表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボルト頭の少女の中で!  作者: 大和ミズン
3章 命の香り
11/15

011 命の香り①

 「ええ、ええ。分かりました、居場所。どうやら、下水道に潜ったようですわ」


 「そうかい。相変わらず、気持ち悪いぐらいに正確な鼻だね――」


 薄暗いバー。カウンターの上の、小さなネオン看板ばかりが主張する空間。並ぶ酒の量に比べて、客の数は随分と少ない。中に居るのは、二人の客と、バーテンダーの二人。


 「――其れくらいしか、取り柄が無いもんでございまして」


 客の一人は、小柄な男。顔面の四割を覆う、奇怪なマスクが特徴的な男。ストローで、甘いカクテルをチュウチュウ吸う様は、悍ましいと言う他ない。


 「そうだね。だからこそ、君は優秀だ」


 其れに比べて、隣の男の、何と優美なことか。その一投足、どれを取っても優雅で、洗練されていた。

 銀髪の隙間から見える眼差しも美しく。

 ただ、釣り上がる口元だけが、怪しさを湛えて。


 「其れじゃあ。追手、放とうか。誰が良いと思う?」


 その、彼。紳士で、キザ男。駒のように、彼は人を動かす。その先に在る、人の生死にを、彼が気に掛けるコトは無い。


 「良いのが居ますよ。パウダーと云います。嗅覚の通し番(シリーズ)の出来損ないですが、火薬ばかりはよく嗅げる男でございます」


 「そりゃ面白い!」


 (わざ)とらしく声を上げて、キザ男が手を叩く。


 「じゃあ、その火薬くんに任せよう! 兵隊は好きなだけ与えていいよ」


 「仰せつかりましたぜ。火薬(パウダー)にはそう伝えておきましょう」


 マスク顔の男が、にたりと笑った。


 「其れでは、ネイザン様。御機嫌よう」


 そして、マスク男は席を発つ。

 手を掛けたドア、ギィィと鳴らして、外に出て。そして、扉は締まった。客は、遂に一人に為る。

 ネイザンと呼ばれたキザ男は、静かにグラスを開けていく。


 「ネイザンの貴方は、そうですか。では、シャーホルツとしての貴方は、どうするのでしょう――」


 そのとき、問があった。今まで口を閉じていた三人目。バーテンダーのもの。


 「そうだね――」


 キザ男の、顔つきが変わった。

 そこに、先程までの巫山戯た様相は無い。


 「――報道の準備をさせる。テロルがあった、レジスタンスの仕業だ、と。芸は無いけれど、市民には其れくらいで丁度いい」


 「そうで御座いますか」


 肯定も、否定もせず。バーテンダー、グラスを磨く。

 今日は此れで店じまいだ。次の客は来ない。否、そもそも――此処に来る客は、キザ男(ネイザン)とその連れだけだから。


 「じゃあ、また来る。次はフレンチ・コネクションが飲みたいから、ブランデーの良いのを入れておいてくれ」


 「承知しました」


 グラスが空いた。丁度良い頃合いだから、終いにする。

 羽織ったチェスターコートを棚引かせ、外へ出る。


 (エリザベスの名を持つ君。君が、ジョンと共に在るのならば――)


 外には、二人の黒服と、オートモービル。

 彼の迎えだ。


 (――此れぐらいは、難なく乗り越えてくれないとね)


 懐かしむ様に、ネイザンは思いを馳せた。




 このネイザンと言う男。彼は何者であろうか。裏社会の支配者とか、秘密結社の人間とか。そういた類で無いのは確かだ。

 暗躍する彼を知るものに、其れを聞けば。皆、口を紡ぐばかりであろうけれど。表の彼について聞くならば――


 彼は貴族で。

 彼はインテリで。

 彼はキャリアで。そして――




 ――彼は警察で。彼は正義だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