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115.花冠
今日は塩の試作品ができる日だったので、ユーコと王都の孤児院にやってきた。
作業場は孤児院の隣の土地を購入して作った。
「リョータ様。ユーコ様。お待ちしておりました。」
シスターが丁重に招き入れてくれた。
「様は要らない。こそばゆい。」
ユーコは『様付け』で呼ばれることは慣れていないので、照れくさがっていた。
「こちらが試作品です。」
桐の箱と、塩を入れた瓶と、塩だけのものが置いてあった。
「おお、真っ白でサラサラしていますね。」
瓶から塩を出してみると、スムーズに出て来て問題なかった。
桐の箱も高級感があったが、箱に瓶を入れてみると、
「ちょっとカタカタするか・・・。詰め物が必要だな。」
俺はユーコと一旦、庭に出た。そこにはクローバーが一面に咲いている。
「これは俺の国では、シロツメクサと言うんだ。」
その由来を説明しながら、箱に詰める分を採った。
それとは別に花冠を作ってユーコの頭に載せた。
「ユーコ様、私とダンスを踊って下さいませんか?」
俺がそう言ってポーズを取ると、
「アホ・・・」
その声は、いつもより小声だった。