113/180
109.真心
今回の成果はユーコが孤児院にやらせると提案したことだった。
俺の中で、この意味合いは大きい。
というのも、俺は昔から、豪邸とかというものに、疑いの目を持っていた。
もし、その豪邸の建築に携わった人間が、全て心清らかな人であれば問題ないが、実際にはそうではない。
必ず邪悪な心を持った人間も混じってしる。
いくら高級な材料を使おうと、それを据え付けた側に真心がなくて、本当に価値があるのだろうか?
そういう点から言えば、今回の塩に関しては、孤児院で真心を込めて製品化して貰えれば、自信を持って売ることが出来る。
・・・
ギルバートの店を後にしたあと、ユーコと町を歩いていると、鷹匠が大道芸を披露していた。
向こう側に頭の上にリンゴを載せた子供を立たせ、鷹匠が飛ばした鷹が、見事リンゴだけを取って来るという芸だった。
なぜか、ユーコはそれを夢中で眺めていたのが印象的だった。