143.魔王城の時間
ジローの遠吠えが聞こえたので、ユーコが窓を開けて吠え返した。
「ワオーン!」
特に返事はなかったが、すぐに、ジローがイヌワシに持ち上げられて、空を飛んで来た。
「森に行っだきり、10日も帰って来ないので、心配しただ。」
「?? 10日? まだ1日しか経ってないぞ?」
「何言ってるだが、間違いなぐ10日経っただ。」
どうやら、魔王城の中は、時間が10分の1でゆっくりと流れているらしい。
「それは大変だ。ジローもここにいろ。それから、ゴブ達も連れて来なくては。」
このままでは、ゴブ達ばかりが歳をとってしまうので、彼らを迎えに行くことにした。
「ジロー、俺を外に出してくれ。」
俺の召喚獣であるワイバーンのジェットは、普段は異空間にいるため、この世界でも召喚できる。
しかし、窓が小さいので、ここで呼び出す訳には行かなかった。
一旦、ジローのイヌワシに城外に出して貰い、そこからワイバーンで迎えに行くことにした。
・・・・・・
「ボス、スモールボス、どうしたんすか、こんな夜中に?」
ゴブ達は朝早く農場に行っているので、既に寝込んでいた。
俺は事情を簡単に説明した。
「という訳で、お前達も魔王城に連れて行こうと思う。」
「そう言うことなら大丈夫っすよ。俺達もこちらに来るときに、300年の寿命を貰ってるっす。」
「えっ!? そうだったの?」
「そうっす。それよりも、こっちの10日がそっち(城内)の1日なら、そっちの毎日に作物をたくさん届けられるっすよ。」
「おお、それは気が付かなかった。かなり美味しい商売が出来るな。」
こうして、ゴブ達は人間の町に残ることにして、俺達だけで魔王城に帰った。
・・・・・・
魔王城内では、魔素が多いため魔素呼吸をすることで、時間がゆっくり流れるらしい。
俺達は遺跡の村のダンジョンで知らず知らずのうちに魔素呼吸していたらしく、適応できた。
それに対して、一般の人間は魔素呼吸ができないため、魔王城には近寄れないらしい。