↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏社会のジョーカー、現代ダンジョンで成り上がる ~世界最大の賭場に人生を賭ける~  作者: パラレル・ゲーマー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/15

第2話 ジョーカーに配られた二枚の札

 午前十一時。

『関東探索者統括管理センター』の巨大なロビーは、平日にもかかわらず大勢の人間でごった返していた。

 隼人は初回登録窓口の前に立ち、案内表示に従って受付番号を発券する。ほどなくして呼ばれ、窓口の向こうに座る制服姿の職員に身分証明書を提示した。


「神崎隼人さんですね。探索者の初回登録でよろしいですか?」

「はい」


 職員は手慣れた手つきで端末を操作すると、分厚いケースに入ったタブレット端末を隼人の前に差し出した。


「では、こちらの『探索者登録に伴う死亡・傷害リスクについての同意書』をご確認ください。電子署名をお願いしますが、その前に重要事項ですので、最後まで必ず目を通してください」


 画面に表示されたテキストは、お役所仕事特有の堅苦しい文章で埋め尽くされている。

 隼人は画面をスクロールさせ、流し読みすることなく、一言一句を正確に目で追っていった。裏社会の人間を相手にしてきたギャンブラーにとって、契約条件を読まずにサインするような真似は、自殺行為と同義だ。


『……ダンジョン内におけるモンスターとの戦闘、またはトラップ等による死亡・重傷事故は頻繁に発生しています』

『現在、死亡した探索者を蘇生する手段、および技術は存在しません』

『危険を感じた場合は、《ポータルの巻物》等の緊急脱出用アイテムを使用し、速やかに撤退することを強く推奨します』

『ダンジョン内で取得した魔石、および各種ドロップ品は、原則として探索者本人の所有物となります』

『ただし、探索活動におけるあらゆる損失、負傷、死亡について、国および管理センターは一切の補填・賠償責任を負いません』


 隼人の視線が、『死亡した場合、蘇生する手段は存在しません』という一文で数秒間だけ停止した。

 そのすぐ下には、太字で『生還を最優先してください』と書かれている。


(蘇生はない、か)


 ギャンブルで言えば、一度全額をロストしたら、二度とテーブルに戻れないということだ。

 隼人は特に表情を変えることなく、画面の一番下にある同意欄にチェックを入れ、電子ペンで署名した。


 タブレットを受け取った職員が、最後に念を押すように隼人の顔を見た。

「神崎さん。ダンジョンでは、迷っている数秒が文字通り命取りになることがあります。少しでも危険だと思ったら、躊躇せずに撤退してください」

「分かりました」


 隼人は短く答えた。

 ここで「命くらい賭けますよ」などと軽口を叩くつもりはない。ただ、ルールの重さを正確に計り、受け入れただけだ。


「ありがとうございます。それでは、正式な登録手続きの前に、『ユニークスキル鑑定』を行います」

「昨日調べた、ユニークスキルの鑑定ですね」

「はい。ご存じでしたか。ダンジョン出現以降、探索者として登録を行う人間には、魔素の影響により特殊な能力――ユニークスキルが発現することが確認されています。これは探索活動において非常に重要な要素となります」


 職員は流れるような説明を続ける。

 基本的に個人に固有のものであること。過去に類似の能力や同系統のスキルを持った探索者も存在すること。

 だが、その後に職員が付け加えた言葉が、隼人の耳に残った。


「ただ、誤解しないでいただきたいのですが、一つの能力だけで探索者としての人生が決まるわけではありません。強力なスキルであっても、使い方次第で宝の持ち腐れになることもあれば、一見地味なスキルで上位ランクへ到達した方もいらっしゃいます。あくまで、最初の『手札』だとお考えください」

