Chapter 022_努力の成果
『『『ギキキキ…』』』
キュルグ掃討戦4日前…
「…いたな。」
明日、ギルドで
キュルグ掃討戦の作戦会議が行われる。
2人はもちろん参加するつもりでいるが、もし今日
プルーツリーを陣取る因縁の3匹に挑み負けたら諦めよう。と…
「よし…」
そう、決めていた。
『ギッギッ!』
『ギギャッ!』
『キキキ…』
ベルナールもレオンも冒険者になるまで剣を手にしたことのない素人だった。
剣豪の血を引いているワケでも無いし、親や祖先が戦場で活躍したワケでもない。
冒険者になった以降も先輩達からアドバイスを受ける事はあっても
本格的に剣術を学んだコトなど無く、ただ闇雲に剣を振るい
たまたま、うまくいっていたダケだった…
『スッ…』
『スチャッ…』
…だから。
ギルマスのアベルとミーリアから戦いを学んだコトは
とても貴重な経験となった。
重心を低く保つコト。
相手の動きを予測するコト。
敵と仲間の位置を常に意識するコト。
複数の敵を相手にするのは非常にリスキーであるコト。
剣の柄は軽く握り、柔軟に対処するコト…
「すー…」
「はあぁ〜…」
年下だと侮っていたミーリアが、実は2人より(剣でも魔法でも)
実力者だというコトも分かった。彼女はただ、安全パイを
大きく取っているから今の立場に甘んじているダケで
「もう少し、依頼をこなせば3級になれるのに…」
とギルマスがボヤいていたのも納得だった。
ベルナールとレオンは本人に聞いたりしなかったが、
ミーリアは
①【魔女】の母親
②【剣神】の父親と、③【哲学者】の父親
(※哲学者はエルフ族の”職業”。里一番の実力者を示す。
※ミーリアには父親が2人いる)
④特級冒険者のオジ様(ゲオルグ様)
⑤斥候と暗殺に秀でた獣人の家臣
という、この世界でも指折りの実力者から直接指導を受け、
ありとあらゆる武術に触れた経験がある。
弓を獲物にしていたのも、
「的当てが楽しかったから」と、それだけの理由。
実は、剣の腕もソコソコ…少なくとも、2人よりは上だ。
「…作戦に変更は?」
「無しで。」
日数は少なかったがベルナールもレオンも
先輩の教えを真剣に聞いて真面目に打ちこんだ。
「準備は?」
「いつでも…」
2人とも剣を学ぶには遅過ぎる年齢であったが…
早朝や夜。寝る直前まで剣を振り続けた2人の努力は無駄にならない。
それを今から証明してみせる…
「…行くぞ!」
戦いの筆はレオンの声で動き出した!
「『芽の願い』フェンス!」
ほぼ同時に唱えたベルナールの柵魔法は
『ギキッ!?』
地面に降りていたキュルグの1匹…
2人から見て、1番離れた個体を覆い隠すように発現!
視界と自由を奪い、戦線から離脱させた
「うをおぉっ!」
「おおぉ!」
2人は剣を手に、
それぞれ残った1匹に向かって駆け出した!
『ギッ…』
『キギ…』
1 vs 1での対峙を余儀なくされたキュルグはベルナールとレオン
それぞれ自分の近い方の敵に向かい、威嚇の唸り声を上げた!
「『茨の願い』」
ベルナールと…
「『雫よ』」
…レオン。
2人はそれぞれ
天より与えられし、奇跡の力を…
「『花の森を這う』」
「『天の恵みよ』」
…理の詩に寄せて
「ニードル!」
「ウォーターボール!」
唱えた!
『ギギャッ!』
ベルナールと対峙していたキュルグは突然現れた棘に
驚きながらも身体を捻り、ソレを避けた!
しかし…
「ニードルニードルニードル!」
ベルナールが棘魔法を連射すると…
『ギッ!ギキャッ!?』
素早いワケでも、身のこなしが軽いワケでもないキュルグは
次から次に現れる棘に翻弄され…
「ニードルニードル!」
…そして
『ギャッ!…ギキッ!?』
致命傷…とは、いかないまでも、全身に小さな傷を受けていった
「はあっ!」
さらに!?
”本当の脅威”…剣を振り上げたベルナールが…迫っているコトを
『ギッ!?!?』
見落としていたキュルグは
『ガシュッ!』と…
肩から袈裟斬りにされ
『ギギ…キュッ…』
肩から斜めに…半ばまで…斬り込みを入れられて
全身と地面を赤く染め。そのまま…
「…よしっ!」
ベルナールが剣を引いたため、前へ…
『…トサッ。』
…軽い音を立てて倒れ込み。
小さな身体に収められた血を、すべて大地に還し
『…』
…もう、
動く事はなかった…
………
……
…
…
……
………
「ウォーターボール!」
レオンが走りながら放った水球は
キュルグに向かって真っ直ぐに…
『キィッ!?』
…ではなく!?
やや右に逸れた水玉を
キュルグは反対に跳んで避けた!
「はあっ!」
しかし、これは作戦通り!
キュルグが着地した瞬間
レオンは横薙ぎに剣を振るった!
『ッ!!』
それを見たキュルグは冷静に体勢を整え、
元いた場所に跳びのけ…
『…ギャッ!?』
…が!?
「ザーンねんっ!」
キュルグが着地した場所にはレオンが放った
魔女様直伝の技を娘が継承し、さらにレオンが真似た
↑粘度大増量↑
”ベタつき水”が散らばっていた!
『ギキキキッ!』
あくまで水魔法なので
相手を拘束できるワケではないが、
予想外の攻撃を受けたキュルグはパニックになり転倒
全身に『ベタベタ』を浴びて、更に混乱をきしてしまった!
「…ははは。まさかココまで効果的だなんて…。あとで、約束通りミーリアちゃんにドルチェを奢ってあげないとな」
…などと呟く余裕さえあったレオンだったが、
「っとぉ…」
次の瞬間には真剣な顔になって
剣を振りかぶり…
「…ハアッ!」
…振り下ろした!
ベル「レオ!終わったか!?」
レオ「あぁ!…やっぱ魔女様スゲーわ。まさかこんなに…」
ベル「感想はあと!もう1匹いるだろ?」
レオ「…っと、そうだった。忘れてたぜ…」
ベル「はぁ〜…ったく。頼むぜ?柵魔法の檻は絶対じゃ無いんだ。逃さないうちに…」
レオ「行くぞ!」
ベル「って、おいっ!お前が先に行くのかよ!?」
レオ「早いもの勝ちだぜ〜」
ベル「ったく!調子いいヤツ…」




