147.桃園の誓い
物事はやりたくなったらやればいいという考えだったので、なかなか物事は進まなかった。
誰かに雇われ、お金のために働いている訳ではなかったので成果を出すために、無理やりやる必要はなかったからだ。
気持ちが入らずに何かをしても、それは単に体裁を整えているだけであり、良いものは出来るはずがないと思っていた。
まあ、良いものが出来るかどうかにかかわらず、その行為をないがしろにせずに、喜びを持って集中したい気持ちはあった。
こうして、魔王城で25年(人類世界で250年)を過ごし、タイムワープした時代へと戻ってきた。
俺達は魔王城を出て、ゴブ達を連れてカラ国からイズルー国へ帰ることにした。
結局、一見だらだらと過ごしていた俺達3人は、魔人たちから見れば、『総統と吉田くん』のような存在に見られていたかも知れない。
しかし、それは俺達にとっては最上の褒め言葉である。
世間的には困った人達かもしれず、そこには崇高な教えも高度は科学力も持ち合わせてないが、人間の揺るぎない尊厳が存在している。
俺達はお互いに誇りを持って生きることが出来たと確信しており、みんなを見渡して、目の輝きというのはこういうことを言うのだろうと思った。
・・・・・・
イズルー国へ帰る途中、桃園のある家の脇を通ると、3人の男たちが酒を飲んでいた。
「あれ、お前らもちょっと来いよ。」
3人のなかでも特にヒゲの長い大男に呼び止められた。
「俺の名前は関羽だ。実は神の国から来たんだよ。お前ならわかるだろう。」
「そう言われれば信じるよ。」
「だろうな。お前は良くわかってないようだけど、俺は2回目だ。お前も神さまの国からきたんだから、将来は神さまになるんだぞ。」
「はあ、そんなことは聴いてないよ。」
「ははは、そんな事より、俺達3人はここで義兄弟の契りを交わそうとしていたんだ。ちょうどいいから、お前、証人になってくれよ」
(そうか、神様になる人は、人間のときから神様なんだ。だから、関羽達は戦国にもかかわらず、あまり欲のない生活を送っていくのか・・)
俺は証人の話は上の空で聞き流し、そんな事を考え、ひとりで納得していた。
・・・終わり・・・
カラ国編は蛇足になってしまいましたが、お陰様で書きたかった事は書けました。
ここまでお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
一旦、エンディングとしましたが、もう少しだけ延長します。