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閑話:父の視点1

主人公の父視点の話で、過去まで飛びます。


本編はもうちょっと待って( ;∀;)……

 バデルダ・シュティーア視点


「お前の子はいずれ、勇者とともに旅で出るだろう!」


 昔、旅先で出会った「良く当たる!」という看板をひっさげた怪しい占い師に言われた言葉だ。


 その占い師が通りすがりの私に急に言ってきたことなので、客引きのためかと捨ておいていた。


 そもそも勇者は「人を救う」とか「世を治す」というあやふやな事しかわかっていないカスドラク教国の神話に登場する人物だ。


 数百年前にもその後継者がいたと噂されているが、その話の真偽はいかがなものか。


 多くの人々を救ったという偉業は幼い頃は憧れたものなのでそこまで悪感情を持っているわけではない。


 でもいきなりそんな話を聞いて信じられるか。所詮は口先だけの客引き文句なのだろう。


 ……しかし最近は占い師の言葉良く思い出す。




 私の名はバデルダ・シュティーア。王国最大の貴族、シュティーア家の当主にして、この国の「武」を束ねる立場である。


 名のある貴族の長男として生を受け、充実した日々を送りながら鍛錬をこなし、仲間をつくって様々な冒険をした。


 出会いも別れも多く経験したが、自分の機甲を顕現させたこと、妻との出会いが私の人生の最高の思い出だろう。


 愛する女性と結ばれた事で、家訓により今までの様に冒険をすることが出来なくなってしまったが、それでも私は幸せに生きてきたと思う。


 そしてまた私に最高の思い出ができた。待望の息子が生まれたのだ。





「レイラッ!」


 愛する女性の名を叫びながら部屋に飛び込む。


 そろそろ生まれるだろうと何度も知らせを受けていたので、近頃は遠くに行かないでなるべく屋敷に滞在していたのだ。


 しかしどうしても外せない用事が出来てしまったので、少し外出している所で知らせが入った。


 男の子が生まれた、と。


「まあ、あなた。遅かったではありませんの」


「すまない!」


 いつもどおり強気な声音だが、どこか弱々しさも感じられる。流石のレイラも産後は平常どおりとはいかないだろう。


 だが母子ともに無事なようで、私は心の中で一息ついた。


「ほら、この子があなたの子ですよ」


「ああ」


 レイラから赤ん坊を受け取る。

 

「ははっ、かわいいな」


 思ったよりも重かったが、鍛え上げた自分の腕力が揺らくほどではない。腕にかかる重みから、我が子がしっかりそこにいるのだと感じる。


「よーしよし、よーしよし」


 あまりに可愛いので自分は親馬鹿になってしまうのではないだろうか。だがそれでも良い、大切な我が子を可愛がって何が悪いのか。


 ふと目を薄く開けている赤ん坊から強い視線を感じる。この子はきっと大物になるだろう。そう思わずにはいられない強い視線だ。

 

「それでこの子の名前はどうしますの?」


「うむ、そうだな」


 なるべく独創的なものがいいな。しかしあまり奇抜過ぎず、万人に受け入れられるものでないといけない。


 父と母の名前が少しずつ入ったものとかはどうだろう。


 バデーラ…女の子っぽいな。


 レイルダ…なんか変だ、しくりこない。


「レイラはなにか意見はないか?」

 

「私はふと浮かんだ名前がありますよ」


「ほう。何かの神話の英雄とかか?」


 それは私も考えていた事だ。私の名前も神話の英雄の名前を少し変えたものだからな。


「いいえ、違います。この子を見た時にこの名前しかない、と思ったのです」


 ……大丈夫だろうか。


 「マタニティーハイ」という言葉を最近聞いたが、産後の女性は普段とらない行動をしてしまう傾向があるらしい。特に自分の子供がかわいすぎるあまり奇抜な名前を付けてしまいそうになりがちだという。


 いや、レイラに限ってそんな心配はないか。


「それでどんな名なのだ?」

 

 とりあえず一度聞いてから判断せねば。


「この子の名はメリル、でどうでしょう?」


 ……メリルか。うん、いい響きだ。奇抜過ぎず、万人にも受け入れられるだろう。


 一度口ずさんでみれば、もうこの名前以外考えられないようになった。


「この子の名前はメリルだ」


 


 メリルと名付けられた我が子は順調に育った。順調すぎる、と言わざる得ないほどに。


 最初に違和感を感じたのはいつだっただろうか。教えてもいない事を理解するその姿はすこし恐ろしく感じる。


 子供は当然だが大人が教えなければ、見たことも感じたことも無い物事は知らないはずだ。それなのにメリルは見せたことも無いはずの者をわざわざ取り寄せても、すでに知っているように扱うのだ。


 まるで未知のはずのものが既知であるように。


 だが勇者と旅するという占いの信憑性が増してくるというものだ。


 これほどまでに優秀のならば。普通の子と違うのならば。




 一緒に過ごすうちにメリルの好きなものが分かってきた。あまり玩具は好かないらしい。


 子供に大人気と噂されていたと家令が玩具をもってきたのだが、渡した日の夜には玩具箱に突っ込まれていたのを見た。


 それならばと変わった玩具を取り寄せても結果は変わらなかった。


 こんな事が何度か続き、玩具箱からものがあふれ出すようになっていき、あの丁寧な装飾が施されている玩具箱はメリルにとって「ゴミ箱」ではないか、と思うようになった時だ。


