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第020話

 それから一夜明けて、私達はアルファーノ王国に向けて出発した。出発の際、兵達が派手な見送りをしようとしたり、ナナコちゃんが一緒についてきたがったりしたが、全て断った。


「一応カっちゃんが身分証明書を書いてくれたから、ベタルリア国民の私達でもちゃんと扱ってもらえるはずだよ」


 そう、アルファーノ王国ではベタルリアの評判は良くない。基本的に貴族以上の振る舞いが傲慢で無礼すぎるからだ。そのため、アルファーノ王国内では、ベタルリアの民は例え冒険者であっても街の入口でかなり厳しい尋問を受けたり、行動制限をかけられてしまったりする。

 それでは依頼をこなすどころではないので、カっちゃんは私達用に身分証明書を発行してくれたのだ。これで私達は、アルファーノ王国でも普通に行動できるようになった。ありがたいね。


「先ずはアルファーノ王国の王都に行かないとね。さっさと用事はすませよう」

「そうね。海はその後よね」


 因みに、今の私達の移動手段は馬車だ。カっちゃんが目立たないけど丈夫な馬車と馬を用意してくれたのだ。


「でも、この馬車本当にあまり揺れないわね。普通の馬車だとお尻が痛くなってるわよ」

「カっちゃんが板バネを使ってサスペンションを作ってくれたからね。これでだいぶ馬車での移動が楽になったはずだよ」


 まぁ異世界もののテンプレだね。あいつ、そういうの好きだったからな。よく板バネなんて知ってたもんだ。


「前の世界では普通だったの?」

「うん、普通にあったよ。その代わり、向こうには魔法はなかったけどね」

「魔法が無いと随分不便よね。どうやって生活していたの?」

「魔法は無かったけど、科学が発達してたから、生活はこっちより快適だったよ。移動も馬車じゃなくて自動車ってのでもっと早く移動できたし。あ、でもゲートに相当するのは流石になかったな」


 カリーネさんが向こうの世界に興味深々だ。意外と好奇心旺盛なんだな。と思ってたら、他の二人も聞き耳をたてていた。皆興味あったのね。

 そう言えば、魔法はイメージなんだから向こうの知識があれば威力も上がるはずだ。私は自然にそれを行っているが、皆もその知識があれば泉玉アップになるだろう。


「向こうの科学を知れば、魔法の威力があがるかもよ」

「え、それどういう事?」


 私は火の燃えるプロセスや、空気中の大気生成等を教えてあげた。


「それじゃ、丁度休憩時間だし、ちょっとそこらへんで練習してみましょうか」

「そうね。ゲネートもやってみるでしょ」

「勿論だ」


 丁度開けたところに差し掛かったところで休憩時間になったので、一旦馬車を止めて魔法の練習をすることにした。

 魔法が使えないクワイトには、後で効率の良い体の動かし方を教えてあげよう。


「まずはファイア。手の平の上に火の玉を作る感じで」

「「ファイア」」


 うん、ちゃんと火の玉ができているね。それじゃこれから威力を上げよう。


「じゃあ、その火の玉に空気中の酸素を送り込むイメージをしてみて」

「「はい」」


 二人は火の玉を見つめたまま更にイメージを強くしていく。オレンジ色だった火の玉が、だんだん青白くなっていく。


「これ、色が変わったけど」

「青白いのは、すごく高温になったからだよ。それ、城壁だって溶かせるくらいあるからね」


 これが自然にできるようになれば、一人で城や砦も落とせるだろう。私はやらないが。

 こうして魔法組に科学を教えつつ威力を上げさせ、クワイトには人体についての説明を行った。これは身体強化等身体を動かす際に気をつけるべき点を押さえておくことで、より身体強化の効率を上げたり、スムーズな動作を行う事ができるようになるからだ。

 特にクワイトには、身体の動きの中でも「ねじり」と「円を描く動き」を意識してもらった。ねじった形から放つ攻撃は大きな威力を出すことができるし、太極拳等の動きに代表される円の動きは攻防一体だ。それが自然にできるようになると、クワイトはもう一段強くなれるだろう。


