋敷に囚われています」
「え!」
「もし、依頼が受けられないのであれば、
金貨100枚を支払わなければ仲間は解放されません。
どうか、力を貸して貰えませんか」
アーシェは、ナッシュの顔を見ると、ナッシュは頷いた。
「話はわかったわ、それでその剣を何処に持って行ったらいいの」
「はい、貴族様のお屋敷です」
「貴族の名前は、バウマン ラディッシュ様です」
ナッシュの顔色が変わり、怒りに満ち溢れていた。
「その剣の引き渡しに僕も付いて行っていい?」
「大丈夫だと思います」
「なら、行こうか」
「え?」
「盗伐は?」
「もう倒したよ、それとこれがあればいいのでしょ」
ナッシュは、アイテムボックスから剣を取りでして見せた。
「本当なんですね、有難う御座います」
「じゃぁ、行こうか」
「はい!」
ナッシュは、ギルドから出るとアーシェに話し掛けた。
「アーシェ、此処からは僕一人で行くよ」
ナッシュは、アイテムボックスから、お金の入った袋を取り出しアーシェに渡した。
「これ、全財産、当分の間は暮らせると思うから・・・」
「ナッシュ・・・・・」
「行って来るね」
ナッシュは、セシルと2人でバウマンの屋敷に向かった。
屋敷に着き、セシルが門番に伝えると屋敷の中に通され、応接室に案内された。
暫くして、バウマンが入って来た。
「これは、セシルじゃないか、約束の依頼は終わったのか」
「はい、終わりました」
「なんだと!」
セシルは、テーブルの上に宝飾品の付いた金の剣を置いた。
「これで、仲間を返して下さい」
バウマンは、嫌な笑みを浮かべた。
「返すわけがないだろう、この剣も、貴様も私の奴隷にしてやる。
そうすれば、仲間にも会えるしな」
バウマンが喋り終えると、剣を構えた兵士達が現れ、ナッシュとセシルを囲んだ。
「約束が違います!」
「この私が、何故、貴様ら平民との約束を守らないといけないのだ!」
「そんな・・・・・」
セシルが、崩れ落ちるところを見て笑いながら兵士に指示を出した。
「捕らえろ」
兵士が、2人を捕らえようとした時にナッシュは剣を抜き、切り捨てた。
「貴様、何をしたか分かっているのか」
「分かっているよ。それに、お前が5年前に僕の町で何をしたかも知っているよ」
「何を言っているのだ」
「お前が、5年前に、魔物が町を襲った後に、
やって来て、父さんや母さん、姉さんや町の人を殺したことを
僕は、知っているんだ!」
「お前は、生き残りか」
ナッシュは、返答せず、兵士達を殺し始めた。
周りを囲っていた兵士は次々に倒され、最後にバウマンだけが残った。
「ひぃぃぃ!
た、た、たのむ、許してくれ。
何でも欲しい物をやる、だからころさないでくれ・・・・」
「欲しい物をくれるの」
「ああ、やる、やるから」
「わかった・・・」
バウマンは安堵したが、ナッシュは、自分の欲しい物を伝えた。
「僕の欲しい物は、お前の命だ!!」
ナッシュは、バウマンの首を刎ねた。
「セシル、仲間を助けに行くんだ」
「ナッシュ君・・・・・」
セシルは、屋敷の牢屋に捉えられていた仲間を救出し、外に出た。
そこには、ナッシュが屋敷に向かって立っていた。
「破壊の神、シヴァの名において命ずる、我が目の前の物、全てをを塵にかえせ」
ナッシュは、静かに魔法を唱え、バウマンの屋敷と人のすべてを塵にした。
魔法が収まると目の前には、大きな空き地が広がっていた。
そしてナッシュは、その場を去って行った。
完結しました。
有難う御座いました。