2.47.60 定番のアレ
ミーニャとミコミちゃんに別れを告げ、異世界を巡る旅に出た真一。
エピーとドリーとともに、森の上空を飛んでいく。
まずはこのまま森を抜け、外の平野部を目指すのだ。
ようやく自分の物語が始まった気がする。
上空から異世界を眺めて、ワクワクしてくる真一だった。
「それでシン、これからどこに行くの?」
「ドリー、美味しいところがいいっ!」
「そうだなぁ、パーツを探すって言っても何も手がかりはないし、まずは情報収集かな」
真一が探し求める自分のパーツは15個。
だがそれらがどこにあるかの手がかりはほとんどない。
いくつかには持ち主がいたり、状態異常が発生していたりするが、場所を特定できるような情報はなかった。
ただ燃焼とか氷結とか真空とかいろいろあるので、この異世界の知識があれば少しは目処がつけられるかもしれない。
だけど真一はこの異世界のことを何も知らないのだ。
そして残念ながらエピーも、自分の住んでいた森のことくらいしか知らないそうだ。
ドリー?
聞くだけ無駄だよね、、、
となれば、まずはこの世界のことを知るところから始めるべきだろう。
そのためには人間の住む街に行くのが良さそうである。
であれば森を出て平野部へと向かう方が街を見つけやすいはずだ。
それにラスボス(仮)モンスターのいるこの森から、念のため避難しておきたかった。
とはいえこの異世界で人間が支配的な地位にいるのかも不明だ。
他にもっと物知りな種族がいるかもしれない。
「エピー、この世界でいちばん繁栄してるのって人間なの?この世界の知識に詳しい種族に話を聞きたいんだけど」
「そんなのカミュリャムだよっ!いちばんエラいのはカミュリャムに決まってるニャミュぅ」
ドリーが先に答えるが、本当にそうなのかドリーを見ていると不安になる。
「ミュイ〜、知能が高いのならカミュリャムだけど、数が少ないし群れで引きこもっているからね、、、世界中のいろんな知識となるとムレビトかな〜」
「やっぱり人間がいちばん多いのか?」
「そりゃムレビトはこの世界中に群れているもん」
「だから群れ人って言うニャミュぅ」
あぁ、ムレビトって『群れ人』って意味だったのか!
村人の言い間違いかと思っていた真一であった。
「よし、それじゃ、まずは人間のいる場所に行って聞き込みをしよう!エピー、この近くでなるべく大きい街って分かる?」
「知らないけど、アッチの方に何かあるって聞いたことあるニャミュぅ」
エピーが指さしたのは、森から川が流れ出ていく方向だ。
今まで真一たちがいた広大な森は、天まで届きそうなほど巨大な山の麓に広がっている。
世界を区切る壁のような超大型山脈の中でも、飛び抜けてバカ高い山だ。
真一たちはその巨大な山を背にして飛んでおり、地平の先には森林地帯の終わりも見えてきている。
そして真一たちの右下には、一本の大きな川の姿があった。
巨大山脈の方からずっと流れてきていて、森を抜け平野部の遥か先へと続いている。
確かにあの平野部なら人がたくさん住んでいてもおかしくはない。
しかも街があるとしたら川沿いの可能性が高い。
「ドリー、こんなとこまで飛んでくるの初めてっ!」
「そうなのか?」
「ミュイっ!、ムレビトの町には近づくなと『母』たちが言ってたからねっ」
「なんだか良くないらしいニャミュぅ」
なるほど、至聖龍は本来は人間の街には近づいちゃいけないのか、、、
って、そりゃそうだ!
