21 天ぷらと海老フライ、鯵フライ、蟹の天ぷらを作る
油がしっかり温まったのを確認して、海老を一本ずつ静かに滑り込ませた。
じゅわあっ。
激しい泡と共に、海老が油の中で踊るように揺れる。フライの方はパン粉がみるみるきつね色に変わっていき、天ぷらの方は薄い衣がぷくりと膨らんでいく。どちらも色と音で揚がり具合を確認しながら、菜箸で向きを変えて均一に火を通していく。
音が変わった。最初のじゅわじゅわとした重い音が、軽いパチパチに変わってきたら引き上げるサインだ。
フライはきつね色に、天ぷらはうっすら黄金色に。菜箸でつまんでバットの網の上へ。油がすっと落ちて、衣がぱりっと立った。
これを繰り返す。一本揚げては次を投入し、また揚げて、また次へ。キッチンに揚げ物の香ばしい匂いが満ちていく。
全部揚がったところで、天ぷら用と海老フライ用、それぞれの皿を念じて出し、菜箸で丁寧に盛り付けた。
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次は鯵フライだ。
鯵の開きを一枚手に取り、小麦粉を薄くはたく。溶き卵に浸して、パン粉をまんべんなくまぶしてから、油の中へ。
キチャキチャという、フライ特有の音が鳴り始めた。
鯵フライを美味く仕上げるコツは、一枚ずつ丁寧に揚げることだ。「三枚まとめて入れれば早いのでは」と思うかもしれないが、それをやると鯵の臭みが油に広がって、後から揚げたものにも移ってしまう。手間でも一枚ずつ、これが正解だ。
衣がきつね色になってきた。菜箸で端を持ち上げて確認すると、裏側もしっかり色づいている。バットへ。
二枚目を投入する。キチャキチャ。また同じように揚げて、バットへ。三枚目も同様に。
これを繰り返して、鯵フライ合計六枚が出来上がった。どれも衣がしっかりきつね色で、端まで均一に揚がっている。
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最後は蟹の天ぷらだ。
海老天ぷらと同じ要領で、冷やした衣にくぐらせて油へ投入する。蟹は身が繊細だから、海老より少し短めに揚げる。衣がさくりとした手応えになってきたら、すかさずバットへ。
これで揚げ物は全部終わりだ。
盛り付け皿に海老フライ、海老天ぷら、鯵フライ、蟹の天ぷらをそれぞれ並べると、テーブルの上がにわかに華やかになった。揚げたての湯気が立ち上って、キッチン全体が香ばしい匂いに包まれている。
「……すごい量ですね」
メセタが目を丸くしながら眺めていた。
「今日は豪勢にいこうと思って」
「全部食べていいですか?」
「一緒に食べるんだから当然だろ」
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さて、後片付けの段取りも考えておかなければ。揚げ物に使った油はそのまま捨てられないから、凝固剤で固めてからゴミに出す必要がある。
「固めるテンプル」
ぽんっ。
テーブルの上に『揚げ物終わりに固めるテンプル』という商品が現れた。使い終わった油に溶かして固めるだけで、燃えるゴミとして捨てられる優れものだ。油が冷めてから使えばいいので、まずはこのまま置いておく。
ところで、と俺は思った。
ゴミを固めて捨てるにしても、この世界のゴミ出しのルールがわからない。家を手に入れる前に街道を通ったとき、ゴミステーションらしきものを見かけた気がする。指定ゴミ袋があるとすれば、この能力で出せるかもしれない。
「この世界のゴミ出し用指定ゴミ袋」
ぽんっ。
袋が現れた。手に取って確認すると、印刷された文字が目に飛び込んできた。
『ラゴス地区指定ゴミ袋』
(ラゴス地区……?)
この場所に、名前があった。俺がいるこの森の周辺一帯が「ラゴス地区」と呼ばれているらしい。知らなかった。というか、この世界のことを俺はほとんど何も知らない。
俺はメセタを呼んだ。
「メセタ、ちょっといいか」
「なんですか我が君?」
「ラゴス地区って知ってるか?」
メセタの耳がぴんと立った。
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