イケメンフラグキタ。
だから嫌だと言ったのだ。
だから駄々をこねたのだ。
だから家でぐうたら本を読んだり絵を描いたりしているほうがよかったのだ。
だから海には行きたくなかったのだ。
だから弟は嫌いなのだ。
遠く光を受け、輝く揺れる水面をぼんやり眺めながら私は不平不満を心の中で呟いていた。
声を出そうが四肢をばたつかせようがもう遅い。
肺は塩っ辛い海水で見たされ、体は岩にこすれて傷だらけ。サメも寄ってくるだろう。
目も霞み、オオジャコガイに挟まれた足の感覚は無くなってきている。
水深30m、ここが私の墓場となるのか。
まぁ、最期に自分の人生でも振り返ろうか。
私、成宮 希は19年前に女としてこの世に生を受けた。
2歳の頃弟を授かった。
大層可愛かったなぁ。。
今となっては女出入りは激しい、髪の毛はキンキッパ、耳はピアスだらけ。
そんな馬鹿な弟は最近私をナメにナメている。
超インドア派な私を海に連れ出したのもコイツ。
思い出しただけで腹が立つ。
毎晩夢枕に立ってやる。覚えてろ。
5歳、忍び込んだ父の部屋で新しい世界の本をこっそり読む。
それからだ。私が女の子あいらびゅ(笑)になったのは。
あの柔らかい曲線が素晴らしいよね。
あのふかふかな体が素晴らしいよね。
真っ赤になった顔が可愛いよね。
女の子を赤面させるのが趣味だったなぁ。。
イケメンに生まれ変わりたい。切実に。真剣に。
10歳、祖父が亡くなった。
祖父っ子だった私は一緒に棺桶に入るーっと言って聞かなかったそうだ。
15歳、PCを買ってもらい、喜びに絶叫をあげていた。
そしてこれが私を廃人に導くきっかけになったのである。
あぁ駄目だ。もう頭が霞んでいる。
心拍数も非常にゆっくりだ。
なんだか、眠た…い…な…。
「おめでとうございます!男の子ですよー!」
うるさいなぁ。
まだ私は眠っていたいんだ、そっとしておいてくれ。
ぼんやり光が差し込む瞼の下、私はそんなことを思いながらもう一度眠りに入ろうとする。
が、阻止された。
「オンギャアアアアアアアア!!!!!」
私の口から凄まじい泣き声が出たのだ。
これは本能か!?本能というヤツか!?
素晴らしいっっ!!
にしてもオンギャア?なんだその赤ん坊みたいな泣き声は。
ま、まさか…。
「はーい、望くぅーん、パパでちゅよー」
やはり赤ん坊になったのだ。アレか、生まれ変わりっていうヤツか。
ということは目の前で鼻のしたを伸びに伸ばし、でれでれと私をあやすこのイケメンは私の父か。
さらさらの黒髪、優しげな目、鼻筋の通った高い鼻。
これはイケメンフラグキターーーー!!
「ママでちゅよ、ほら、ご挨拶」
「もう、パパったら。。早速親バカ全開ね」
女神のように微笑む豊かな胸を持ったこの人が私の母…!
神様ありがとうございます!!
これはイケメン確定きました!
このままでは私はマザコンになってしまう。どうしよう。でも嬉しい。




