表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
重力に焼きついた姉弟 ~少女達の力で家族再生計画~  作者: 織葉
第一章 黒大樹の死屍術士
20/61

020 巨大樹木の森へ

 シルスを前に森を進む。

 時折、空を飛ぶピィを確認するために上を向く。


「小鳥が仲間だなんて、おもしろいわね! 嫌なヤツだけど」

「仲間というか、家族なんだけどな」

「そっか! そうだったわね」


 シルスが枝葉を短剣と木の棒を使って切り開いてくれているので、とても歩きやすい。

 歩きながら、色々話を振ってみる。


「なあシルス。俺のことを冒険者仲間として誘ってくれたけどさ」

「うん」

「こんな貧弱な俺で問題ないものなのか?」


 シルスはちらりと俺を振り仰いで、視線を前に戻す。


「ユージアは貧弱だけど、まだ子供じゃない」


 まあ、確かに。


「大きくなれば、強くだってなるわ。勿論、訓練だって必要よ」

「そっか」

「私の仲間になるんだから、訓練だって手伝ってあげるわ!」


 それは頼もしいね。うん。

 でも、そういうことを言っているんじゃないんだ。


「俺みたいに貧弱な子より、もっと未来に有望そうな子を青田買いしたほうが良くないか?」

「あおた? ……だって、ユージアは友達でしょ?

 友達と冒険って、すごいステキじゃない!」

「そっか。うん。友達と冒険……確かに憧れたこともあったなあ」

「憧れじゃないわ。するのよ!」


 使える、使えないではないわけか。友達だから、ということね。

 そうだな。友達と、リアル冒険をするわけだ。

 命を懸けた冒険!


 なんだか現実味が無いな。

 いや、今やってることも命がけではあるか。


 俺もシルスは嫌いじゃない。むしろ好きだろう。

 こんな真っ直ぐで気持ちの良い少女だ。

 嫌いになるほうが難しくないだろうか。


 いや……兄弟姉妹からは嫌われていたっけか。

 俺は好きだが、シルスはこの世界じゃ結構変人なのかもしれないな。


 それに素材集めは長期的目標になりそうだ。

 シルスと冒険できるのは、願ったり叶ったりではある。


 購入するのは効率があまりよく無さそうだしな……。

 いや、パマイ村の魔素石が特に低品質だった可能性もあるが。


 森が開けた。

 巨大樹木の森との間にある平地だ。

 ここを一時間ほど進めば、巨大樹木の森だ。


 入ってすぐのところに、アレスの遺骸があるはず。


 大丈夫だ。

 獣避けは十分貰ってきた。

 あのちびっこ様が、まさに身を削って作ってくれている薬である。


 プウさん、まじお疲れ様です。

 こんど鉄分多いもの集めてくるんで、どうかご自愛しつつも頑張ってください。

 これ、命の綱なんで。


 枝葉がなくなって歩きやすくなったのか、シルスからも話しかけてくるようになった。


「ねえユージア。

 神父さんは、あなたの兄妹はリナーシタだけだって言っていたわ。

 キョウカさんは、どういう人なの?」


 ……おおう。

 鋭いご指摘だ。なんて言ったものか。


「実は、俺はちょっとこことは遠いところの記憶があるんだ。

 その記憶での姉が、キョウカになるんだよ」

「……なんだか、よくわからないわ」


 まあ、そうでしょうな。

 俺の元居た場所でも、こんなこと言えば電波野郎と呼ばれるだろう。


「悪いやつじゃないよ?」

「それは、わかってる。

 キョウカさんが、あなたのお姉さんだってこともウソじゃないって思ってる」

「まあ、自分でも今の状況が良く分かってないんだよ」

「そうなの?」

「そうなのだよ」


 シルスは難しい顔で腕を組んだ。


「……神殿で、水鏡の儀式をしてみたらどうかしら?」


 なんでしょう、それは?

 俺が質問しようとすると、シルスが続ける。


「大きな神殿にある、魔素術の水鏡で体を映すと、自分の知らない才能がわかったりするのよ」

「そりゃすごいな」


 あなたは野球の才能がありますだとか、絵の才能がありますだとか出るのだろうか。


「どんな感じに分かるんだ? シルスも使ったことがあるのか?」

「無いわ。十五歳になると使うのが習わしよ。

 それより若いと、何も出なかったりすることが多いの」

「全員、何かしらの才能がでるのか?」

「何も出ない人もいるわよ」


 あまり、当てになら無さそうだが。


「兄さんや姉さんが使って、才能が分かって自慢してたわ」

「なるほど。それで、どんな才能があったんだって?」

「魔素術が向いているだとか、天使の守護があるって自慢してた。

 私も、十五歳になったら、調べてみたいわ!」


 魔素術は分かる。魔素操作に長けているとかそういうことだろう。

 が、天使の守護ってなんだ。


「天使の守護って?」

「宙光の周りの天使達から、加護がもらえるってことじゃないかしら。私もよくわからない」


 宙光。

 なんだろうね、それは。

 たしか、神父が宙光の導きが~とか言ってたような。

 しかも天使って実在するのか。


 うーん、ファンタジィ。

 しかし、宙光の天使とか……闇森人の眷属たる俺とは相性が悪そう。

 邪法も邪法じゃないだろうか、俺やプウのやっていることは。


 シルスの緑メッシュの髪の毛を見る。

 あれも、その邪法の一つだよな。

 巻き込んじゃってあれだけど、大丈夫だろうか。

 そうだ。


「なあシルス。アレスの尻尾を入れてもらった訳だけど、何か変化はあったのか?」


 俺の質問に、シルスは緑の横髪を撫でながら言う。


「プウさんが、くっつけて時間があまりたっていないうちは、強い経絡の流れを送らない方が良いって言っていたの」


 まだ試していない、ということか。

 プウがやらない方が良いというなら、やらない方が良いのだろう。


「そっか。風を操ったり、魔素による探知を強化できたりするって、プウが言っていたよ」

「すごいわ!

