事件
最初の1週間は特に何事もなかった。
次の週の水曜日に事件は起きた。
家を知られているってのは、やっかいだね。
レビンちゃんを送っている時に、中学生くらいの子達がたむろっているのを
見かけたんだ。
ちょっと嫌な感じがしたけど、帰り道だったから、そばを通ろうとしたんだ。
そしたら、角から、小学生の女の子が出てきて、
「コイツだよ! コイツがあたしのお腹を蹴ったんだ!」
って、レビンちゃんを指さして叫んできた。
レビンちゃんは、女の子を見て、特に慌てた様子もなく言い返した。
「そっちから先に蹴ってきたんでしょ」 って。
「ふざけんな! あんなに強く蹴ってない!」
「1発は1発だよ」
レビンちゃんは、きっちり言い返してる。
負けてない!
女の子はうーって唸りながら、
「兄ちゃん、コイツ生意気でしょ! やっちゃってよ!」
兄ちゃんと呼ばれた男の子達が前に出てきた。
3人だ。
「なぁ、おまえさぁ、うちの妹の腹、蹴ったんだってなぁ」
なんというか、脅そうとしてるんだろうけど、ちっとも恐くない。
レビンちゃんはどうかな? って思って見てみたら、目を伏せて
顔を見ないようにしてる。
「1発殴らせてやるから、俺にも殴らせてくれよ」
中学生くらいの男の子はそんな事を言ってきた。
「いえ、お断りします」
レビンちゃんは、きっぱり言い切った。
なんで、あたしも言ってやった。
「中学生が仕返しにくるなんて、卑怯だよ! しかも男を連れてくるなんて!」
「うるせー! 関係ねー奴は黙ってろ!
おい、こいつをそっちに連れてけ!」
あたしに言い返した中学生くらいの子は、取り巻きみたいな2人の子に
命令すると、レビンちゃんの肩を掴んでいる。
あたしにも2人の男子が来て、手を掴んできた。
今日は、落雷から14日目か。
あたしはともかく、レビンちゃんは、力が弱くなってるはずだ。
あたしがやらないと!
あたしは掴まれた手をとって、軽く押した。
軽くやっただけだったんだけどなぁ……
吹っ飛んでいった!
ごろごろと転がっていく中学生の男子。
もう一人の手も、軽く振り払ってやった。
こっちもかるーくやったんだ。
だけど、吹っ飛んだ!
2,3メートル吹っ飛んで止まった。
その光景をみんなが驚きの表情で見ている。
みんなの動きが止まっているので、あたしはすたすたと歩いて
レビンちゃんの肩を掴んでいる男子のそばにいった。
「その手を離しなよ」
中学生の男子は、はっとした表情で
「うるせー! テメー、俺のダチになにしやがる!」
そう言って、あたしに殴りかかってきた。
ばきっ!
あたしは顔を殴られた。
中学生男子のパンチもこんなもんか。
まるで痛くない。
殴った男子は手を抑えている。手が痛かったのかな?
あたしが平然としてるのをみて、イラッとしたのか、男子は
もう一発殴りかかってきたんだ。
だけど、2発目は食らわないんだ。
あたしは、殴ってきた拳を手の平で受け止めると、男子に膝を叩き込んでやった。
ぐはっ!
男子は、白目を向いてうずくまっていく。
「1発は1発だ」
もう意識はないだろうけど、あたしはそう言ってやった。
周りを見ると、レビンちゃんがキラキラした目であたしを見ていた。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
あれ? なんか変だけど……
まぁ、いいか。
「それより、これ、どうしよう?」
殴ってきた男子は、意識を失い、吹っ飛んでいった男子達は、
うーうー唸ってる。
レビンちゃんに文句を言ってた女の子は、なんでだか、顔に黒い煤の
様なものが付いてて、泣きじゃくってるし。
あたしはとりあえず、意識を失ってる男子を気づかせた。
顔をぺちぺちってしたら、すぐに気づいたよ。
「うっ、うう……」
男子は、あたしの顔をみたら、恐がっていたけど、話しはしないとね。
「これ以上、レビンちゃんに近づかないで欲しいんだけど、いいかな?」
あたしはゆっくり丁寧にそう言った。
男子は、こくこくと頷いていて、言葉にしない。
「ちゃんと、言って欲しんだけど」
そう言ったら、
「わかった。もう、近づかない」
そう言ってくれた。
「そっちの2人もいいかな?」
「あぁ、わかった……」
「わかったよ……」
吹っ飛んだだけで、たいして痛くなかったんだろうね、悔しそうな顔をしてる。
最後は女の子だ。
この子は、レビンちゃんに任せよう。
レビンちゃんは、女の子の前に立っていた。
「わたしとトレノちゃんをいじめてた子は、他にもいたよね?
あと3人くらい」
レビンちゃんが女の子に話しかけるのを、女の子は黙って聞いていた。
「その子達に言っといてくれないかな。
これ以上やるなら、こっちもやり返すからねって。」
「わかった……」
女の子はそう言って、おにいちゃんって言った男子の元へと行った。
3人の中学生男子と、1人の小学生女子は、のろのろ歩きながら帰っていった。
あたし達はしばらく見ていたけど、帰ろうって事になり、
2人でレビンちゃんの家に向かって帰った。
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絶賛死亡中の小金井沙有珠 視点
トレノちゃんと、レビンちゃんには、なんとかって印が付いてて、
蟲に寄生されてる人が見たら、攻撃してくるんだよね。
ほんと、やめて欲しい。
いつも一緒って訳には行かないから、どこかで目をつけられて、
言いがかりをつけられたり、イチャモンをつけられたり、理不尽な理由で
突っかかってこられるんだよね。
なんどもなんども、対処したっていうのかな。
蟲に寄生されてる人って、なんでか知らないけど、多いんだ。
それにそういう人は、自分がやられると、もっと強い人を連れてくるんだよ。
もうね、いやになっちゃうよ。
こっちは小学生女子なのにさ。
中学生ならまだいいよ、高校生とか連れてきた人もいたし、
ほんと何なんだろうね?
蟲に寄生されてる人は、まゆしーがその都度、蟲を退治して
くれて、だんだん数は減ってきたけど、あたし達が中学生になるまでは
結構な頻度で、対処しなくちゃいけなかったんだ。
根本的な解決は、蟲を使う怪異をなんとかするか、トレノちゃんと、
レビンちゃんの呪いを解かないと、ダメだったんだけど……
確か……
あーまた、思い出さないとだめか……
でも、殺伐としてきたから、そろそろ直近の記憶を思い出してみようかな。
あたしは、ふわふわ浮かんでいる雲の様なものを見つめ、
近寄ってきた雲を掴むと、その記憶の中に潜っていった。
お読み頂き有難うございます!
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次回から、第5部になります。
ストックが無くなっちゃったので、書き溜めてから、再開します。
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