ENDING
すっかり投稿した気になっていたのでした。
「今朝は綺麗な青空ですが、夕方から雲が多くなるでしょう。明日からの週末は雪が降って、ホワイトクリスマスになるかもしれませんね!」
テレビの中で、笑顔が素敵なお姉さんが言っていたことを思い出す。
クリスマスデートをしよう、と言い出したのは永遠だった。
おかげでわたしの頭の中は悩み事でいっぱいだ。
原稿は書き上がらないし、着ていく服に困るし。
何より、アレだ。
アレをどうしたらいいかさっぱりわからなくて、わたしは連日モヤモヤしている。明日がクリスマスイヴなのに。明後日はクリスマスなのに!
「いつもにも増して、機嫌が悪そうだね」
朝、学校に行くために駅で待ち合わせた永遠はぬけぬけと失礼なことを言った。
「いつも通りだから」
わたしは永遠を半眼で睨む。いつも通り眠いだけ。あと、ちょっとだけ…悩ましい。
「おおこわ、怒らないで、お嬢さん」
だんだんと定形化してきたこのやり取り。永遠は大げさに肩をすくめた。
わたしはごわついたマフラーに顔を埋めつつ、「…怒ってないし」と言う。
冬の冷たい風が吹きつけた。
「明後日楽しみだね」
ふと、柔らかい声で永遠が呟いた。わたしは永遠の、こういう声が好きみたいだ。
うん、と頷いてちらっと見上げると、永遠は例の甘い笑みを浮かべていて、わたしはそっと目を逸らした。
「なんか今、意図的に目逸らしたよね」
「…いや?」
…だって、胸やけしそうなんだもん!
「どうしよう、どうしよう美玲いいいいいい」
机に突っ伏してばたつくわたしを、美玲が呆れ顔で見てくる。
「だーから、そんな悩むことないんじゃない?陽那がやりたいようにやれば」
美玲はさっきからこの調子で、全くつれない。
「でもぉ…」
わたしはガックリと肩を落とす。
仕方が無いので、わたしは学校が終わってからひとり、駅前に繰り出した。
街は完全にクリスマスムードだった。駅前の特設のオブジェにはたくさんの電球がついている。きっと夜になったら、綺麗にライトアップされるんだろう。
クリスマスセール中の駅ビルの中を、わたしはうろうろと歩き回る。
普段の永遠を思いながら、物を見る。
朝不機嫌なわたしを、文句も言わずに駅で待っていてくれる永遠。
陽那の小説が好きだよと、言ってくれる永遠。
ちょっと意地が悪いけど、ほんとは優しい永遠。
わたしは店頭に置いてあった、男物のもこもこの手袋を手に取った。
寒いねと言いながらも、コートも着ずネックウォーマーを口まで引き上げて、手をブレザーのポケットに突っ込んでいる永遠。
これにしよう。
唇が緩む。
レジで財布を出していると、店員のお姉さんがにっこりと問いかけてきた。
「ラッピングはいたしますか?現在は、通常のラッピングとクリスマスプレゼント用のラッピングをご用意しておりますが」
わたしはお金を出して言う。
「あ、はい。クリスマスプレゼント用のラッピングでお願いします」
これにて完結です!
読んでくださった方、ありがとうございました!