132.ジロー
立派な城壁とはうらはらに、町の中は驚くほど粗末だった。
城壁は神様が作ったから立派だったようだ。
「とりあえずジローを探そう。どうだ? 匂いはするか?」
ジローを探すにしても、ユーコの鼻だけが頼りだ。
「うん。間違いないのじゃ。弟の匂いがするのじゃ」
ユーコはどんどん町の中を進んだ。
すると、元気のない一匹の犬が道路脇にうずくまっていた。
「ジロー」
ユーコが話かけても反応がなかった。
俺はジローに『進化の実』を食べさせた。
ジローもユーコと同じように、人間になったが、様子がおかしい。
「おらのせいだ・・・」
元気なくそれを繰り返すだけだった。
しょうがないので、ユーコにメガネでジローを鑑定してもらった。
ジロー 12才
称号 町の統治者(自信喪失中)
・・・・・・
この町は本来、人間の支配する町であったが、今は魔人の支配下にあった。
人間は何もしなくても、食べ物は魔人から与えられるらしい。
「その食べ物さえも、人間は賭事に使ってしまう。」
ジローは町の皆が無気力になってしまったことに気をやんで、自らも無気力になってしまったようだ。
「そうなのか・・・」
町の中は、道路にもごみやら何やらが散らばっており、ひどい有様だった。
日本の町がいつでも綺麗なのは誰かが掃除しているからであり、やる人がいないと町は綺麗にはならないということだ。
「誰かまとめる人はいないのか?」
「リョータがまとめるのじゃ。」
「いやいや、この世界に干渉していいのか?」
「リョータごときが未来を変えることはない。好きにやればいいのじゃ。例え失敗しても、リョータごときの責任にはならない。」
ひどい言われようだったが、確かに俺は平凡中の平凡を自覚していたので、そうかも知れないとは思った。