 ……そうね、アレスは離れたところから枝を切ったり、すごい遠くから、誰かが居るのを察知したりしてたわ!」


 犬系の見た目していたから、遠くの誰かってのは匂いで分かっていた可能性もある。

 しかし、風で枝刃切れるってのは素晴らしい。

 どれくらいの切断力なのだろうか。


 ん?

 シルスが立ち止まった。目を閉じて深呼吸をしている。


「シルス? もしかして、試してみようとしてる?」

「そうよ」

「プウにダメって言われたんじゃないのか?」

「……ダメかしら?」

「やめておいた方が良いんじゃないか」


 シルスは納得いっていない様子で止まったままだ。


「あの森……とても怖い、大きな獣がたくさんいたわ」


 ああ。そうだよな……トラウマものだったに違いない。

 そんな場所へ向かっているのに、使える力を使うなとは無茶がある。


「わかった。無理しない程度に」


 シルスは頷くと、目を閉じて集中し始めた。

 俺もなんとなくシルスと同じように、目を閉じて深呼吸。

 プウから貰った左腕の魔素経絡へ集中する。


 お、おおお?


 なんだか、前にプウに魔素の流れを作ってもらった時のような熱の流れを感じることができる。


 おお、おお、おお……!?


 プウから流された時と比較にならないが、結構な熱が腕をめぐっている。

 その熱を体へ移動させてみる。


 おおーおおおー!?

 今までに無いほど強い魔素の流れを感じるぞ!


 今なら、魔素視も可能かもしれない。


 目へと意識を集中すると、目にもきちんと集まっている。

 集中しながら、目を開いてみる。


 視界は低コントラストで薄暗くなっている。

 遠いところに、濃い闇の横線が見えた。


 あれは巨大樹木の森か。

 やっぱり魔素が濃かったんだな。


 視線をシルスの方へと向けると、シルスの体を濃い闇が流れていた。

 シルスの側頭部あたりに魔素が集中している。


「シルス。良い感じだぞ。アレスの毛のところに魔素が集中してる」

「黙ってて!」


 怒られた。


 あ、そうか邪魔しちゃまずい。

 シルス、魔素操作自体はあまり上手じゃなかったんだ。

 前に背負わせてしまったときも、経絡活性に集中していて話すのを嫌がっていた。


 しかし、なんで俺は急に魔素経絡操作できるようになったんだ?

 時間が経って、プウの魔素経絡が馴染んできたってことなのだろうか。


「あ……」


 シルスから小さな声が漏れた。

 頭の辺りの闇が、先ほどよりも複雑に流れているように見える。


「ユージア。見えるわ。風が吹いたら、なんか見えた」


 そうか。

 風に含まれる微細な魔素を識別するという力だったのかな。


「でも、色々違いはわかるけど、どんな違いがあるのかはわからないわ」

「使い始めだしね。使っていれば、慣れてきて分かる様になるんじゃないかな」

「そうね!」


 シルスがこちらを向いて頷いた。

 魔素視状態で分かりずらいが、たぶん笑ってる。


「俺も、魔素視ができるようになったみたいだよ」

「魔素視?」

「あれ、知らないかな。こう、魔素が黒いもやもやしたので見れるんだ」

「聞いたこと無いわ」


 あれー。そうなのか。

 あまり使われていない能力なのか?

 魔素術を使うものなら、基礎として必要なものに感じるが。


「魔素術使いとかだと使ったりしないのかね?」

「……私、魔素術の訓練は全然だめだったから」

「なるほど」

「なるほどって何よ!」


 やばい怒った。


「いや! 別にシルスが魔素術苦手そうに見えたとかそういう訳じゃないよ」

「何が違うのよ!」

「ほら、人には向き不向きがあるだろう。

 シルスは経絡活性が得意なんだから、そっちを伸ばせば良いんだよ」


 まだ不満そうだな。


「俺と仲間になったんだから、役割は分担しないともったいない」

「……そうだわ! 仲間ですものね!」


 機嫌直って良かった。

 シルスは魔素術が使えないことを思ったより気にしているようだ。


 まあ、こうして素直に怒ってくれるのは良い。

 溜めてブッぱなしたり、鬱入ったりされるより大分付き合いやすい。

 素直な子は好きだ。


 じっと見ていると、シルスが聞いてくる。


「私の魔素経絡、どこか変?」

「いや、シルスは可愛いなって」

「!? ……なによ、急に。あんただって、かわいい子供じゃない!」


 つい口から出てしまった。

 そういう意味ではないんだが。


 少し照れてるみたいだし、分かっててはぐらかしたのか?

 それなら、それに乗るとしよう。


「そうだな。お互い早く大きくなって、もっと素敵な冒険者になりたいな」

「う……うん。そうね!」


 希望に溢れる子は見ていて気持ちいい。


 視線を上げる。

 もう巨大樹木の森は目の前だ。

 気を入れないと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