「さて、休憩も終わりっ。そろそろ出ないと明日中にアルファーノ王国に着かないよ」

「そうだな、そろそろ出発するか」


 私達は馬車に乗り込むと、アルファーノ王国目指して出発した。馬車の中は暇だし、ついでに馬車の中でもできる魔法の訓練を考えよう。



□■□■□■□■□■



「さて、姉御も出発したし、溜まった仕事片付けないとな…」


 魔王と言えども一国の王。当然ながら国に関わる仕事は沢山ある。いつもはきちんとその日その日のノルマはこなしていたのだが、姉御が来てからはそっちにかまけることが多くてノルマをこなすことができなかった。


「はぁ、誰か手伝ってくれないかなぁ」

「仕事を溜めた王が悪いのです。これでも不急のものは後回しにしてあるので、いつもよりも少ないんですよ」


 宰相がいつの間にか執務室のドアの前に居た。こいつ、いつの間に入ってきたのだ。


「何度もノックしましたがお返事がなかったので入らせて頂きました。明日からの兵の訓練カリキュラムと、こちらは農務省から上がっている試験栽培中の稲についての報告書ですね」

「おぉ、報告書が上がってきたか。何々、水耕栽培は上手くいっているようだな。このまま収穫までいければ、今度は水田開発だな」


 永らく追い求めてきた米がもうすぐ手に入る!僕のテンションは爆上げだ。味噌や醤油は既に作った。もうすぐ夢の日本食が食べれそうだ。

 あとは卵か。鶏はいるが日本ほど衛生管理が徹底していないので、生で食べるには魔法で殺菌処理をする必要がある。だが、それを行うだけの価値はあるのだ!


「王、そんなにあの米とかいう食物は良いのですか?」

「あぁ、米そのものは強い味は無いが、噛めば噛むほど味が出てくる。それに、ほぼ全てのおかずにあう食材だ」

「それは良いですな。では、仕事の続き、お願いしますぞ」

「あっ」


 いつの間にか机の上には、書類がうず高く積み上げられていた。おい、さっきまではこの半分以下だったような気がするんだが、どういう事だ。

 慌てて宰相の方を向くと、既にその姿は無かった。僕に押し付けて逃げたな。まぁ、確かに仕事を溜めた僕の責任だから、やらざるを得ないだろう。だけど、これはいつもより多いと思うぞ。


「失礼します。王、ナナコ姫がまた城を抜け出そうとして衛兵に捕まっておりましたが…」

「丁度良いところに来た!トーヤ、お前僕を手伝え!」

「えぇっ!できるわけないじゃないですか!私にだって仕事はあるのですよ!」

「それこそ他の奴らにさせれば良かろう。宰相のやつが山のように書類を置いて行ってしまったのだ。これを今日中に終わらせなければならん。逃がさんぞ」

「そんなぁ」


 魔王に捕まってしまった近衛騎士団副団長主従は、暫く執務室から出ることができなくなってしまうのだった。



□■□■□■□■□■



「ナナコ姫、外出される際は護衛をつけて下さい」

「そんなの連れたら、好き勝手に動けないではないか」


 私はナナコ。まだ赤ん坊だった頃、母上が父上と出会って二人は結婚した。その頃はまだ父上も王ではなくただの旅人だったそうだ。だが、色々と部族間を取り纏めて行くうちに国ができ、初代国王になってしまった。私も、姉に続いて第二王女となってしまい、それまでの質素ながらも自由な暮らしからお城での窮屈な暮らしを過ごす事になった。


「はぁ、リリンお姉様と一緒に旅に出たかったなぁ」


 リリンお姉様は勇者だ。普通、勇者と言うと悪い魔王を倒して世の中に平和を築くという使命があるのが普通にあるお話である。だが、魔王は父上だし、悪くもない。リリンお姉様も、それは知っていたのか闘いではなくお話しをしに来たと言っていた。

 お風呂では泳ぎ方も教えてもらえたし、模擬戦で稽古もつけてくれた。いつも部屋に居て外に出てこないアリスお姉様とはえらい違いだ。


「旅に出たいなぁ」


 私は再度溜息をつきながら、連れられるままに部屋へ戻っていくのだった。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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