エピローグ 台本にない、世界で一番美しい笑顔
「──フランチェスカ様」
静まり返った部屋の窓辺に、バタバタと大きな羽音が響いた。
クロサギの魔術師、ドヴァロがその大きな黒い羽を誇らしげに広げ、光の射し込む窓辺へと降り立った。
「ドヴァロ……っ!」
フランチェスカは椅子から立ち上がり、はやる気持ちを抑えきれずにその名を呼ぶ。
ドヴァロの表情を見て、彼の言葉を、世界の結末を、じっと待った。
ドヴァロは深く一礼し、影のある声に温かい色を滲ませて告げた。
「エレオノーラ様とアルフレット陛下が、かの大国の新たな王と妃となることが正式に決まりました。……あの方々は、見事にやってのけましたよ。もう、この国を脅かす者はどこにもいません」
「……そうですか……。それは、よかった……本当に、本当によかった……」
フランチェスカはその場に崩れ落ちるように膝をつき、両手で顔を覆った。
指の隙間から、大粒の涙がとめどなく零れ落ち、床を濡らしていく。
もう、誰かを傷つけるための歪な台本を演じなくていい。
もう、あの冷たい食堂で、民のために毒入りスープを無理に飲み干す必要もないのだ。
「さあ、どうか涙を拭いてください、王女殿下。もう私たちは自由です。急いで城へまいりましょう。あなたの愛らしい甥御様が、叔母上との対面を今か今かとお待ちですよ」
「ええ……ええ、今行くわ、ドヴァロ」
ドヴァロに導かれ、ゆっくりと立ち上がったフランチェスカは、窓の外を見つめた。
そこには、これまで見たこともないほど美しく澄み切った青空が広がっていた。
フランチェスカは生まれて初めて、明るい希望の光が、この国を優しく照らし始めたのだと確信した。
ドヴァロを振り返った彼女のその表情には──台本のどこにも書かれていない、世界で一番美しい、本物の笑顔が咲き誇っていた。
◎END◎
『すくらいぶ光』の物語はこれにて完結となります。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
歪んだシステムに囚われていたすべての人々が、台本のない本物の笑顔を取り戻す結末を、エレオノーラたちと共に迎えることができました。
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(完結直後の評価が、作者の最大の救いになります)
それではまた、どこかでお会いしましょう!




