49 餃子を作って食べよう
昼寝から起きて、台所の水道で手を洗い、タオルで拭いた。
冷蔵庫を開けて、夕飯の準備に取りかかる。
中には牛肉の挽肉と豚の挽肉がある。
これを合わせれば、合い挽き肉になる。
さて、何を作ろうか。
しばらく考えて、ひらめいた。
まだ作っていない、あれを作ろう。
「餃子の皮」
ぽんっ。
テーブルの上に、『徳用餃子の皮50枚』と書かれた袋が現れた。
今日の夕飯は餃子だ。
手間はかかるが、その分だけ作る楽しさも、食べる満足感も大きい。
冷蔵庫から白菜と葱を取り出す。
まずはまな板で、白菜を細かく刻んでいく。
通常のみじん切りよりも、さらに細かく。
餃子の餡に使うときは、野菜を細かく刻むほど肉とよく馴染んで、口当たりがなめらかになる。
葱も同じように、丁寧に刻んでいく。
刻んだ白菜と葱を、合い挽き肉と一緒にボウルへ入れた。
塩をひとつまみ加えて、混ぜ始める。
最初の目安は、少し粘りが出る程度。
こねこね、こねこね。
肉と野菜が混ざり合って、少しずつ粘りが出てくる。
そこでもう一度、塩をひとつまみ。
今度は粘りが強く出るまで、根気よく捏ねていく。
捏ねて、捏ねて、また捏ねて。
ハンバーグの時と同じだ。
粘りが出るほど、肉同士がしっかりとくっついて、焼いたときにジューシーにまとまる。
やがて、餡に強い粘りが出てきた。
「よし、このくらいでいいな」
いい具合の餡が出来上がった。
手を洗ってタオルで拭く。
ここからが、餃子作りの一番面白いところだ。
皮で餡を包む工程である。
テーブルにボウルと餃子の皮を並べて、小さなお椀に水を用意する。
まず、スプーンで餡を適量すくって、餃子の皮の中央に置く。
次に、指先に水をつけて、皮の縁を半分ほど濡らしていく。
水が接着剤の役割を果たして、皮同士がしっかりとくっつくのだ。
皮を半分に折って、端から指でひだを作りながら合わせていく。
くりっ、くりっと、リズミカルに摘んでいく。
ひだを作ることで、皮がしっかり閉じて、焼いたときに餡が漏れ出さない。
形も整って、見た目も美しく仕上がる。
その手つきを、メセタがじっと見つめていた。
「我が君が……神業を使っている」
「はっはっは。何を言ってるんだ、メセタくんや。これは餃子を作るための工程のひとつだよ」
「『ぎょうざ』?」
「そう、今作っている食べ物の名前だ」
「でも、我が君の手の動きは、どう見ても神業としか思えません……」
メセタがあまりに真剣な顔で言うものだから、思わず笑ってしまった。
「そうかそうか。嬉しいこと言ってくれるな」
たかが餃子を包む手つきで神業扱いされるとは、なんとも面映ゆい。
とはいえ、悪い気はしない。
この工程を、何度も何度も繰り返していく。
一個、また一個と、餃子が並んでいく。
やがて、餃子の包みが全部完成した。
白い餃子がずらりと並んだ様子は、なかなか壮観だった。
「では、これより焼きに入る……なんてな」
フライパンをコンロに置いて、中火で火にかける。
油を引いて、フライパンを熱する。
ある程度温まったところで、一度火を止めた。
熱いまま並べると餃子が焦げついてしまうから、ここで一旦冷ます。
餃子をフライパンに、間隔を空けて丁寧に並べていく。
並べ終えたら、再び中火にかける。
少量の水を用意して、フライパンに回しかけた。
じゅじゅっ、ばばっ。
激しい音と共に、一気に蒸気が立ち上った。
すかさず蓋をして、蒸し焼きにする。
ここから3分ほど。
蒸気で餡にしっかり火を通しながら、皮を蒸らしていく。
この蒸し焼きが、餃子をジューシーに仕上げる秘訣だ。
3分が経った。
蓋を外すと、ふわっと湯気が上がった。
ここからは水分を飛ばす工程だ。
火にかけたまま、フライパンの水気を飛ばしていく。
水分が飛んで、底面がカリッと焼けてくると、
パチパチという軽い音に変わってくる。
これが焼き上がりのサインだ。
火を止めて、餃子を皿に盛り付ける。
底面がきれいなきつね色に焼けていて、皮がパリッと立っている。
香ばしい匂いが、台所いっぱいに広がった。
事前に作っておいた餃子のタレを添えて、夕飯の完成だ。
「これが、我が君が作った餃子……ごくり」
メセタが喉を鳴らした。
「さあ、召し上がれ」
「あむ……もぐもぐ……っ」
メセタの動きが、ぴたりと止まった。
咀嚼しながら、目がじわじわと細くなっていく。
そして、なんとも幸せそうな、とろけた表情になった。
(これは……相当気に入ったな)
言葉も出ないほどの美味しさだったらしい。
まあ、それはそれでいい反応だ。
「俺も食べよう……ぱく……もぐもぐ……っ」
皮を噛んだ瞬間、パリッとした食感の後から、肉汁がじゅわっと溢れ出した。
合い挽き肉の旨みに、白菜と葱の甘みが絡み合っている。
しっかり捏ねた餡はジューシーで、皮の香ばしさとの対比がたまらない。
タレの酸味と辛味が加わって、さらにご飯が欲しくなる味だ。
「……美味あ」
思わず声が漏れた。
メセタもようやく我に返ったようで、口を開いた。
「我が君……これは、今まで食べたものの中でも特に最高であります……!」
「だろ?餃子は手間がかかるけど、その分だけ美味いんだよ」
「この手間をかけてこそ、ということですね」
「そういうこと」
ふたりで夢中になって、餃子を平らげていった。
皿の上の餃子が、みるみるうちに減っていく。
手間をかけた甲斐があった、最高の夕飯だった。




