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またもパーティー


「まったく……」


 馬車の中でやれやれという様子で呟く。


 前回はシオンに恋したどこぞの伯爵兄妹に喧嘩売られたりしたし、パーティーには基本的にいい思い出は無い。


 大人向けのパーティーに出席しようものなら、欲望と野望を抱えた人に囲まれる。


 同年代のパーティーに出席してもモーセが海を割ったように人が離れていく。


 両極端すぎやしないだろうか?


 子供ではシュティーア家を相手にするのは危ないと各貴族家が自分の子息に言い聞かせているのかもしれない。


 そのせいで僕が会話できる相手というのは非常に限られているのだ。


 人と交流できないパーティーなんかに出席するくらいならまたアスタと冒険に行きたい。


 




「入学前に顔見知りを増やしたほうがいいですよ。ただでさえ少ないのですから」


「量より質だよ、カレル」


「皇子達もメリル様にずっと付き合う訳にはいきませんよ」


「皇子達だけじゃないさ」


「おや、私の知る限りではそれだけだったはずですが」


「ほら、前のパーティーで拳を交わして仲良くなった奴がいる」


「ああ、あの決闘もどきですか。拳を交わしていませんよね」


「魔法で、だな。っていうかもどきってなんだよ」


「かなり一方的だったと聞いていますよ。結局相手は何もしていないでしょう?」


「決闘の形をとれば男は心で通じ合えるものなんだ。」


「そうですか。では相手の名前をいえますか?」


「当たり前だろ。たしか…ケットー・ダイスキだったけな」


「全然覚えていないじゃないですか。エイベル伯爵家の長男とですよね」


「ああ、たしかそんな別名もあったんな」


「エイベル家に別名などありませんよ」


「……心は交わしたからいいんだよ。心さえ通じれば名前なんて些事だ。」


「では胸を張って心が通じ合っていると言えますか」


「……」


 ダメだ、顔思い出したらなんかムカついてきた。


 一番ムカついているのはあれ以来エイベル兄の株が上がっていることである。


 なんでも妹のためにかのメリル・シュティーアに挑んだ勇敢な心の持ち主だとか。


 皇子達の介入があるまで諦めずに食い下がったとか。


 全部が全部嘘とは言わないが、相手をよく知らないでなめた態度とってシバかれただけなのに、よくもまあ運よく美談として噂が駆けまわったものだ。


 ……自分だけちゃっかり評判上げやがって。




「冗談はこれくらいにして真面目に友人はつくったほうがいいですよ?」


「カレルの友達みたいな?」


「ええ、あれでも大切な友人ですから」


 ……友達ね。


 同じ極の磁石の様に周りから離れていくのに出来るのかね。


 まあ、努力はしよう。




「着きましたよ」


 カレルが馬車の扉を開け、僕は優雅に降りる。


 周りの視線があるから流石に飛び降りるわけにはいかない。


「カレルも今から着飾れば入れるよ?」


「遠慮しておきますね。いってらっしゃいませ、メリル様」


 それだけ言うとカレルは扉を閉め、馬車はまた動き出した。絶対面倒だから着いていきたくないとか思っているだろ。




「「メリル!」」


「やあアデルハイト皇子」


「いや、まとめんなよ!」


「そうですよ、ちゃんと呼び分けてください!」


「皇子達は出迎えか?」


「ええ、学院に入学する生徒の好感度を上げておこうかと」


「こうやって笑顔を振りまいているわけだ!」


「もう少し言い方を考えろよ。まだ中に行かないのか?」


「そうですね、まだまだ来るでしょうし」


「メリルは先に親父たちに挨拶に行けよ。」


「それもそうだな」


 皇子達と軽く話して王城の中に向かう。


 こんなに仲のいい二人だからこそ血の流れない王位継承争いになている。これからもあの漫才コンビみたいな仲を保ってほしいものだ。


 それにしても皇子達がまだあそこで挨拶するってことは…パーティーの前半位はボッチを覚悟しなくてはならないようだな。


 

 陛下に軽く挨拶を済ませ、パーティーの会場に入る。


 しかし陛下がすでにエリーニュス討伐と忌避の森の件を知っているのは驚いた。シュティーア家ならまだしも王家には伝えていなかったのだが、どうやら父が陛下に自慢したらしい。


 さんざん自慢されたぞと陛下に突っ込まれて僕は反応に困った。褒められて悪い気はしなかったんで、うれしかったが。


 


