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愛歌~アイノウタ~ (文化祭編)  作者: 遊斗
予想外過ぎる文化祭
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弟が弟なら、兄は兄☆

髪をさらりと肩から零して、礼を言うと気にしないでと微笑みながら背中をぽんとされる。それに対してもう一度頭を下げようとしたらぐいっと止められ、ハテナマークを沢山浮かべていると苦笑されてしまった。

「すぐに頭を下げちゃ駄目だよ。分かった?」

「はい比等さん」

「うん、素直で良い子だね」

髪をふわふわと撫でられたら自然に頬がゆるむ。

何だか面倒見の良いお兄さんって感じの比等さんは本当に色っぽくって、綺麗で――って、私は何を……。ふいっと視線を逸らすとクスクス笑われてしまった。

「ああもう。真っ赤になっちゃって」

「あ、ぁ……えっと」

「可愛い」

「うぅ……」

どうしよう……顔、まともに見れない……。

「いい加減にしろ変態」

ばこんとタウンページでぶったたかれて我に帰るみたいな顔をする比等さん。そしてそっか早く持って帰ろうと口走って再びタウンページの刑。


兄をタウンページで殴るなんて酷いよ比成黙れば殴らない無理だよそれはじゃあ殴るあっは凶暴だねタウンページの正しい使い方知ってるあぁ知ってるぞ変態を自重させる時に使うんだろ


数時間前のやりとりを思い出してクスリと笑みを零すウィル。


比成学園の兄弟校である比等学園の理事長である牙王 比等ひなと。(実際比成と比等は兄弟)

実は警備が一番優れているのが比等学園の地下にある彼の家の為、ウィルを寝泊まりさせる所をそこに決定したのだが――。それからしばらくは二人の面白おかしいケンカタイムで、比等邸に着いたのは午後9時。すっかり外は真っ暗な時間になってしまった。


「大丈夫?流石に疲れたでしょ」

「あはは、まぁ、かなり」

苦笑いを零してそう言うウィルの頭をよしよししてくれる比等に対して、再び心臓が跳ねる。

とくん、とくんと音が耳まで聞こえる様な気がして気が気ではない。頬を火照らせて自分より少し背の高い比等を見上げていると、何故か首筋にキスが降ってきた。

「っ!!ひ……なとさ……」

わなわな震えて頬所か体中を真っ赤に染めて恥じらっていると、ごめんねという呟きが。

比等を見上げると

「こんな事しちゃいけないって分かってるんだけど、ね?我慢出来なかった……」

ぎゅっと抱きしめられて、甘いようなほろ苦いような不思議な気持ちが広がっていく。

私はどうしたら……。

「何でだろうね……オレ初対面の人にこんな事する程軽くないんだよ」

その事に対しては比成も言っていたが、こいつ口は軽いけど手は出さないから安心してと。ならこれはどう説明出来るのだろうか。


内心試行錯誤しているとごめんね、ともう一度言われて比等の体温が離れる。ショックを受けている自分が分からない。

「さ、行こうか」

腕を引っ張られて連れて来られたのはロビーだった。そこは去年まで住んでいた城程ではないにしても、十分広くて綺麗。落ち着いた黒と白統一なのも比等らしかった。隣り合った黒皮のソファーにお互い腰をおろして視線を合わせる。

「さっきも言ったけどここの設備は日本でも随一だから安心してね。警察が踏み込んで来る事も無いから」

「はい。……あの、本当に置いて頂いて良いのでしょうか?」

「いいのいいの。どうせ一人じゃ寂しいし。来てって言ったのはオレだよ」

悪戯っぽく微笑んで髪に指先を這わせる様な、一つ一つの言動があまりにも優雅で、思わず見とれてしまう。


ってだから私はさっきから何を……!!

