第7話 その2 わたしって便利グッズです」
野盗を制圧の報を受けて事後処理と被害の有無確認のために列車が一時停止に入りました。
わたしも、列車の屋根から降りて、列車を守ってた騎兵の皆様と一緒にの野盗本隊が捕らえられている場所へと向かいます。お嬢さまは処理のためすでに向かわれてるとのことです。
アーネストの兵隊さんが集まってる場所が見えてきた。近づくにつれて鼻を刺すのは血の匂い。先程列車の上で嗅いだ野盗の少女の血溜まりと同じ、咽せ返る血の匂い……
お嬢さまを発見、その手にはお兄様へのプレゼントにと持ってきたユニコーンのツノで作ったの槍を携えていた
「はい、退いて! 荷物が通るよ」
数名の兵隊がそう言って小さめの荷車を運んできた。荷台の上には厚手の布に包まれた、丸太状の荷が何本も積まれてた。それが丸太なんかじゃないのは、荷台から垂れてる赤い液体が雄弁に語ってた。
もうやだ。この世界の死生観が違うのも、その理由も理解できるし、納得もできる。でも前世で培った命の大切さやその平和だった世界で植え付けられた、価値観と心がそれを否定し続ける。
わたしは、矮小な人間だから多分お嬢さまに会ったら普通に隠して笑っちゃうんだろうな。
そんなセンチメントなこと考えてたのに、お嬢さまってば、会ったとたん叩かなくてもいいよね。
正しくは……
パーン!
お嬢さまがわたしを見つけるな否や、走ってきて思いっきりわたしのほっぺを両手のひらで音が出るくらい勢いよく挟み込んだ。
「マスターの命令も守れないなんて、アンタどこまでポンコツギフトなの。コノッ!」
ほっぺ潰されて口がタコになってるのにさらにほっぺグリグリしないでー!
絶対ブサイクになってますよね、わたし。ほら、周りの兵隊さんも吹き出してるじゃないれすか。
「ひょめんなぴゃい」
「なに、それバカにしてらっしゃるの?」
ほっぺ押さえられてるからちゃんと喋れないんですってば、わかってるくせに、お嬢さまのばーか!
「本当にあなた、わたしのギフトなの? マスターの命令に逆らえるほうがおどろきなんだけど、ギフトとかじゃなくて、実はそこらへんのアホの子なんじゃないでしょうね!」
「ヒョウヒンヒョウメイのあなたのびいふとルナヒハれすー(正真正銘のあなたのギフトルナリアです)」
「まだ、バカにして!」
お嬢さまがさらにグリグクほっぺ押してくる。ほっぺに跡残るから潰れちゃて後で赤くなるからもうやめてー
「とにかく、あなたみたいな弱いのが、敵に情けかけようなどとすることが戦場を舐めすぎですわ。子供だとでも思ったかは知らないけど、向こうだって命をかけて向かってきてるのに相手にとっても失礼ですわ。本気には本気で答えなさい。いいですわね」
ピシャリと怒られて返す言葉もありません。わたしのほうがよっぽど世間知らずのガキでした。
「あと、この子についてた偵察隊は誰?」
「はっ!」
いきなり横に出てきた。びっくりした。セバスさまといいアーネスト家こんなの多すぎ。
「あなた、この子が野盗に襲われたときに殺気を出したわね。あなたの役目は何? 言ってごらんなさい」
「我らリコンの役目は『戦場の目』影に潜み戦況を伝えることございます。」
頭を下げながら淡々と話してるけどちょっと声がうわずってる
「わかっているのですね。ならなぜ殺気を出す、あなたが仲間をひとり救うことで存在が敵に知られたら何人の仲間が救えなくなるかわからないのですよ」
「ハッ!」
リコンの兵隊さんがさらに頭を深く下げる。
「我らアーネストは個にして全! だからこそ負けないのです。戦場では自分の役割を全うすることが仲間を救うことだと自覚なさい! 自分が危険になったとしても、役目を放棄して救いにくるものなど仲間ではないと言い切りなさい。その強さを持って戦場にのぞみなさい」
「「「ハッ!」」」
リコンの兵隊さんだけでなく周りにいた全ての兵隊さんが頭を下げ返事をした。
やだ、なに? 役目のためなら仲間を見捨てろって、頭おかしくない、みんな大丈夫?