 どうせ中央に立っていてもモーセ状態になるので、パーティー場を通って庭の方に行く。


 煌びやかな城内と比べ、こちらは人が少ない。つまるところ…ボッチの安息の地であった。


 いや、他人の目を気にするカップルがいることを考えると安息の地は言い過ぎか。


 いつもは庭で気分を落ち着かせるのだが、今日に限っては違う。


 ボッチが友達を作るにはもちろん同じボッチを対象にするほうがいい。この安息の地で友人関係を築くのが僕の目的だ。


 もちろん隠れてイチャイチャするカップルは対象外である。勝手にやっていろ。


 さあ、この僕と無償で友人になれるチャンスだぞ、と一歩踏み込むと茂みの奥からとんでもない声が聞こえてきた。


「気持ちわりーんだよ、闇魔法なんか!」


「闇属性に生まれた時点でまともに相手してもらえると思うなよ!」

 

 ……お父さん、お母さん僕は入学前から不登校になりそうです。


 なにあれ?新手のいじめだろうか。


 本人に見えないように隠れながらさんざん罵倒するなんてなんと卑怯な。


 闇属性差別ってそんなに重かったのか。


 現代の魔法教育を受けた身であれば闇属性とてただの一つの属性に過ぎないと知っているはずだが。


「言え、今まで闇魔法でどんな罪を犯したか!」


「俺たちが裁いてやるよ!」


 あのカスどもをすり潰してから不登校になってやる。


 そんな事を思いながら気配を隠して茂みに忍び込んだ。


 さあ、背後から脅かしてお漏らしさせてやると意気込みながら声をする方に近づくと、一人の平民の少年が他の二人の貴族から虐められていた。


 どうやらいじめの対象は僕では無かったようだ。


 まあシュティーア家に対して喧嘩売る馬鹿なんて早々いないか。


 さて、どうしたものだろう。別に助けに入ってもいいが、もしあの少年が反撃の準備でもしているのなら邪魔しちゃ悪いしな。


 目を凝らすとたしかにあの平民の少年は闇属性のようだ。魔力は平均的だし、身体能力に優れた様子もない。闇属性を持っているという点で評価されたのだろうか。


 でなければ平民の少年が学院に入れるはずもないか。


 彼らの様子を観察していると、弱々しい抵抗を続けていた平民の少年が口を開いた。


「あのメリル・シュティーア様だって闇属性じゃないか!君たちはメリル様に同じこと言えるのか!」


「いいんだよメリル様は!あれはなんか違うやつなんだよ!」


 なんか違うやつって何?


「そ、そうだ!あれは黒魔法とかそんなんだよ!」


 訳ワカメ。黒魔法って初めて聞いたぞ。


「お前たちはただ弱いものいじめしているだけだ!恥ずかしくないのか!」


「弱い奴に言われたくない!生意気な口をきくな!」


「ぐっ!」


 片方の少年が押さえつけられ、もう片方の少年に殴られる平民。


 どうやら反撃の準備とかはしていない様だな。


 同じ闇属性のよしみで助けてやるか。


「おい、そこのお前た「それにしても!」…ん?」


 虐めている方の少年が急に高らかに叫ぶ。


「メリル様は怖すぎて近寄りがたいんだよ、覚えておけ!」


「ぐっ!」


 そう言って平民を更に一発殴る。


 今のセリフ…カッコ悪すぎやしないか?


 …僕ってそんなに怖いのかな。


「そうだぞ、あれは闇の悪魔だ!悪いこと言わないから近づくな!」


「がっ!」


 殴られて呻いている少年には悪いが足を止めて考えてしまった。


 悪魔って何だよ人間だよ。


 あと何が悪いこと言わないからだよ。現在進行形で悪事働いているやつのセリフじゃねぇ。


 もしかしてこいつらわざと僕に聞こえるように言っているのか?


 あ、やっべ早くあの平民助けないと──


 「「あとなんか気持ち悪い!」」


 僕の意識は平民を助けるよりもあのカスどもをどうすり潰すかに変わった。





「おい、そこのお前ら」


 割と真剣にどうすり潰すかを考えたが、少し頭を冷やす。


 せいぜい今日は安眠できないぐらい脅せばいいか、と。


「なんだ…ってその紋章は!」


 どうやらこちらの正体に気が付いたらしい。


 気が付く分まだ前回のエイベル伯爵兄妹よりマシだな。


「闇属性がどうとか聞こえたが、僕も混ぜてくれないか?」


「「ひいっ!」」


 少し睨みつけると面白いくらい震えだした。


「混ぜてはくれないようだな。じゃあ5秒以内に消えろ、さもなくば家ごと潰す」


 それだけ言うと彼らは青ざめた顔で逃げていく。権力ってこういうとき便利だな。


「「ひぃぃぃぃ、闇の怪物ー‼」」


 恥ずかしいあだ名やめろ!


 なんかムカついたので闇を彼らの足にまとわりつかせ、盛大に転ばせる。


「「いてっ!」」


 この魔法が阻害される庭でこれだけ高速で魔法を発動できるものは早々いない。


 超高等技術を体感できたのだから感謝してほしいものだ。






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