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ゴーレムとの戦い

 


 二手に分かれるとのことで、僕とアスタはゴーレムの左右にまわる。ゴーレムの方は一瞬戸惑うが、そのまま向きは変えずどちらから襲われても対応できるように僕らを警戒した。


 不良品のゴーレムの場合だと、こういう時対応できずにクルクル回りだすなど頓珍漢な行動を始めだすのだが、この機甲ゴーレムにそれを期待するのは無理だろうな。


 おそらく人間並みの知能、いや超えていてもおかしくない。未知の技術によって作られたゴーレムだ。


 どんな性能か決めつけるのは危険だろう。ライトノベルだと「侵入者ハ排除スル」とか言いそうなシチュエーションなのだが、何も話さないところを見るあたり、そういう機能は無いのか。


 目の前の機甲は父のラータウロと同じく、パワーと防御に重きを置いたタイプだろう。がっしりとした体格に、かなりの厚みを誇る装甲を見ると、そう分析できる。


 腰から剣を引き抜き、心に刃を宿し、構える。僕の剣も結構質のいいものなのだが、ああいうタイプの機甲にぶつけるには少し不安が残る。


 斬り方次第ではすぐに折れてしまうだろう。やはり今回も魔法主体で戦おう。


 


 

 戦いの火蓋はまずアスタが突貫することで切られた。僕はアスタが魔剣を振り上げることに合わせて得意の魔法を発動する。


「エクリプス・カルチェレム!」


 捕えた者の力を吸収する闇の牢獄だ。強制的に位置を固定し、反撃できないように拘束する。


「くらえっ!」


 カラドボルグから雷があふれ出し、辺りを照らす。アスタは僕が作り出した隙を見逃さず、最大の一撃を叩きこむ体勢に入る。


 だが、ゴーレムの性能は僕らの想像を超えていた。牢獄を腕力で無理やり引きちぎり、無茶な態勢から剣を振るい上げてアスタを迎撃する。


「うおぉぉっ!?」


 巨大な力なぶつかり合い、吹き飛んだのはアスタの方だった。直撃を受けたわけでもないので、けがはない。だがアスタは自分の押し負けたのが信じられないように動揺していた。


 僕も少し驚いている。


 生身を超える膂力がゴーレムの特性の一つとはいえ、あそこまでとは。あのゴーレムは間違いなく並みの機甲をも凌駕している。


 アスタを吹き飛ばしたゴーレムに狙いを定め、エリーニュスから学んだ闇の刃を飛ばす。鋭い風切り音を鳴らせながら、高速でゴーレムを襲うがあっけなく弾かれていく。


 それを見たアスタが呻いた。



「…硬い!」


 エリーニュスの時はそもそも闇属性の通りが悪かったが、この機甲ゴーレムは純粋な装甲な硬さで防いでいる。あの分だと僕らの物理攻撃は殆ど通用しないだろう。


 だが、魔法が効かないと決めつけるのは早計だ。


「アスタ、魔法爆弾を投げるぞ!」


 その掛け声でアスタはゴーレムから距離をとる。だがゴーレムはこちらの言葉を解さないのか、その場から逃げようとしない。


 好都合だ。


 魔法爆弾を投擲し、前回と同じように素早く闇のドームで包み込む。直後、巨大な爆発音が響き、破壊されたドームの隙間から膨大な熱が漏れてくる


 僕が選択したのは火属性の魔法爆弾だ。熱によって融解…まではいかなくとも装甲が歪んだり、軟化してくれればと期待したのだが……駄目みたいだ。


 ドロドロに溶解して沈下した地面から、無傷のゴーレムが這い上がってくる。どうやら魔法耐性も高いらしい。


 いったいどんな材料を使えばあんなゴーレムが出来るのか。


 あれでは生き物としての「モンスター」ではなく、化け物としての「モンスター」と呼んだ方が正しいな。


 まあ、あのゴーレムの技術を考えても仕方ない。問題はどうやってあのゴーレムを止めるかだが、もう無理な気がする。


 今までの攻撃で傷一つつかないとなると、どうすればいいか僕には思いつかない。さっき投げた魔法爆弾はドラゴンを2,3匹まとめてぶっ殺す相当やばい代物だったのだが、全然堪えた様子がない。


