145.三百年建築
魔王城での生活は一見、暇なようにみえるが、決してそうではなかった。
何もない分、自分で工夫する必要があり、日々忙しかった。
(今まで一番充実しているかもな)
却って地球にいた頃のほうが、暇を弄ばせていた。
仕事は忙しかったが、それ以外は全て暇な時間であり、その暇をどうつぶすかが人生の目的と言ってもよかった。
テレビやゲームなども、本当に楽しいかというと甚だ疑問で、ほとんどは暇つぶしであった。
多少芸術的なことをしたとしても、やはり暇つぶしにすぎなかった。
(これでいいのか?)
心のどこかでは、もっと有意義に時間を使いたいと思ってはいたが、どうしていいか分からないというのがその頃の本心だつた。
・・・・・・
そう言う理由からではないが、こちらでのやりがいの一つに、建築設計があった。
魔王城に住んでいれば、人類の100年や200年はあっという間のことなので、俺は建築に300年かかるものを目指した設計をして見ようと考えた。
フラクタル模様の彫刻やパラボリックなアーチや、五重塔のような鐘楼など、思いつくかぎりのパクリを織り交ぜた。
もちろん、それを完遂するために、会社を作り、あくまでも個人事業とした。
まあ、この会社がいつしか老舗となり、世界中の情報が集まる特殊な場所な発展したのは予想外のことだった。