「……なるほど。分かりやすい」


 手札。その言葉は、隼人にとって何よりも馴染み深いものだった。

 配られたカードの良し悪しは、勝負の一部に過ぎない。重要なのは、そのカードをどう使い、どうブラフを張り、どう勝つかだ。


「では、こちらの装置へ手を置いてください」


 窓口の横に設置された、透明な水晶板とセンサーが組み合わさったような現代的な鑑定装置。

 隼人が言われた通りに掌を置くと、装置の内部で青白い光が脈打ち始めた。


 通常であれば、数秒で鑑定結果がモニターに表示され、手続きは次の段階へ進む。

 しかし、光が明滅を繰り返すばかりで、待機画面のまま処理が一向に終わらない。


 職員が不思議そうにモニターを覗き込む。

「……少々お待ちください。少し読み込みに時間がかかっているようです」

「何か問題でも?」

「いえ、エラーというわけでは……あ、出ました」


 職員の目が、モニターに表示された文字を追って、わずかに見開かれた。

 キーボードを何度か叩き、情報を再確認する。


「……神崎さん。ユニークスキルが、二つ発現しています」


 その言葉に、隣の窓口で手続きをしていた人間や、後ろの待機列にいた数人がチラリとこちらを見た。


「二つ?」

「へえ、珍しいな」

「たまにいるよな、デュアル持ち」


 その程度の反応だった。

 センター全体がどよめくような大騒ぎにはならない。職員も、多少の驚きは見せたものの、すぐに業務上のトーンに戻った。


「二つのユニークスキルが同時に確認される方は少数ですが、前例はあります。まずは一つ目のスキルから確認しましょう」


 職員がモニターを操作すると、隼人側の小型ディスプレイに詳細な情報が表示された。


 ====================================


 ユニークスキル

【複数人の人生《マルチアカウント》】


 レアリティ:ユニーク

 等級:判定不能


 種別:パッシブスキル/魂の器


 効果:

 このスキルを持つ者は、極めて希少な触媒【魂の水晶】を一つ消費することで、自らの魂の中に新たな『人生(キャラクタービルド)』を一つ創造することができる。

 すべての『人生』は、術者自身のレベルおよび経験値を共有する。

 ただし、クラス、ステータス配分、パッシブスキル、装備、スキル構成、フラスコ構成など、ビルドを構成する要素は『人生』ごとに独立する。

 新たな『人生』を創造した場合、その時点で術者が到達しているレベルに応じた成長資源を、未割り振りの状態で取得する。

 術者は、安全領域において、自らが歩む『人生』を切り替えることができる。


 フレーバーテキスト:

 ――もし、君に、もう一つの人生が与えられるとしたら。

 君は、何を望む?

 鋼の肉体と、不屈の魂を持つ【戦士】か。

 世界の理を、その指先で紡ぐ【魔術師】か。

 影に生き、影に死す、孤高の【盗賊】か。

 あるいは、何者でもない【無職】として、

 すべての可能性をその身に宿したまま、

 ただ、風の吹くままに歩き続けるのか。

 その選択肢は無限。

 その道筋もまた無限。

 さあ、選ぶがいい。

 君の前には、無限の可能性が存在しているのだから。


 ====================================


「《複数人の人生》ですね。こちらは過去にも何件か登録例があるスキルです」

「珍しくはないんですか?」

「いえ、能力自体は希少です。ただ、存在は知られている、ということです。等級が判定不能なのは、直接的な出力を持つ能力ではなく、所有する『人生』やビルドによって性能が大きく変動するためですね。非常に……色々なビルドを使い分けられる便利な能力ではあるんですが……」


 職員の言葉尻が、わずかに濁った。

 隼人が先を促すように視線を向けると、職員は少し言いにくそうに口を開いた。


「このスキルを発動させるための【魂の水晶】が、非常に高価で取引されているレアアイテムなんです。さらに、新しい『人生』を増やすたびにそれが必要になります」

「なるほど」

「そして、最大の問題は装備です。レベルは共有できても、装備はそれぞれの『人生(ビルド)』ごとに独立しています。戦士なら戦士の、魔術師なら魔術師の装備を、それぞれ一から買い揃えなければなりません。普通の探索者でも、一つのビルドを完成させるだけで莫大な資金が必要になりますから……」


 そこまで聞いて、後ろで聞き耳を立てていた男の一人が「ああ、マルチアカウントか」「あれ、とんでもなく金食うやつだな」と小さく呟くのが聞こえた。


 隼人はもう一度、ディスプレイの効果欄に目を通した。

 別の人生。別のクラス、ステータス、パッシブ、装備。

 それらを状況に応じて切り替えられる。それは確かに強力なアドバンテージだ。

 だが、その代償は「金」だという。


「……つまり、主な問題は金がかかるということですか?」

「まあ……かなり乱暴に言えば、そうなりますね」


 隼人の思考は、ひどく冷静だった。

 金がかかる。それが最大のデメリット。

(なら、問題としては分かりやすい)

