58.礼を極めしもの
ダイアモンドで、当座の資金は潤沢になるが、それよりも本質的な問題は、ロージア国の侵略のせいで荒れ果てた公領と、これから他の国々と外交していくに当たっての人材である。
「礼を知らない私に、外交が出来るであろか?誰か良い人を推挙して頂きたい。」
俺は以前、ランケが徳と礼について、熱く語っていたのを思い出し、彼のほうを見た。
「ランケに心当たりは?」
「申し訳ありません、リョータ殿。」
いつも以上に、ランケは神妙になった。
「命を助けて頂いた恩を忘れた訳ではありませんが、リョータ殿がおっしゃいました時代の変わり目が今であるということが、よく理解できました。不肖な歴史学者でありますが、私にその役目をやらせて頂きたいと考えまする。」
そう言って、ランケは最高の礼で頭を下げた。
「はは、不肖とは謙遜しすぎだ。すでに、私には何もいい返すことは出来ない。お前はもう、『礼を極めしもの』になっている。いつまでも、私の下に置くわけもいくまい。」
俺はヨッシー公のほうを向いて、「ランケを宜しく頼む」と、頭を下げた。
・・・・・・
この後、ランケは俺に「出師表」を届けて来た。
別に戦に行くわけでもないし、もはや俺の家来でもないのたが、どうしても書き起こして置きたかったのだう。
その流暢な文章で書かれた決意書を読んで涙を流さないものはいないと言われるほどだった。




