115.先払いと本隊
試作品はヨッシー公に献上する予定だったので、久しぶりにヨッシー公に会いに行った。
ヨッシー公は今とても大事な時期にいるが、色々と不安もあるようだったので、僭越ながら、俺の持論を申し上げた。
「歴史を見ればわかることですが、先を行くものは、一見、手の届かないような主流にいると思われますが、実際は単なる先発隊であり、後からくるものが実は本隊であります。」
「なるほど。私は単なる後方部隊ではないと言うことだな。」
「はい。失礼を承知で申し上げれば、今の王様はヨッシー公の先払いだと思えばよいのです。あくまでも本陣は自分だと思い、あわてず、その時を待ち、十分な備えを行えば、問題ありません。」
「なるほど。しかし、今の王が私の先払いだとすると、私が王位に着いたときに、あまり方針を変えるとちぐはぐになるな。」
「そうです。そしてまた、ヨッシー公は次の世代の先払いとなるのですから、しっかりとその流れを創らなければなりません。」
「ああ。」
「時間は自分だけを見れば有限ですが、人類としては無限と行っても言いでしょう。したがって、自分の代で終わる仕事ばかりをする必要はないのです。」
「ん?少し理解ができないが・・・」
「例えばですが、私のいた世界には、300年かかる建築物を設計したものもいます。」
「300年?!」
「そうです。実際、そのものが生きていたときは未完成のままであり、後世のものが建築を続けています。」
「それでは全くの赤字ではないか?」
「そうではないのです。人間はそう言う壮大なものを見ると、同じ人間として誇らしい気持ちになるのです。」
「なるほど。」
「従って、お金をわざわざ払って、未完成の建築物を見にくる人が後を絶たないのです。」
ついつい人間は簡単に結果を求めてしまうが、それでは、人間が自然界の頂点にいる意味がなくなってしまうと俺は俺なりに考えていたのだった。