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Chapter 012_ダナン①

「おぉ~!」

「お、おぉ〜…」


数日後。

接触事故による計画の遅れを取り戻す為

訓練を早めに切り上げたファントム・ジ・オペラは

予定より1日遅れで


獣人王国の王都 【ダナン】


に辿り着いたのだった。



リブラリアには土地が有り余っているので

都市はどこも巨大だが、

大草原のド真ん中に突然現れるダナンは

空から見ても圧巻の


雑多でエネルギッシュ

活気に満ちた“生きる都市”であった。



「デッカイなぁ…」


まさか、自分がパド大陸に渡るコトになるなど

考えてもいなかったベルナールは

生まれて初めて目にする異国の大都市に

心を躍らせていた。

一方で…



「う〜…」


フォニアに拾われ、彼女にベッタリ着いて回ってきたユキアは世界中を飛び回り、ダナンの街など何度瞳に映したか分からない。


母と、家族と、ソレ以外

瞳に映った相手(ヒト)を3色刷りで見ているユキアにとって、ダナンは(やかま)しく、常に気を張る必要のある…ストレスの溜まる…場所でしかなかった。

正直、好きじゃない。


しかしソレでも、

兄になった人の機微を敏感に読み取り

共感しようと頑張ってみたけれど…



「みゃぁ〜…ぁあ?」


…やっぱり、よく分からなかった。



『ゴンッ』


クリシュベーナが甲板を叩いた音が

2人の近さと遠さを代弁していた






「み!」


獣人王国の巨大な城門が見えてきたところで

ユキアは突然、尻尾を『ピンッ!』と伸ばし



「おにーちゃん!」


ベルナールの腕を



「おわっ!?」


『グイッ』と引いて、

扉を開けて船内へなだれ込んだ



「あたたたたぁ…」


尻餅を突いたベルナールがお尻を庇っていると



「しー!」

「むがっ!?」


ユキアが彼の口を手で押さえ、反対の手を使って

口の前に人さし指を立てた。



「!?…」


驚いたベルナールだったが

ユキアのジェスチャーに素直に従い口を閉じると直後



『ダタタタタッ!』


扉の向こう…先程まで自分が立っていたデッキから

多くの足音が!?



「…」


なんだなんだ!?と、思いながら音の方を見る

ベルナールの隣には



「…」


ベルナールを守るように斜め前に立ち

ほんの少し、鋭い眼差しで扉を見つめるユキアがいた。


そして数秒後。足音が遠く去ると…



「…」


…ユキアは無言のまま。

口に当てていた指を床に置き



『…おにーちゃん。』

「!?」


無詠唱で!?

ベルナールが見えるように…こ、氷で!?



『お外に騎士さん。』


少し、歪んだ…



『お部屋に戻って。騎士さんイジワル。』


…文字を書き綴ったのだった。



「…」


リブラリアにおいて獣人は”魔法を宿せない種族”だと

考えられているし、概ね事実である。

ベルナールも子供の頃に魔法を学んだ際

その話を聞いたことがあった。


だからずっと、

白い魔女帽から顔を覗かせる2つの小さな丸耳と、ローブから垂れた柔らかそうな尻尾を持つ…何処からドウ見ても獣人の…ユキアの”魔女”という名は”魔女の娘だから”だと思っていた。

しかし…



『おにーちゃん。急いで。』


世界で唯一の凍結魔法を宿すユキアの”まほー”の言葉を目の当たりにして。



「っ!」


“何気ない日常”から

”剣と魔法の世界”に引き戻されて…



『…』


ユキアの思いやりにお礼も言えないまま。

中途半端に下げた頭と目線にナニカを映すコトもなく。

逃げるように部屋に帰っていった…











「また、明日ね。おにーちゃん………」



………

……





















「・・・う?なんで?」


翌朝

夜の魔女フォニア・クニャージ・ツェルノヤール・ピュシカは不機嫌な朝を迎えた



「じゅ、獣王陛下がご指名でして…」

「・・・あの人、私のコト嫌いよ?昨日も呼ばれなかったよ?なのに今更、なんで呼び出すの?」

「そ、それは私には何とも…」


不機嫌な理由は2つある。

まず1つ目は…約束していたにも関わらず…獣人王国側の都合で親友である獣人王国の第1王女【リザ・パド】と会えなかったコト。

2つ目は、頑張って戦艦の甲板に立って笑顔で観衆に手を振り歓迎パレードに出席したにも関わらず、何故か晩餐会には呼ばれず。パド大陸の美味しいものを食べ損なったコト…



「・・・理由は無いのね?なら、ヤよ。」

「そんなコトおっしゃらず。どうか…」


リザ王女のコトは大好きだが、彼女の父親は「セコくて、面倒くさくて、イジワル」だと考えているフォニアは獣王陛下が苦手である。


今回呼び出したのも、

どうせお金か権益か魔道具か魔法か妖精を手に入れたいからに決まっている・・・そうだ。あの時みたいに・・・



「むー・・・」


過去のアレコレを思い出したフォニアはいよいよ不機嫌になり

子供のように頬を膨らませた



「ま、魔女様ぁ〜…」


困り顔の使者の言葉にも



「ふーん!だぁ・・・」


と、子供のような反応である。



「で、ですが…」


それでも粘る使者に



「もうっ、シツコイですよ!」

「いい加減にしてください!!」


魔女様の代弁者でもある侍女2人が

使者の前に立ちはだかった…



「…あら?ふふっ…」


やや、ハスキーがかったパワーのある女性の声が…



「旧友と会える…と、しても。ご出席頂けませんか?麗しの魔女様?」


その声に



「う!?」


呼ばれた当人は腰掛けていた椅子から飛び降りるよに立ち上がり



「…」

「…」


侍女2人は最敬礼を兼ねた深いカーテシーと共に

一歩横へ、二歩後ろへ


そして…



「…お久しゅうございます!フォニア様!!」


フォニアの黒瞳に映り込んだのは


挿絵(By みてみん)

「リザ殿下!」


獣人王国の王女様【リザ・パド】

その人であった…

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