希望の遡行旅 Ⅳ
私達は、白樺の森を抜け、燃え上がり黒煙が踊るクラスノコプを横目に私達は、ヴルジアへ行く。
無彩色の雪に空模様に積もる雪の絨毯地面の風景。海の中を歩くかの如く、雪の大波を割って走る。冷情の吹雪に可愛げの無い豪雪の天気はどうでもいい。しかし、後から敵が来るかもしれないという恐怖が逃走心を刺激する。
此処からは荒れ苦しいカフカースの山脈。標高自体は故郷のウラテリンブルク近郊のウラテ山脈よりも鋭く高くも無く、其処までも寒く感じない。あくまで、私はな。
此処は少し、陽気だが冷たい曲調の蛇腹楽器が似合いそうだ。勿論、歌詞は無い。皆は黙々と一点の目標地へ向かう。其れまでは、完璧な容器の音楽は奏でられないし、偽物の陽気さの曲調の物しか、頭の中、風景も流れない。
第二の勇者の行進隊の様だ。しかし、皆人外の物しかいないがな...勇者も人生も過酷さが重要だろう?楽に越えれるならまだしも、楽に幕を下げる勇者は傍観者も好きでは無いだろう?答えは無い。
息する度に白煙が舞い、私の中に入っていく。煙を操るのに、私は偽物の紫煙でも取り込むことが出来る様だ。眼の広がる情景は凍寒の最前線。山越えの戦争で有る。
(いつに成れば、向こうへ渡れるかな...)
時間も凍ってしまうほどの荒れ狂う雪の弾幕、冬の怒りと残酷を双方性を同時に感じれるぞ、お前らもどうだ?
気温も解らないが、着々と私達は前進している。夜の帳は無く、閑々で白い雪の踊子達が舞う、疑似的な白夜に成っている。
(方向も心も融解しそうだな...)
心身の温かさも融かす雪と冬の冷たさ。しかし、何の変化も刺激的な描写は無い。蜿蜒と私達は雪の巣を渡る。
そうして、時も解らぬまま、私達は雪の弾幕を抜け、雪雨が止んだその風景を見る。
(おぉ...もう祖国から脱出は近いのか...)
其処に映るのは、間接的に感じる暖かさ、山は下へ傾いて居て、麓には町が視える。
私達はあれが目標地と定め、時間が流れる事関係無く、力を絞りながら下へ下へ下山する。しかし...そう物語は簡単には行かない物だ。
バンッ!!
「ミュハ!!」
如何やら、寒さで気が参ってたらしい。銃声が小さくて、弾丸が小さくて、イデナやユジノー達の声が小さくて...弾丸が私の心臓に当たって貫かれた。
口の中に広がる鉄の味、心が寒い。
(嗚呼、私は...ここまでなのか...?)
しかし、何処か生暖かい、イデナ達の声が聞こえるが、何を言ってるんだ?
其れに、顔に暖かい水滴が垂れる。何だ、涙か?
私如きに涙を流す者か?今まで、楽しかった。しかし、何も出来て無い。
いや...出来たか。此処で死ぬ訳では無い。私は曖昧たる狼だ、決して此処では死なぬ。しかし、少し眠い。私は少し冬眠だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「??...此処は何処だ?」
見覚えの無い霧の中。私は立っていた、痛みも無い、胸周りを触るが傷も穴も無い。
「...どういう状況なんだ?」
私は銃に撃たれ仆れたはず...。しかし何故か生きている、謎だ。
其の時、霧は晴れ、私は一つのボロい家の前に居た。しかし、一目で解った。
「私の家か...」
幼少期のウラテリンブルクに棲んで居た時に棲んで居た懐かしき家。
其の懐かしさと同時に私は扉を開けた。其処には、幼少期の私に姿が有った。
「...」
目の前の私は、貧しい格好で労働をせっせとこなしていた。
しかし、また霧は立ち始めて、また晴れる今度は、私がペラルまでの逃げ、恩師に合う所が映された、まるで映画を見ている様だ。
「私も色々としたな...」
その次に在ったのは、血を染める物物。銃や剣に斧に毒薬に中毒死。色々な種族の者が次々と殺される。男女問わず、殺害する私の姿。其処には、怯えも無い、慣れと言う狂気的で芸術的な美が有った。
そうして、私は悟った。之は走馬灯だと。
これから死だと。
........................
違うなぁ。そんな事で終わる様な者では無いぞ、私もこの物語も...
なぁ、お前らもそうだろ?此処で完結は早いなぁ?
今からが私たちの第二人生が点火するのに、此処で死なねばならぬ?
