138.ジローの状況
初日に会ったときから比べると、ジローも多少は元気になった。
しかし、まだまだスタンピードのときも、活躍らしい活躍はできなかった。
そんなある日、いつにもまして、ジローがしょんぼりしていた。
「何かあったのか?」
「姉ちゃんは、おらを守りたいから強くなれるって言っただ。」
「ふむ。」
「だけど、おらには守りたいやつがいねえ。だがら、きっどおらは弱いんだ。おらにも守りたいやつが欲しい。」
「ユーコだってずっと一人で生きて来たんだぞ。まずは自分を大切にしなければな。自分を大切にできないやつに人を守ることなんかできないぞ。わかったか、ジロー。」
「分かっだよ。ふん!」
・・・・・・
ジローは正直言って、猪突猛進タイプだった。
その後のスタンピードのときも、足を骨折してしまった。
しかも、ケガをしても、それを隠そうとするので困った。失敗が恥ずかしいらしい。
「ジロー、失敗してもいいんだぞ。だけど、人間っていうのは、失敗した後は別人になると思え。失敗した後はいつものように身体が動かないから、一回失敗を認めろ。わかったな?」
「大丈夫だ。姉ちゃんには負げねえ。」
(わかってないなコイツは・・)
そう思いながらも、ユーコへの対抗心が芽生え、いい方向にやる気が出てきているのは何よりだった。