 彼の中で、このスキルの価値が一つ定まった。

 解決不可能な呪いでも、理解不能な代償でもない。「稼げばいい」という、極めて単純明快なハードルだ。

 そもそも自分は、莫大な借金と治療費を稼ぐためにここに来たのだ。必要な金がさらに増えるとしても、やること自体は変わらない。


 画面の端には、現在の状態を示す小さなウィンドウが表示されていた。


【所有人生:1】

【ACCOUNT 01:神崎隼人】

【Lv:1】

【クラス:未選択(Lv2到達時に選択解放)】

【ステータス:初期状態】


 まだクラスを選ぶ条件を満たしていないらしい。

 配られた一枚目のカードは、今のところ「ただの人間」だ。


「では、もう一つのスキルですが……」


 職員が再び端末を操作する。

 しかし、今度は先ほどの《マルチアカウント》の時とは違い、職員の手がピタリと止まった。

 モニターを食い入るように見つめ、何度かキーボードを叩いてデータベースと照合しているようだ。


「……登録例がありませんね」

「初めてですか?」

「少なくとも、日本国内のデータベース上では合致するものがありません」


 職員が操作を終え、隼人側のディスプレイに新たな情報が表示された。


 ====================================


 ユニークスキル

【運命の天秤《フェイト・スケール》】


 レアリティ:ユニーク

 等級:SSS


 種別:パッシブスキル/因果律干渉


 効果:

 このスキルを持つ者は、世界のあらゆる「確率」に干渉し、その結果を捻じ曲げる。

 具体的な効果は、以下の通りである。

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。

 また、■■■■■が■■■■■■■■■■■■■、■■■■■■■。

 ただし、この力の行使には、■■■■■■という極めて重い■■を伴うとされるが、その詳細は、神々ですら完全には解明できていない。


 フレーバーテキスト:

 神々以外に、道化師(ジョーカー)の真意が見抜けるわけないだろう?


 ====================================


 隼人の視線が、フレーバーテキストの最後の一文で縫い止められた。


『道化師(ジョーカー)』


 隼人という人間を、裏の賭場で呼ぶ時の名前。

 ただの偶然か、それともシステムが何らかの情報を読み取ったのか。微かな薄気味悪さを感じたが、隼人の表情は微動だにしなかった。


「どうしました?」

「いや」


 隼人は、口角をわずかに上げて笑った。


「趣味の悪い文章だと思ってね」


 奇妙な符号。

 職員は首を傾げたが、すぐにスキルの説明に戻った。


「SSS判定が出ていますが、これは必ずしも『最強』を保証するものではありません」

「というと?」

「既存の尺度で測れない、非常に特殊、あるいは希少という意味合いが強いです。ご覧の通り、効果の大半が解析不能になっており、実用性についてセンター側で判断を下すことはできません。なお、未登録のSSS級ユニークスキルとして、鑑定結果は中央データベースへ自動的に報告されます。探索者登録そのものに制限はありませんが、今後、追加の解析や聞き取りをお願いする可能性はあります」


 隣で手続きをしていた探索者が、「SSSでアンノウンか。ちょっと怖いな」「使い方が分からないんじゃ、宝の持ち腐れだな」と小声で言い合っている。

 評価が割れるのは当然だ。分からないものに価値をつけることはできない。


 隼人も同じだった。

 確率に干渉する。ギャンブラーとして、これほどそそられる言葉はない。

 だが、情報が圧倒的に足りない。

(……情報が足りないなら、試すしかないな)

 天才的な直感ですべてを理解できるわけではない。試行し、観察し、情報を集め、手札の価値を自分で見極める。それがJOKERのやり方だ。


 すべての手続きが終了し、プラスチック製の『探索者カード』が発行された。


【神崎隼人】

【探索者ランク:F】

【Lv:1】

【ユニークスキル:複数人の人生《マルチアカウント》/運命の天秤《フェイト・スケール》】


 A級を目指す男の、F級からのスタート。

 カードをポケットにしまい、隼人はセンターの地下にある『探索者用品販売区画』へと向かった。


 ダンジョン出現から十年。探索者は巨大な産業としてシステム化されている。

 広大なフロアには、武器、防具、アイテムが所狭しと並び、初心者向けの規格化されたセット商品が山積みになっていた。


 《近接初心者セット》

 《遠距離初心者セット》

 《魔法初心者セット》


 隼人は知ったかぶりをせず、近くにいた店員に声をかけた。


「初ダンジョンですか?」

「今日登録したばかりだ」

「なるほど。やりたいスタイルは決まってます?」

「まだ何も」

「だったら、近接が無難ですね」


 店員は慣れた様子で説明してくれた。

 魔法はMP管理や複雑なスキル構成が必要になる。遠距離は距離の管理や弾道予測など、最初から考えることが多い。

 その点、近接は「武器を握って、敵の攻撃を見て、避けて、斬る」。ルールが一番単純だという。

 簡単=安全というわけではないが、初心者が自分の身体能力やモンスターの動きを把握するには最も適しているらしい。


「じゃあ、それで」


 隼人は《近接初心者セット》を購入することにした。

 価格は二十数万円。

 昨夜一千万を稼いだ隼人にとって、払えない額ではない。だが、借金四億を抱える彼に、無駄遣いする理由はない。

 周囲には数百万円、数千万円もする高級な武具も並んでいたが、隼人はそれらには目もくれなかった。自分がどれだけ戦えるのかも知らない状態で、装備だけ高くしても意味がない。合理的な判断だ。