「比等さん。……今後の事について、少し話し合いをしませんか?」

自分の中に湧いて出てくる気持ちがよく分からなくて、何とか話をそらせる。するとそうだね、とウィルに乗ってくれた。

ちょっと安心。

「きっと比成達はろくな話し合いにならないからね。みんなの携帯にどうするか送ってあげないと」

「そんなに酷いんですか?」

「あはは、酷いよ。こればっかりは確信出来る。さて……どうしようか?」

「比成と話し合ったのですが……ルルィをさらった奴らの真の職業は人身売買。主に未成年の美しい男子を標的にします。こんな事はしたくないのですが……もしも彼らの合意が得られれば、囮になってもらおうと」

合意なんて、得られる内容じゃ無いけれど。

「そっか……人身売買ね。確かにあの六人なら高く付きそうだし、囮にはもってこいかも。……でも彼らの標的は未成年の男子でしょ。ルルィちゃんは女の子だよ。どうして狙われたんだろう。もっと他に理由がある気がする」

「それは……確かに」

今の今まで気づかなかった。

言われてみれば納得だ。彼らはどうしてルルィを狙ったのか……また謎が増えてしまった。

「比成と話し合った結果、良い人材を六名準備しておくからルルィを返せと要求し、比成学園の最上階に呼び出す事になりました。奴らはそう簡単にルルィを返してはくれないでしょうが、来るだけでも来て欲しいと言えば下っ端だけでものこのこ出てくるでしょう。そこから芋づる式で幹部や首領を引きずり出す事にしました」

「なるほど……でも、下っ端だけでも来るという確かな保証はあるの?」

「あります」

奴らは今の所良い人材がルルィ位しか見つからず、金に飢えている。彼女を売り飛ばせばいくらでも金は入るが、手離すのが惜しくて出来ないようだ。というのが今の所使えそうな情報。それ以外は情報が全く掴めない。

だから数少ない情報でやりくりするしか無い。

「勝負は四日目からというのは、どうして?」

「彼らには三日間は文化祭をきっちり楽しんでもらうためです。文化祭中に被せたのは、早めに事を行いたいと言ったら比成がそう提案してくれました」

「分かった。彼らにはそうメールしておくね。それにしても比成はそれだけ言えば良いのに、どうして家にまで行く事にしたんだろうね?」

「う~ん……何故でしょう」

何て言ったって、すごーく謎だから。比成って。

「今回の事ってかなり大事ですし、彼らにそれをきちんと説明するためでしょうか。内容が内容ですし」

あ、かもしれない。

納得いったようにぽんと手をたたく比等さん。そして突如妖艶な微笑みを浮かべる。

「まぁオレは凄く感謝するよ」

「どうしてですか?」

「だって、君と一緒にいれるでしょ?――さてと。シャワールームとか、寝室とかリビングとか案内するから」

楽しそうにお手をどうぞ、と差し出されてそっと指先を重ねる。と、指を絡められてゆっくりとリードされる。

何で何もかもが様になるんだろう……。

横を歩く比等をじっと見つめると、何故かもう片方の手のひらで目隠しをされた。

「駄目だよ」

「え……?」

「あんまり見られると、うれしくなっちゃうから。分かったかな?」

ぱっと手のひらを外されるとばっちりと視線が合う。

「駄目なんですか?」

そうしていると、素直な言葉がぽろりとこぼれてしまう。

綺麗な瞳に吸い寄せられて。

「あなたを見ていたい……」

何を言っているんだともう一人の冷静な自分が言うけれど。

「駄目だよ。誘惑に負けちゃうでしょ」

「負けてください」

何故かこの人が気になる。

これが一目惚れなのかもしれない。

「先に言っておきますが、私は別に軽い訳ではありません。……あなただからです」

「……………………くくっ。あははははははははっ。何でそう可愛い事言うかな。ウィル、オレをどうしたいの?」

とん、と壁に寄りかかって上目遣いで見上げてくる。

「どうしたい……んでしょう…分かりません。どうしたいのか、どうされたいのか……」

分からない。私は……。

「うん分かった。とりあえずお風呂一緒に入ろうか」

「ぶっ」

柄にもなく吹き出すウィル。

何故こうなるんだろう。比成も分からないけど、比等さんはもっと分からない。

「裸で親睦深めようってあれ。深い意味は無いんだよ。あ、それとも。








――深い意味があった方が良かったかな?」



妖艶さをさらに深めて、一瞬にして骨抜きにする。行こうか。何でも無い事の様にウィルをシャワールームへ連れて行き、そこから




「ひ、比等さんっ、ありえません!!」

「え、そう?いじめてあげるから早くおいで」

「ひあぁあああ」

「あはははははかわいーちゅ」

「…………………ばた」





…………比等の本領発揮、かなり怪しいお風呂タイムが始まったのだった。

比等は書いていて凄く楽しいキャラだと判明したので、これからどんどん出していこうと思います 笑

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