第一次ロヴァノリヤ革命の夜明け Ⅰ
「労働者に自由を!!」
「俺達は、貴族・王族の玩具じゃない!!俺達は自由の民だ!!」
「食糧を寄越せ!!」
万を超えるロヴァノリヤの民達が帝都の大広間で自由と食糧を求める。皆、痩せた体型に古びた小銃や農具を手に取る者や自由・食糧・平等と印された朱旗を振る者等、今回のデモは一味違った。軍人も参加している事だ。
「自由!!」
「パンを寄越せ!!」
「俺達は平等の民、ロヴァノリヤの玩具では無い!!」
その朱き聖者の行進は記者によって新聞が発行され、各地の者に浸透するだろう。そして、気づく。
私達、俺達に王位も貴族も要らない!!
自由と食糧と平等が真の王だ!!
「進め!!」
先鋒のデモ隊が帝都に居座る駄王の棲む宮殿に向け、突撃を開始した。人間、亜人問わず、雄叫び上げながら、先を往く。
「此処から新たな物語が始まるのだ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あぁ...朝か...」
静寂な部屋。イデナはもう部屋出ており、私の気と匂いが漂っていた。鼻に突くような香辛料の刺激的な薫りに似た、野生の馨り。腕を伸ばし、大きなあくびを建てては、勢いよく起き上がる。
「そんなじゃあ、着替えるとするかぁ...」
ヘリンボーン柄の外套を着て、その上に毛皮の羽織を着る。ズボンは其の儘にして準備は万端だ。脱いだ服は煙にして、取り込み。両手指絡めて、前に伸ばしては、首を回す。
「ふぅ~降りるとするかぁ...」
扉を開け、階段を下りる。其処には、煙草吸うイデナろ新聞を読むユジノーの姿がはっきりと見える。
ただ、ユジノーの服装が目に入る。独特な服装、胸ら辺に弾入れの嚢が在り、私の想う騎兵民族の衣装そのものだ。
「ぉお...もう、二人とも起きてたの...?」
「おぉ、おはよう」
「お、おはよう...です」
「...?」
少し不思議な雰囲気が醸し出されている。イデナはボッーと無意識な状態で、ユジノーは新聞の内容に夢中になって居る。何か書かれているのだろうか...
「その新聞、何か書かれているのか?」
そうユジノーに問いかける
「...あっ、いや、ちょっと...」
「...?如何したんだ?そんな渋って何か重要な事でも書かれているの?」
「そ、そうなんだけど...見せにくい内容だから...」
「ちょっとくらい見せてくれよ~」
「...ㇵィ」
そう、渋りながらも、私に新聞を手渡す。何だ何だと新聞を広げてみる。其処には...
(帝都で大規模蜂起、軍人も参加している...)
デモやスト、小規模叛乱の記事が何度も飽きるほどに観てきたが、何とも濃い報道だ。大規模蜂起か...もう来たのかも知れないな。革命が...
(影響されて、他の都市でも蜂起や叛乱が起きそうだな...)
そうか...之から、違う時代が幕明けるのか...
今私は歴史の大転換に立ち会っているのかもしれない、面白いなぁ...
「...どうしようかねぇ」
これまた、選択肢が出て来たではないか、...選択は出来た。
「イデナにユジノー、これからの選択はどうするんだ?」
そう問いかける、イデナは、
「私は、...もうどっちでも良いかな。戦いか亡命、その二つ」
ユジノーは、
「...私は二人についていきます」
だいぶ、雰囲気が曇ってきた。そんなに蜂起如きで心情が変化するのか?気難しいな。
しっかし、”革命”か...私には関係無い出来事なのだが、いや待てよ。
(今、混沌が生じようとする国内、このまま、国内戦だと、人々が多く救済される!!なら、私も救済しなければ!!)
血は正義。何とも素晴らしき思想。帝政要らない、このまま王が死ねば、私は極楽に成る。こんな価値と慾が蔓延る世の中、誰が喜ぶか、権力の在る上級民しか得しないだろうが。皆、気が付いたのだ。暴力こそ、この世界の神秘にして、特権。大蜂起、之は、精神で穢れた世の中を洗う予兆なのかもしれない。ただ、そんな幻想が簡単に出来る訳が無い、何かしら多量の血と言う犠牲と救済が流れる。
(良いなぁ、良いなぁ)
革命も良いな、革命の為に血が流れる。救済を待つ骸たちが待っているではないか、楽しみだ楽しみだ。「では、私は決めた。この蜂起、直接参加はしない、たが、亡命もしない」
「はっ?」
「......?」
二人とも驚きと戸惑いを隠せず、顔に出ている。其れも其の筈。
「私達は...」
その時の事であった。
大きな衝撃音と共に砲撃音や銃声の轟きが鳴り響く。
途端に崩れ往く、建物、そして、其処に住む騎兵民族達の...断末魔が響く。
「何が起きている!?」
イデナの声がするが、其れとは別で、遠くから誰か声がする。
「騎兵民族を討ち取れー!!」
如何やら、さっそく蜂起の影響が来たみたいだ。騎兵民族の虐殺、そうか、なら...
「ユジノーを守る名目で、殺してもいいよなぁ!!」
銃を取り、崩れた瓦礫から抜け出す。其処には、火が舞い、建物は崩れ、瓦礫に挟まれる者、火で燃える者、泣く子供、まさに地獄絵図。
「おぉ、ミュハ、無事だったか...」
其処には、イデナの姿が有った。しかし、左の蟀谷、額から鮮やかな緋色の血が流れて、左手で目より少し上あたりを抑えている。
「大丈夫か、イデナ...」
「何とかな、血は出てしまったが、少し調子が狂ってしまったがな...」
「...おい、ユジノーは?」
「それがな...」
イデナは後ろの方を指さす...私が後ろの方へ行くと...
「あっ、ミュハさん...すみません。足をやられまして...」
其処には、片足が血色に染まったユジノーの姿。息も荒く、苦しそうな様子。
「イデナ、之を使ってくれ」
嚢から、包帯を取り出し、イデナに渡す。
「良いのか、有難う」
「礼は良い、其れで止血かなんかしてくれ」
そして、私は原野の方へ足を運ぶ。
「待て、ミュハ、何処に行くんだ?」
「何か有ったか、様子見するだけだ」
「そ、そうなのか、気を付けてこいよ」
「解ってる、あと、ちょっと之、借りるぞ」
「待て!!」
イデナの短機関銃を租借し、瓦礫塗れのチホレツク、同時に広い原野の遠く、僅かに何か見える。
「...あれは、軍勢だ。だが、何だあの旗...朱旗?まさかな...」
もし、蜂起が数日前で、その情報が数日遅れでこっちに伝来したと仮定すれば...
「如何やら、革命は始まってるみたいだな...」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続