 セットの内容は以下の通りだった。


 《初心者用ロングソード》

 魔素を含む合金で作られた量産品。特殊な能力はないが、刃こぼれしにくく、魔素環境下では自己修復する。


 《探索者用ARコンタクトレンズ》

 視界に様々な情報を表示するデバイス。モンスターやアイテムの簡易鑑定機能、HP/MP表示、マップ、ドローン映像の管理などが可能。


 《探索用録画ドローン》

 手のひらサイズの小型ドローン。探索者を自動追尾し、録画やライブ配信を行う。


 《ポータルの巻物》

 ダンジョンから瞬時に脱出するための使い捨てアイテム。複数枚付属。


「これだけは、絶対に切らさないでくださいね」

 店員が《ポータルの巻物》を指差しながら、特に念を押してきた。

「死にそうになってから、買いに戻ることはできませんから」

「確かに」


 隼人は、撤退用の巻物をさらに数枚追加購入した。

 ギャンブルにおいて、退路を断つのは愚か者のやることだ。命を賭けるなら、なおさら逃げ道は確保しておくべきだ。


 会計を済ませ、隼人はさっそくARコンタクトレンズを装着した。

 視界の隅に、緑色の文字がポップアップする。


【機器連携を開始します】

【探索者カード認証完了】

【ドローン同期完了】


 隼人は購入したロングソードの柄を握り、視線を向けた。

 ARの鑑定機能が作動し、空中にウィンドウが浮かび上がる。


 ====================================

【初心者用ロングソード】

 種別:長剣

 装備条件:Lv1~

 物理攻撃力:10~15

 特殊効果:なし

 フレーバーテキスト:

 ――英雄が最初に握った剣も、最初から伝説だったわけではない。

 ====================================

「……なるほど。こういう風に見えるのか」


 剣術の経験などない。ずしりと重い鉄の塊を持たされている感覚だ。映画のようにはいかないだろう。


 ドローンの設定をしていると、店員が尋ねてきた。

「配信もされます?」

「このドローン、配信にも使えるんですよね?」

「ええ。探索者向けの配信サイトとアカウント連携すれば、すぐに始められますよ」


 隼人は昨夜、上位探索者の配信が莫大な収益を生むことを知っている。

 もちろん、F級の無名新人が最初から稼げるなどとは思っていない。だが、自分の動きを後から確認する記録用としても使えるし、将来的な収入源になる可能性はゼロではない。


「なら、やります」


 連携用のアプリを開き、ユーザー名の入力画面で指が止まる。

 本名にするか、適当な名前にするか。

 数秒考え、隼人はキーボードをタップした。


『JOKER』


 これまで、裏社会で彼をそう呼ぶのはいつも他人だった。自分から名乗ったことは一度もない。

 もちろん、この名前を表で使えば、裏の連中にも遅かれ早かれ知られるだろう。だが、顔を出して探索を配信する以上、別の名前を使ったところで隠し通せるものではない。それなら、中途半端に隠す意味もない。