「うおぉぉ!」


 アスタが再び突貫し、魔剣でゴーレムの腕を斬り飛ばそうとするが、ゴーレムの動きのほうが早かった。


 大剣でアスタのカラドボルグを弾き、もう片方の手でアスタの首を絞める。


「アスタ!」


 それを見た僕はすぐさま走り出し、ゴーレムの後頭部に剣を叩きつけるが、軽い傷しかつけられなかった。


 ゴーレムはすぐにアスタを手放し、こちらに振り返った。その無機質な目とあった瞬間、僕は魔法を発動する。


「<ブラック・ドレインシールド>!」


 それと同時に後ろに飛びずさり、退避する。


 次の瞬間、<ブラック・ドレインシールド>が真っ二つに割れ、大地をゴーレムの大剣が穿った。やはり僕の想像通り、あの魔法でも瞬間的な目くらましにしかならない。


 かなり高等な魔法なのだが、ああも簡単に破られると自信がなくなってくる。すぐにアスタと合流し、体制を整えた。


「助かったぜ」


 アスタの傍に来ると、彼はゴーレムを睨みながら礼を言う。さっき首を絞められた時の話だろうか。僕はその言葉に違和感を感じた。


 助けた…と言っていいのだろうか?あのゴーレムのパワーなら僕が辿り着く前にアスタを絞め殺せてもおかしくない。


 仮に僕が先にたどり着いたとしても無視すればいい話だ。僕の攻撃はあのゴーレムに通用しなかったのだから。


 まさかゴーレムに限って後ろから斬られて恐怖を感じたっていう事はあるまいし。


 

「どうする?」


 アスタからの返答は無い。聞いた後に気付くが、我ながら嫌な質問だな。


 どうする、か。どうしようもない状況で聞く台詞じゃないな。


「メリル、お前は何か案あるか?」


「魔法爆弾が効かない時点で半ば諦めていたよ。」


 あれがダメなら僕の魔法はなおさら無理だろう。


「アスタの魔剣に期待したいところだけど…。」


 簡単にはいかないだろうな。あのゴーレムもカラドボルグの危険性が分かっているのか、優先的に対処している。


 ハッタリや猫騙しみたいな小技が通じる相手でも無いし、隙をつくるのも難しい。だが、カラドボルグに賭けるしかない。


 現時点で有効な攻撃となる可能性があるのはそれだけだ。さて、どうするかな。


 真正面からだとほぼ勝ち筋は見いだせない。あれほど精巧に動くハイスペックゴーレム相手に生身は分が悪すぎる。


 かといって距離をとっても装甲に攻撃が阻まれるだけだ。




 なんとか解決策を考えだそうと悩んでいると、突然ゴーレムがこちらに突っ込んでくる。


「堪え性の無いゴーレムだっ!」


「全くだな!」


 左右に避けることでそれを躱す。僕らの間に出来た空間を通ってゴーレムは壁に激突した。


「恐ろしい威力だな…。」


「あれだけの硬さとパワーの賜物だね。」


 自分の装甲の厚さにものをいわせた突撃。機甲使いがよくやる手法だが、受ける側としてその悪辣さが漸くわかった。


 あんな大質量の物体にぶつかっては無事では済まないだろう。だが、疑問点はある。攻撃力という点では、ゴーレムのもっている大剣を使うのが一番だ。


 アスタの魔剣と真っ向から打ち合ったことと、魔力の流れを見ればあれも魔剣だという事が分かる。

 

 どんな効果をもっているかは知らないが、カラドボルグみたいに雷を生み出していないとなると、魔法属性をもっていない魔剣なのかもしれない。


 だが、それでも魔剣だ。


 硬さにだけものをいわせて突進より、魔剣を振り回していた方がまだ脅威がある。魔力を節約しているのだろうか?


 魔剣はたしかに莫大な量の魔力を吸い上げる。


 だが魔力を失いすぎると生命活動が危険になる普通の生物と違って、ゴーレムはいくら吸われても最低限動けるだけの魔力以外は全部吸われても関係ない。


 魔力を節約する意味がないのだ。単調な突進を躱しながら、そんな事を考える。すれ違いざまに近くで見ると、その理由が明らかになった。


 ああ、そもそももう魔力が無いのか、と。物質種は他のモンスターと、いや他の生物と違い魔力を生み出せない。


 魔力が尽きた時が物質種の寿命だ。


 思えば僕らが最初にこのゴーレムに会った時、既に魔力が尽きかけていたのだろう。どれほどこの地下で宝石を守り続けたか想像もつかないが、決して短い期間では無いだろう。


 このゴーレムを倒す手段は無い。


 だが倒す必要は無いのだ。


 止まるまで魔力を使わせればいいだけだ。


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