やっぱりこの戦闘狂どもにはついていけないかもしれない。うん、絶対わたしのほうが、頭マトモだ。なんかスッキリした。
コマンダーお嬢さまが、リコンの彼の肩に手を置いて
「それにね。間違わないでこの子はギフトなのよ。腕を落とされても首を飛ばされたって治るから、心配しちゃダメよ。周りにギフトを助けて命落としたって笑われますわよ」
そう言われて、リコンの兵隊さんがバツの悪そうに頭を掻いて、周りの兵士もクスクス笑ってる。
「お前、知らなかったのか。セシリアさまのギフトはめっちゃ美人の魔法少女だって近衛のウワサ」
そばにいた兵士がリコンの兵隊に笑いかける。
「美人救ってよろしくやろうと鼻の下伸ばして殺気プンプンかよ!」
他の兵士がさらに突っ込んで和気あいあいのほのぼの部隊とかしてないでください。わたし今とんでもないこと言われたんですけど。
(ねえ、プラム本当なの今の? わたしっ首無くなっても生えてくるタイプなの?)
《生えはしませんが再生いたします。ギフトは大抵、自己再生機能を持ってます》
マジですか。
《アカシックの管理者はこの躯体のみなので、そのあたりは特に強化されてます。細胞レベルで生きてれば再生可能です》
(マジ! じゃあひとりでゾンビアタックとかかけれるじゃない)
《可能ですが、おススメは致しません》
(なんで?)
《再生にはコストが必要です。当躯体は特別製で必要量子が違うので大気中からの取得変換ができません》
(また、難しいこと言って、簡単に言ってよ。でどうなるの?」
《手近なところから分解抽出し補充します。抽出先は最寄りの神殿のギフト転送装置です》
(それってあの血の盟約の儀式する神殿の太い柱だよね。マズくない?)
《当躯体が完全損傷の場合、転送装置3台必要とします》
『壊れた透香は世界のエネミー』
ネコ耳ルナリアにチャチャ入れられてからかわれてるし。
お嬢さまが再びこっちに向かってきたのが視界に入る。そのまま体を寄せるように近づいて、周りに聞こえないように小声で問いかけられた。
「ねえ、ルナリア。あなたもしかして壊れるのが怖いの?」
そう聞かれて咄嗟に首を縦には振ったけども、わたしは違う意味で愕然とした……
そう、お嬢さまは死ぬのがじゃなくて壊れるのがってわたしに聞いた……わたしはこの数ヶ月間お嬢さまに人として向かいあってた気でいたけども、お嬢さまにとってはわたしは人ではない単なる物だったんだという事実に愕然とした。そう考えると色々と納得もできた。ユニコーンの時わたし転ばせて逃げようとしたこと、この間のパレードで本気で槍を投げつけてきたこと……
そうだよね……単なる道具なんだもんね。しかも壊れても自動で治るんだもんね。仕方ないよね。人じゃないんだ……わたし。
「どうしたの、ルナリア? 悪かったわよ。あなたが壊れることが怖いなんて思って無かったのよ。ここまで人に似てるんだから、そんな感情を持ってるかもって想像できなかったのは、わたくしの落ち度ですわ。今後は気をつけますわね」
お嬢さまの優しい言葉が追い打ちになる……
(ルナリア、もうダメ泣いちゃう……)
《いいよ、透香泣いちゃおう》
上を向いて堪えたけど無理でした。
「うわぁぁん」
もう堪えきれず涙がどんどん溢れ出す。道具のくせになんで泣けるのかなわたし……
「ちょっ! ルナリアどうしたの、大丈夫?」
お嬢さまが、びっくりして狼狽えてらっしゃいます。
「ごめんなひゃ……ヒック、ウワァァン」
「ちょっと、本当にどうしましたの、何処か壊れたのですか?」
機械が泣いちゃダメですよね。ごめんなさい。もう人の透香なんてこの世界にもういないんですよね。ここにいるのは、道具の中に押し込められた単なるわたしの人格データーなんですよね。
わかればわかるほど涙が溢れて止まらないんです……
ストック尽きました次からは隔日くらいになります。ゴメンナサイ




