2.10.23 第一村人発見!?
真一にはどう考えても、空腹による苦痛が100分の1になってるようには思えなかった。
そういえば昨日トイレに行きたくなったときも、ぜんぜん痛みが軽減されず、結局は我慢できなかった。
その辛さたるや、地球にいたときと何ら変わりはない。
つまり、、、痛みが100分の1に軽減されるのは、外部ダメージだけなのではないだろうか?
生理現象による苦しさは対象外なんだと思われる。
だとするとずっと飲まず食わずでいたら、そのうちヒドい飢餓感に襲われる羽目になるってことだ。
しかも恐ろしい予想はそれだけではない。
生理現象が対象外なのは、感じる痛みが100分の1になる効果だけなのか?
もしかして真一のチートスキル自体が、外部要因にしか効かないってことはないだろうか?
そしてその場合、ずっと飲まず食わずでいたらどうなるでしょう?
はい、餓死です。
今までは『飢餓』のスリップダメージを食らうだけだろうと、真一は甘く見ていた。
けれどもこのままでは死ぬとなったら、尊厳とか言ってる場合じゃない。
たとえどこかの誰かの部屋に○ンチ垂れ流しすることになろうとも、食べていくしかないのである。
それにやはり例の村に早く行ってみたい真一である。
そのためには少しずつでもモンスター肉を食い進んでいくしかないのだ。
というわけで、、、
「いただき、ます、、、」
マズメシにテンションを下げながら、朝食に取り掛かる真一だった。
一晩おいて熟成した肉が美味しくなる、なんてことはあるはずもない。
相変わらず涙が出るほどのマズさである。
そうして腹に限界が来るまで食べ続けた真一。
だが今回も進めた距離は10センチ程度である。
絶望的に先は長い。
そしてそれだけではない。
当然ながらさらなる絶望の化身、『便意』がやってくるのだ。
だが真一はもう覚悟ができていた。
全てを諦め、粛々と『コト』を済ませる。
幸いなことに今回は攻撃されることはなかった。
とはいえ状況は全く改善していない。
このままでは脱出する前に、周りの肉が腐り出してしまう。
何か別の要因がない限り、脱出は不可能に思える。
だからこそ真一は、周囲の様子についてはずっと気にしていたのだ。
モンスターの肉に閉じ込められて真っ暗だが、それでも外の音をかすかに聞き取ることくらいはできる。
そのおかげで真一は、いち早く気付くことができた。
『※※※っ!※※※※!』
『※※っ』
『※※※※、※※※、※※※※』
「これって!話し声かっ!?」
人の話し声のようなものがかすかに聞こえたのだ。
2〜3人で会話しているみたいである。
村の方から来たのだろうか?
話し声はこちらへ向かって、少しずつ近づいてきていた。
朝になって村人がチームで森へ狩りにでも出てきたのかもしれない。
「助けてぇえ!!誰かぁああっ!!ここから出してーっ!!!」
すぐさま声の限り助けを求める真一。
日本語が通じるとは思えないが、それでもこちらの存在のアピールはできる。
『※※っ!』
『※※※!※※※、※※!』
するとどうやら村人たちも気付いてくれたようだ。
慎重を期してかゆっくりではあるが、真一の方に向かってきている。
「こっちです!!モンスターの中。閉じ込められてるんです!!」
「※※※!※※※?」
「※※っ!※※※※※!!」
「※※※?」
かなり近づいてきたのか、村人たちの声がかなりはっきり聞こえるようになってきた。
どうやら3人で、全員男のようである。
ただし全く意味の分からない言語であった。
「キシャッ」とか「ギギャアッ」といった感じの、猿の鳴き声のような言葉だ。
「ビギャッ!!」
「タギャーッ!!!」
そうこうしているうちに、村人たちは真一のところまでやって来たようである。
巨大モンスターの死体を見つけたのだろう。
甲高い声で取り乱したように騒ぎ立て始めた。
「ここですっ!!中です!中にいるんです!!」
助けてもらおうと必死で呼びかける真一。
けれども言葉が通じないせいで、村人たちはギャーギャー騒いでいるだけだ。
だがしばらくすると、ようやく真一の呼びかけの意図に気付いてくれたようだ。
巨大モンスターの死体を揺らすように動かし始めたのである。
日本語が通じずとも、真一の必死さが届いたのかもしれない。
ただしその対象は超高レベルのモンスターの、とんでもない重量級の巨体である。
そう簡単にはどうこうできず、村人たちは困ったようにギャーギャー言い合っていた。
そのうち死体を動かすことは諦めたのだろう。
村人たちは方針を変え、道具を使って何かをし始めた。
ザクザクという音がするので、刃物でモンスターの肉を切り取っているのかもしれない。
しばらく作業を続けていると、音がどんどん近づいてくる。
真一はわりと外周部の付近にいたようだ。
「あっ、ちょっとずつ明るくなってきました!もうちょっとですっ!!」
やはり外は昼間なのだろう。
肉の壁が薄くなるにつれ、わずかに周囲が明るくなってきたような気がする。
半日以上も暗所にいたせいで、少しの明かりの変化でも敏感に感じ取れるのかもしれない。
「キキャ?」
「もうちょっと左で!」
「カキャッギョギ」
「そうです、あと少し!」
どんどん明るくなってくる。
言葉は通じなくても、真一と村人たちの気持ちは1つになっていた。
共同作業で友情すら感じ始める真一。
そうこうするうちに残る肉の壁がわずかばかりとなる。
外の光が透過してきて、外側が目に見えて赤く明るくなっていた。
そこへ刃物が勢いよく突き立てられる。
それは簡単に残りわずかな肉を突き破り、真一の頭部に突き刺さった。
「痛てっ!」
思わず悲鳴をあげる真一。
ダメージが1入った。
もちろんこんなもの、チート防御力の真一にとって大したものではない。
反射的に口に出しただけで、本当に痛いわけでもないのだ。
とはいえ普通の人間なら、頭を貫かれて死んでいてもおかしくない。
もう少し気を使ってもらいたいところである。
だが真一が苦情を言う暇もなく、肉の壁がガバっと切り開かれた。
大量の陽の光が、一気に差し込んでくる。
眩しくて目を細める真一。
そんな真一に向かって手が差し伸ばされ、、、
荒々しく髪の毛を掴まれた。
そのまま強引に引きずり出される。
「痛っ!!」
あ、いや、そんなに痛くないけど、、、
助け方っ!!
普通なら大惨事だから!!
もうちょっと丁寧にやってよ!!
助けてもらいながらも、文句を言いたい真一である。
とはいえ真一はすぐに驚きで言葉を失うこととなった。
真一を見下ろす3人の村人たち。
小柄で、上半身裸で、腰にボロ布を巻いただけ。
くすんだ緑色の不潔な肌からは、耐え難いほどの悪臭が漂ってくる。
牙だらけの口を下品に歪ませて、ギシャシャシャと醜悪な顔で笑うその姿。
うん、、、
「ゴブリンだ、これっ!!!」