 何より、ここは自分の意志で座ったテーブルだ。これまで連中が自分につけた名前を、今度は自分自身のために使う。


 配信タイトルも設定する。

【初配信/F級】ギャンブラーJOKER、ゴブリンの洞窟に挑む

 妙にキャッチーな煽り文句は入れない。ただ事実だけを並べた。


 午後。

 都心からバスで一時間ほどの場所にある、F級ダンジョン《ゴブリンの洞窟》。

 そこは、巨大なテーマパークの入り口のように完全に管理・整備された施設だった。

 駐車場、換金窓口、売店、救護テント。

 そして、その最奥にぽっかりと口を開けた、黒い洞窟。現代文明と異界の境界線だ。


 探索者ゲートの前で、係員にカードを提示する。

「F級、神崎さん。初回ですね」

「はい」

「《ポータルの巻物》は所持していますか?」

「持っています」

「危険だと判断したら、すぐに使用してください。初回は特に、深追いしないことをおすすめします」

「参考にします」


 ゲートを通る。

【個人インスタンスを生成します】という表示が出た。今日は空いているため、このダンジョン空間は隼人一人の貸し切り状態となる。


 洞窟の入り口まで数メートル。人工の照明が届くギリギリの場所で、隼人は立ち止まった。

 ARコンタクトの視界に、ドローンの接続完了を知らせる文字が浮かぶ。


【LIVE STREAM READY】


 隼人は配信開始ボタンを押した。

 画面の隅に表示される視聴者数は「0」。

 数秒待っても、数字は動かない。


「……まあ、そうだろうな」


 無人の配信に向かって短く呟き、ドローンの位置を少し調整する。

 腰に提げたロングソードを抜く。慣れない動作に、わずかなぎこちなさが混じる。カードを扱う時の洗練された動きとは大違いだ。


 眼前の暗闇。

 ARコンタクトが、ダンジョンの情報を読み取る。


 ====================================

【F級ダンジョン】

【ゴブリンの洞窟】

 推奨:新人探索者

 主要出現モンスター:ゴブリン

 フレーバーテキスト:

 ――小鬼を侮る者から順に、小鬼の餌になる。

 ====================================


 隼人は、腰のポーチにある《ポータルの巻物》の位置を指先で確認した。

 すぐに取り出せる。本数も足りている。

 逃げ道、武器、視界、録画。すべての準備は整った。


 冷たい空気が吹き抜ける洞窟を見据え、隼人はロングソードを構え直した。


「さて」


 誰も聞いていない配信に向かって、短く告げる。


「まずは最低レートからだ」


 一歩を踏み出す。

 管理区域の安全な光が途切れ、ダンジョンの暗闇が隼人を包み込む。

 ARの視界に、【探索開始】の文字が浮かび上がった。


 隼人はロングソードを握り直し、洞窟の奥へ歩き始めた。

最後までお付き合いいただき感謝します。


もし「続きが読みたい」と思われた方は、ページ下部よりブックマークと評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆ パラレル・ゲーマーの他作品紹介 ◆
現代ダンジョン、異能バトル、TS、カード魔法など色々書いています!
気になる作品があれば、ぜひ読んでみてください!

【現代異能・TS・吸血鬼】
俺の異能が中華ゲーだった
ガチャで引いたキャラに変身して異能のお仕事!【キャラチェンジ型可変TS/ガチャ/異能バトル】※BL・GLタグあり

元おっさんの吸血姫は引きこもりたい。
元おっさんが美少女吸血鬼に! ゲーム三昧を望む怪異バトル&恋愛もの。【男→女TS/吸血鬼/男性との恋愛】※BL・GLタグあり

35歳社畜、女子高生に吸血鬼だと宣告される
社畜のおっさんが吸血鬼に覚醒! 女子高生師匠と現代異能社会を攻略。【吸血鬼/おっさん主人公/俺TUEEE】※TSなし

派遣社員、うっかり極道の跡目に選ばれる
普通の派遣社員が歴代親分の異能を継承!?【現代異能/ヤクザ/最強主人公/勘違いコメディ】※残酷描写あり

【現代ダンジョン・ハクスラ】
現代ダンジョン発生初日。
世界にダンジョンが出現! 攻略Wikiの知識で最強ビルドを構築し、未来のSSS級探索者を育成。【ゲーム知識チート/最強ビルド/弟子育成】

裏社会のジョーカー、現代ダンジョンで成り上がる
天才ギャンブラーが妹を救うためダンジョンに挑戦!【現代ダンジョン/複数ビルド/ハクスラ/成り上がり】※ハーレムタグあり

【TCG能力・カード魔法】
TCG能力《創世札典》を手に入れた俺
一日一マナから始める現代社会攻略! 治療、未来予知、若返り。マナが足りないので山を買います。【TCG能力/魔法/現代社会】

TCG未経験の36歳無職、TCG能力《因果祭典》で異能バトル世界を駆け抜ける
TCG初心者のおっさんがデッキ構築と召喚で異能バトル!【TCG/デッキ構築/召喚/現代異能】

【現代×異世界・魔法生物】
異界渡りを手に入れた無職がスローライフをするために金稼ぎする物語
現代と異世界を自由に往復! 異世界ビジネスで大金を稼ぎ、不労所得生活を目指す。【異世界往復/金策/スローライフ】※コミカライズ連載中

魔法生物飼育員は今日もかわいいに忙しい
大学の秘密施設で小竜や幻獣たちをお世話する、ひたすら魔法生物かわいい物語!【魔法生物/飼育/日常/癒し】

ジャンルも作風も色々ですが、お好みに合う作品があれば嬉しいです!
よろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。