今の自分の姿のことをすっかり忘れていた真一であった。
人間の街に巨大な三つ首ドラゴンが現れたら、どうなるかなんて考えるまでもない。
「待って!エピー、ドリー、一回降りて!」
慌てて地上に降りるように頼む真一。
既にどこかの街から見つかっていないことを祈るばかりだ。
ドラゴンの巨体で空を飛んでいたら、遠くからでも発見されてしまうリスクがある。
真一たちは平野部にかなり近づいていたが、まだ森を抜けきってはいない。
エピーたちはそんな森の外縁部に着陸してくれた。
「どうしたの、シン?」
「エピー、このままだと街に行けない。街の人間たちに怖がられるから」
「ミュイ〜、それはマズいね、、、」
「どうして?ドリーはスゴいんだから、ムレビトは怖がればいいニャミュっ!」
「いやいや、下手したら戦いになるからっ!」
「そんなの、蹴散らせばいいニャミュぅ!」
ウチのドラゴンが好戦的すぎる。
「ダメだってドリー、目的は話を聞くことなんだぞっ!」
「だったら街の人間の半分くらいは、食べずに生かしておけばいいニャミュ。脅かせば何でも喋ってくれるよっ♪」
最初は街中の全員食べるつもりだったのかよ!
ウチの腹ペコドラゴンが肉食獣すぎる。
「待って待って、ドリー!それじゃ世界中の人間を敵に回すことになるって!」
「ミュイ〜、シンの言う通りだよ、ドリー。ムレビトは弱いけど数が多いし、中には強いのもいる。とても全部は相手にできないでしょ?」
「そうニャミュ?」
「そうだよ、ドリー。それに俺も人間なんだ。だから人間と敵対したり食べるのはやめて欲しい」
「シンがそう言うなら分かったニャミュぅ」
なんとか分かってくれたようだ。
ウチの腹ペコドラゴンは素直ないい子なのである。
「だけどこの姿じゃ人間の街に近づいただけで問題になるな、、、話を聞くどころじゃないぞ」
とはいえ問題は何も解決していない。
困り果てる真一だった。
真一の顔だけ人間に戻せば、コミュニケーションを取ることはできるだろうか?
それでも怖がられるだけの気もするが、そこは異世界勇者ってことで何とかなってくれればいいのだが。
「シン、ムレビトみたいな姿ならいいの?だったら、、、」
だが悩む真一の横で、エピーがいきなり呪文を唱え出した。
「ミョルニャンミャミュ《変態》っ!!」
これはっ!?
さっきの身体の形を変えるスキルかっ!
ドラゴン化していた真一の頭が、元の人間の姿に戻っていく。
ただし今回変形しているのは、真一の頭部だけではなかった。
真一の視線がどんどん低くなっていく。
ドラゴンの胴体部分を見下ろすと、巨大なドラゴンの身体がスルスルと縮んでいくのが見えた。
至聖龍の全身が物理法則を無視するように縮小していく。
しかもドラゴンのウロコがスベスベの人肌に。
姿勢も前傾姿勢から直立姿勢へ。
二足歩行の馴染み深い形状のその身体には、、、
おっぱい丸出しっ!!?
左右の胸に豊かな膨らみまであった。
肌の色がやや赤というかピンクがかっているが、間違いなく人間と同じ質感の肌である。
ただし翼と尻尾は小型化しているが残ったままだ。
だけどそれ以外はほぼ人間と同じ身体である。
やがて『変態』が終わると、龍神の身体はドラゴン状態から指4本の人間の姿になっていた。
大学生くらいの、ちょうど元の真一と同じくらいの身長だ。
ただしお尻はプリっと肉づきよく、腰はくびれ、胸にはたわわな果実が2つついている。
グラマラスボディな妙齢の全裸女性の出来上がりである。
このパターンも、真一はアニメなんかで見たことがあった。
これが定番のドラゴン女体化ってヤツかっ!?
ってことは、エピーとドリーも美少女になってたりして!?
期待を込めて真一が隣りを見ると、、、
まるで鏡に映るように、こちらを眺める2つの顔があった。
それは真一にとっても見覚えのある、ある人物の顔だった。
そう、とて〜も、とて〜も、見覚えのある顔である。
「なんで俺の顔なんだよっ!?」
エピーもドリーも、真一そっくりの顔をしていた。