此処は物語の重要点では無い。私の分岐点だ、死は此の体が受けただけ。私の魂は未だ生を持つ。こんなあっさり死ぬ事は、許されない事だ。
なぁ...お前らはどう思う?この仕打ちとこの世界。お前らは簡単に私を捨てて、他に当たる。だが、其れが命ある者の宿命で在り、一般的な思考だ。しかし、そんな事で私を捨てる?そんな訳が無い。お前たちはこれからも外側の干渉をしようとするが、私が視ている。
世界は残酷だ。平和や和解、命を大事にする事は全て欲に吸われて消えてしまう。端的に省略した私の走馬灯もそうだ。歴史に目を刻む者の死は多くの人を泣かす。しかし、歴史の表舞台には立たない、階級の者の死には誰も涙を流さない。
力を持つ者が全ての時代は死んで、智を持つ者が覇者となる世界に成った、私に世界やお前らの世界。お前らはそう思うだろう?全ての情報を疑い無く鵜呑みにして、誰かに従う。小さい者が大きい物の立場を逆転できる世界に成った。しかし、其れだと、力が智に代わっただけで、底流は変わらない。
世界の理は、権力の様な強大な力。世界は平和では無い、僅かな時間で命が土の大海に沈み、誰かが頂点に向かい、誰かが餓える。こんな愛おしい世界に正義は在るのだろうか?守る物は弱者では無く、弱者を守ったと言う信頼では無かろうか。
悪は何だ。殺しか?恐喝か?脅しか?騙しか?罵倒か?自分と他者にそれぞれの価値観や倫理観が在る時点で、この世界には正義と悪と言う天才と馬鹿の様な対比は産まれる。
真の正義も悪も無い。しかし、私達は心身の中に生まれつき裏表が存在して、容易に、そして、歪んだ正義感・悪感を産み出す。極端な悪と正義に染まり、大勢の津波、社会に流されてしまう。
自覚しようが、罪悪感で心が占められても、津波には多勢に無勢。時代と共に変わる。しかし、之は過去も現在も未来にも通用するが、歴史を知らない者は幸せだ、歴史を知る物は辛い、そして、歴史を知った者は歴史を消す、之が幸福理想論、亦の名を現実である。歴史を力でも学でも変えれば解るだろう。
我々は、都合と言う者で正義も悪も差別する。しかし、何時しか、自分を忘れてしまう。労働、生活、階級、財政力、何でも自分よりも優秀な者を視てしまうと自分を卑下してしまう。
だから、楽になろうと、天に上ろうと、自決する。之がお前らの世界の理であり、私達とは少し違った世界観で有る。
私には、罪を犯してもなお、資格を持つ。其の罪を人生で背負い事、そして、歴史の情景に映る権利が有る。だから、私は生きる。
どうやってか?解るだろう、お前らは。
私には、此の物語では収まらない、お前らの世界に一部が侵食してしまうのだ。許せ。私は曖昧で或る、何かに収まる事が出来ない、延々と広がる空と雲の様だ、其れか、夜空の星だ、月では無い。歴史の名を刻むみたいに、月は夜の表舞台に鎮座する物だ。
私に死は贅沢過ぎる。生きる事が罪で在り、幸福である。此処で死は私もお前らも面白くないだろう。神の悪戯か、裏方の仕業かは知らないが、私は此処で終わる事は無い。
終止符は符号事消えた私には意味が無い。だから、目覚める。
あばよ、あの世の狭間。
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「...ぅぅうん、良く寝たぁ...何処だ此処は?」
明るい部屋、ベッドが並んでいる...此処、死体安置所か?
私は、また胸周りを触る。傷も穴も無い、つまり、私は復活した。
「服はそのままか...」
こういうのは解剖で裸にされるのでは無いのか...
周りは、顔に白い布を被されている。独特な骸の馨りと謎の静寂感。服はそのままだが、帽子が無い...
「一旦、周りを探ってみるか...」
部屋は少しボロボロで、灰色の石造りに成ってる。
部屋の隅に扉が有り、足音を無音に近い形にして、そっと扉に手を掛ける。其の時、外から、声がする。扉に耳を近づける。
「...何とか、ミュハーンさんを救えないのでしょうか」
「駄目だ、弾丸で心臓を撃たれる、もう...」
「...」
「ミュハさん...」
...そうか、私は瀕死みたいな状態なんか...
此処は驚かしてやろう。扉をそっと開け、外に出る。
雪は舞い終わってて、明るい陽が舞って居る。そして、私は扉を開けて、少し離れた場所に居る、三人と軍人?。
「...!?ミュハさん!?」
ユジノーが私に気が付いた。
「イデナ、ハルィーヴさん、あそこにミュハが!!」
「ユジノー...もうミュハは...!?」
「誰が救えないだって?」
「う、嘘だろ...心臓を撃たれて筈なのに、生きていやがる...」
「もう、三人とも、何か涙腺緩んで、眼の周り、赤く無い?」
「「「...」」」
「ミュハさん...?こ、之、幽霊じゃない!?」
「幻覚かもしれない!!」
「落ち着け!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続




