108.塩の売り方
次の日、鉄の納品もかねて、ユーコと王都にやってきた。
ダンジョンの鉄鉱石は品質がいいので、ノルドたちも喜んでくれている。
納品を終えた後は、王都に本店を移した商人のギルバートを尋ねた。
「この塩をこの瓶に入れて売りたいと思うんだが、どうだ?」
「正直言えば、もう少し乾燥させて、不純物を除かないと、この瓶には見合いませんね。」
「そうか、高級塩にするにはもう一手間必要か。」
「はい。ただし、それが出来て、桐の箱に入れれば、贈答用として人気となるでしょう。」
「私に考えある。学校の隣の孤児院にやらせる。」
ユーコがそう提案して来た。
「それでしたら、私のところで引き取らせて頂きます。」
「わかった。じゃあ、桐の箱はモンスの町の生産者ギルドに手配させよう。」
「いつも、ありがとうございます。ここれは、こちらからの気持ちです。塩は運ぶときにでも使用して下さい。」
ギルバートはそう言って、小型のマジック収納バッグをプレゼントしてくれた。
やはり、ギルバートは信頼出来る商人であり、また、商人では珍しくチャレンジ精神も持っていた。
チャレン精神とは未知の分野に失敗を恐れないで挑戦するということだ。
もちろん、成功を信じてはいるが、失敗しても、その種がいつの日か誰かによって実を結べばよいと考える。
チャレンジする人がいなくなってしまったら、新しいものは全く開拓されなくなってしまうだろう。