144.ギルドの腐敗
しばらくすると、魔王城は完全に俺達のねぐらになった。
魔人はカッとなるときはカッとなるが、人間のようにしつこくはない。
いつの間にか、ファミット王子とも仲良くなった。
「リョータは魔王城に住む権利を与える。行動も自由だ。」
まあ、そう言われる前から、既に自由にはしてた。
人間の町からは毎日新鮮な野菜が届き、その都度、魔王城からは生ゴミを持って帰って貰っていた。
「ボス、この生ゴミはすごいっす。いい肥料になるっす。」
魔王城から出る生ゴミは特殊な肥料になるらしく、作物の生産量も倍増したらしい。
ついでにスタンピードの発生も激減し、良いことずくめであった。
ただし、魔王城で1ヶ月ちょっと過ごして、人間の町に1年ぶりに行って見ると、ギルドの腐敗が
問題になっていた。
「だから、わしは言ったのじゃ。」
レジスタンス軍のリーダーは真面目そうなヤツだったが、ユーコの鑑定メガネで見ると、彼のオーラは真っ黒だったらしい。
鑑定メガネでオーラが見れるようになったのは、こっちの世界に来てからなので、オーラの判定までは分からなかったらしい。
それにしても、真っ黒いオーラはどう見ても禍々しい感じがしたとのことだった。
「彼は解任し、町から追放する。」
俺が強権を発動し、ギルドは正常化した。
あまり干渉したくはなかったが、今後も魔王城で1ヶ月ちょっと(人間の町で1年)に1度ぐらいは人間の町を見回る事にした。
それ以外は魔王城の中で詩を創作して過ごした。
・・・・・・
『僕は低空飛行』
僕はいつも低空飛行
決して高くは飛べないけれど、
決して行けないところはないよ。
どんなに高い山だって、
山なりに行けば大丈夫。
どんなに深い谷だって、
谷なりに行けば大丈夫。
ひとっ飛びでは行けないけれど、
行けないところはないよ。
・・・・・・
「リョータは才能なし。シュレッダー!」
一生懸命考えたがユーコ先生の評価は厳しい。
「もう一つ。もう一つだけ聞いてくれ!」
・・・・・・
『僕は航海士』
僕は航海士。
とってもとっても大きな船の
小さな小さな歯車だ。
一人で船を動かすことはできやしない
友達は小さな船の操縦士
一人でなんでもこなし、
自分の命は自分で守ってる
どんな荒波も
自分の腕で乗り越える
友達がちょっとうらやましいけど
僕は誇りを持っている
こっちの船には
大勢の命が乗っている
今日も何もなかったけれど、
それが大切なんだ。
・・・・・・
「やっはリョータは才能なし。シュレッダー!」
「えー、ユーコ先生、お願いしますよ~」
そんなこんなことをしながら、のんびりと魔王城内で日々を過ごした。