167.いつも通り
コロネットに結界師の素質があるらしいと知って、一瞬、良い師匠を付けてやらなくてはと考えたが、すぐに思い直した。
俺は余りコロネットに頑張って欲しくはなかった。
当人ですら、脈略のない会話だとわかっていたが、俺はコロネットに、
「これからも、いつも通りに頼むよ。」とだけ言って、結界師の話は終わりにしてしまった。
若いうちには、誰かが何かを薦めてくれたり、お膳立てをしてくれたりして、効率よく経験できることもある。
しかし、あまりそれが過ぎると、自立してから自力でステップアップすることが出来なくなってしまう可能性もある。
そもそも、人はそれぞれいつも通りにすれば、何事も無事に過ごせるのである。したがって、俺は自分にがんばらなくてはと暗示をかけるのはよくないことだという考えに賛成であった。
家を出掛け前に、鏡を見て「今日もいつも通りに頼むよ」と、自分で自分に言い聞かせてから出かけていたのを思い出していた。
・・・・・・・
結界師の件はともかく、ここしばらく、ギルドに顔を出していないし、あの結界で保護をしている村もコロネットに紹介したかったので、久しぶりに町にでることにした。