 メリルの好きなものは知識を与えてくれるものだと分かった。


 「もの」と言ったがその「もの」とは大体「本」である。


 見たことのない本ならば一度は目を通すのが性分らしく、屋敷にある本を次々と読破していく。


 貪欲に本に読み漁る姿はまだ幼い子供とは思えない。だが好きなものが分かったのは幸いだ。


 家令達に王国で入手できる本を集めさせた。もちろん子供には見せられるものかどうか一度検閲してから、だが。


 わざわざ取り寄せた私の「思い出の絵本」も迷わず玩具箱に突っ込まれるという悲劇が起きたが、多様な本を集めたことでメリルの嗜好が分かってきた。


 子供向けの本はあまり好まない。名のある冒険者の冒険譚など世界を旅するようなものが好みらしい。


 それを知った時はこの子にも自分と同じ、シュティーア家の血が流れていることが分かった時はほほえましいと思った。


 異常な点は多々あれど、メリルはまぎれもなく自分の子だ。それが再確認できたようでうれしかった。




 メリルを連れてある貴族のパーティーに参加した時のことだ。


 一通り顔合わせを済ませた私はバルコニーで休憩することにした。メリルはいつの間にかパーティー会場から姿を消していたが、この年代の子供では良くあることだ。


 きっとどこかで友達でも作って遊んでいる事だろう。大人同士の話など子供には退屈だろうと大目に見てやることにする。


 偶然かバルコニーにはあまり人がいなかったが、それが幸いしてゆっくり休める。


 透き通った酒を口に注ぎながら、疲れた心を落ち着かせていると喧騒が聞こえてきた。どうやら下の方から聞こえてくるようだ。


 私はバルコニーから身を乗り出し、庭の方を見てみるとある目立つ集団を見かけた。


 どうやら低位貴族の子をその子よりも位の高い貴族の子達が虐めているようだ。


 そんな騎士、いや貴族の風上にも置けぬ行為に顔をしかめる。


 私が子供の時代もこんな事は多々あったが、いつの時代でもいじめというのは無くならない。


 低位貴族の子は暴言のみならず、暴力も多少受けているようで怪我をしている。


 それを発見した私は止めに行こうとすると、視界の端にメリルの姿を捕えた。メリルはいつの間に持ち込んだ本を開きながら、集団の方を見ていた。


 さしずめ読書していた所であの集団が目に入ったのだろう。あの虐められている少年には悪いが、メリルの動向を見守ることにする。


 できる事ならばあの集団を止めにいってほしいところだが……。


 

 私の思いが伝わったからではないだろうが、メリルは本を閉じて立ち上がる。


 そして目の前に落ちてある石を拾い上げた。石など持ってどうするのだろうか?


 無理やり力で鎮圧するぐらいメリルなら余裕だ。普段本の虫になっている姿から想像できないほどメリルは動ける。


 下手にけがさせる可能性を考えると石なんかより素手で止めに行ってほしいのだが。


 そんな事を考えているとメリルは腕を振り上げ、あらぬ方向に石をぶん投げた。


 私はメリルがそんな行為をした意味が分からず、石の落ちていく先を追いかける。


 石はゆっくり弧を描きながら、近くにいた別の集団の近くに落ちる。


「おわっ、なんだ?急に石が落ちてきたぞ!」


「あっちの方向から石が飛んできたぞ!」


「おい、あれを見てみろ!あいつら誰か虐めているぞ!」


「ああ、あいつらの流れ弾がここまできたんだ!」

 

 メリルが石を投げた先にいた集団は正義感が強い集団だったらしく、先ほどの集団になだれ込んでいく。


 しばらく何か言い合いをしていたみたいだが、それは間もなく殴り合いに代わっていった。


 機甲化や魔法を扱える年齢ではないし、パーティーに帯剣など許されていないので彼らの武器は素手だけだ。


 騒ぎが大きくなっていったので、遠くにいた大人たちも集まりだした。そんな中メリルは乱闘騒ぎを起こした連中を冷たい目で眺めているだけである。


 私の様な性格のものなら自分の力でいじめをする集団を止めに行っただろう。


 性根の腐った連中ならいじめに加担したかもしれない。


 根性のないものは見てみぬふりだ。


 レイラのような腹に一芸をもったものなら先ほどのメリルの様な事もしたかもしれない。そしてその様子をおもしろおかしく眺めるだろう。


 だがメリルは冷たい視線でながめているだけだ。


 メリルの心境をパーティーが中止になったという知らせが来るまで考え続けたが、私は分からなかった。




ネタバレ:勇者と旅にでると予言されたのはシオンです。


Q1:メリル様は本が好きなの?

A:趣味の範囲に合致するものは好きだが、それ以外は暇つぶし。父が思っている程「本の虫」ではない。


Q2:メリル様はパーティーに本なんか持ち込んでいるから友達出来ないのでは?

A:正解。この頃は同年代が子供っぽ過ぎて、本読んでいた方がマシという感じ。でも受け身ばかりで自分から話しかけないと友達というのは出来ないものです。


Q3そういえばパーティーの度に中庭に行っているような?

A:少し成長した頃に流石に友達いないのは不味いのではと動き出したが、経験の無さと受け身な姿勢ゆえに失敗し続けた結果中庭に逃げるように……。だからそんなんじゃ友達はry

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