Chapter 018_春の魔法
今週は書けました…
本話、少し短めです。ご了承くださいませ
「ベルナールさん。朝ですよー」
3ヶ月後
季節は巡り、年も重なった春の日のこと…
「うっ…」
一時は思い詰めて塞ぎ込み
殆ど何も食べられなくなってしまったベルナールだが
魔女と娘達の看病のおかげで
今では”普通の”生活を営めるまでに回復した。
発作やパニックは数ヶ月間おかしていない…
「ほぉ〜ら、起きて!起きてください」
しかし、だからといってベルナールは
気持ちに折り合いをつけた訳では無い。
今でも…回数はかなり減ったが…あの時のコトを思い出して塞ぎ込む事はあるし、姉妹と以前のように明るく振る舞うコトも出来ずにいる。
元通りの日常を取り戻すには、まだまだ時間がかかる…もしかしたら、そんな日は永遠に来ないかもしれない…そんな”焦り”を感じずには
いられなかった
「うぅぅ…」
焦る必要はない。
しかし、このままでもいけない…
そんなベルナールの気持ちを知ってか知らずか、
三姉妹は努めて”これまで通り”の態度で彼に接した
強い力で引っ張り上げるセルディアと、
甘やかして包み込むミーリア。そして…
「まだ、ねんねですか?このままじゃお昼になっちゃいますよ?今日はお庭のお手入れを手伝ってくれるんじゃなかったんですか…?」
…几帳面で真面目そして世話焼きな、リチア。
「…」
半年近く引き篭もり生活をしてきたベルナールはスッカリ自堕落な生活が身についてしまっていた。
「むぅ~…」
元通り誠実でマメな彼に戻って欲しいという気持ちと
病気のベルナールを甘やかしてお世話したい気持ちを同時に抱え、更に、姉と妹のバランスを取らないといけないと考えたリチアはお世話したい気持ち『グッ』と堪え、心を魔物にして彼に接すると決めていた。
「それじゃあ、私は先に行っていますね。もし、気が向いたら…手伝ってくれると、嬉しいです…」
彼を待てるほど優しくなれない
腕を引けるほど強くもない…
…そんな自分が嫌いだったリチアにとっては
コレが、精一杯の譲歩だった
『カチャッ…』
ベルナールからは見えないように…聴こえないように
ため息を突いて扉を閉めたリチアは
静かに小屋をあとにした…
………
……
…
「…う?」
庭の手入れをしていたリチアの耳は
小屋から漏れた微かな物音を捉えた
『カチャ…』
直後。静かにゆっくり、小屋の扉が開かれ
中から…
「…」
恐る恐る…不安気に、恥ずかし気に顔を覗かせた
「ベルナールさん!」
彼に。
駆け寄りたい気持ちを既のところで耐え抜いた
リチアはその場で微笑みを向けて彼を歓迎した
「…リ、リチアちゃ…」
「!〜、、、」
リチア…そう、リチアは
久し振りに聞いた彼の声に。名前を呼ばれたコトに驚き
感極まり、
手に持っていたスコップと花の苗をその場に落としてしまった
「っ!」
『ボフッ』という土の音で我に帰り、
動揺を…朱に染まった頬を…悟られないようにやや下を
向きながら
「ご…ご、ご飯は。食べられましたか?」
できる限りの平静さを装い、尋ねた。
「う、うん…お、美味しかったよ…」
「よかったです!」
簡単なやりとりのあと…
「…」
ベルナールは何と言ったらよいか分からなくなり、口を閉じた。
不意に訪れた沈黙に気まずくなりかけたが、しかし
「んふふふ…」
リチアは努めて冷静に…彼を不安にさせないように
“自分が”彼を引き上げるんだと決意を持って、
彼の知恵と勇気を信じて。
微笑みを向けて”その時”を
”その言葉”を待ちわびた。
そして…
「…、」
…待つこと、2分と少し
「…リ、リチア…ちゃん…」
「…はい、」
気持ちを押えて、きわめて冷静に答えたリチアに
「オ、オレ…オレも………」
春のような…包み込むような笑顔に飛び込むつもりで
「…て、手伝っても…いいかな…?
ソレを聞いたリチアは
「もちろんです!!」
ついに耐えられなくなって、その場で『ピョンッ』と跳ね。
動く前に彼のもとに駆け寄り
大きな手を両手で持ち上げ
「今は春の花を植えているんです。ガーベラにリリーにチューリップ!お庭をお花で埋め尽くしちゃいましょう!」
春の魔法を、ひと唱え




