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041 Fly Me to the Moon

どこまでも続くきめ細かい美しい砂浜

透明度の高いスカイブルーの遠浅の海

波打ち際には可愛い水着の女の子たち


ここはアルフヘイムの階層を、まるまる一つ改装した人工ビーチ。

人工の海には人魚のように美しい女の子たちが泳ぎ、天井には雲ひとつない青空が映し出されている。

ここはまさに南国パラダイス!

夢にまで見たハーレムビーチ!


まあ誰もかまってくれないけどね…


「焼きそばだよ〜!」

「黙れカレーだ!」

「ラーメンに決まってるニャ!」

「全部頼んでみんなで分ければ良いじゃない?」

「マスターは何頼むニャ?」

「ロコモコ丼。」

「無いわ〜」×3


今日は、何も分かっていないTシャツとホットパンツ姿のニャモと、それ以外には有り得ないほど良く似合うスクール水着のポチ、そしてそれなら逆に裸の方がエロくない紐みたいな水着のUSAの3人をつれ、この美しいビーチに作られたメイド海の家〈べるせるくつー〉に来ております。


Abashiriを追い出されて一週間…

アルフヘイムに戻ってきたのは良いけれど、その後の俺に対するみんなの態度が微妙です。

ニーベルングでいつも一緒だったはずなのに、こうして直接会えるようになると気恥ずかしいのかどこかよそよそしくて…

まあ分からんでもないけれど。


態度にはそれぞれ個人差があり、ニャモやUSAのように今までとあまり変わらない子もいれば、ポチのようにツンデレさんだったり…

でもまあ、俺が用意したたい焼きをはんぶんこしたら、もと通りになりましたけどね。

みんなポチみたいに分かりやすければ助かるんだけどね…


「あっ!艦長たちも来たニャ!」

そこにピッチピチの競泳水着にムッチムチの身体を押し込んだ玉藻と、その後ろに隠れてモジモジしているパーカー姿のミルフィーユも合流した。


「あれ?艦長水着着てないのかニャ?」

「あんた去年マスターに貰った水着があるんじゃないの?」

「…もう小ちゃくて…」

「太ったのかニャ?はぁっはぁああああーー…」

必殺のアイアンクローで持ち上げられるニャモ…

「…けしからん乳ですね。」

ポチの核心をついた発言で我に返ったミルフィーユは、ニャモを放り投げると胸を押さえ、照れくさそうに無邪気に笑う。

「…良いの!また買ってもらうから!」

「私も新しいのが欲しい〜!」

「私もこんな子供みたいなのはイヤだ!」

「冒険者全員に買ったら、マスター破産しちゃうかもね。」

「…。」


第五火星の一件からキャラ変したミルフィーユは、ひた隠しにしていた自分の過去をみんなの前に晒した事で、なんだか一皮むけたみたい。

それまで如何にもおりこうさんな振る舞いしかしようとしなかった彼女が、抑えていた本性を出せるようになったおかげで、本来彼女が持っていた自分らしさを見せてくれるようになった。


俺たちが離れて暮らしていた間の大きな変化…

それは、良い子でいなければならないと自身を縛り、自分を抑えていつも誰かのために行動していた彼女たちが、わがままに生きることの大切さを知り、人に嫌われる勇気を持ってくれたこと。


集団の中でみんながみんな自分勝手に行動しては、色々問題も出てくるもんだ。

だからみんなは、自分のことよりみんなの為に、みんなは自分たちじゃない誰かの為に…

そうする事が当たり前だと疑う事すらしなかったんだろうね。

そう作られたから…


俺はそんなみんなの事を理解した上で、色々な場面で利用してきた。

変わって欲しいと願う反面、反発される時はあっても最後には必ず従ってくれると分かった上で…


そんなみんなを変えてくれたのは、あの子のおかげ。


あの子がいたから、あの子が楽しむ姿を一緒になって見てきたから…

自分もあの子のようになりたい…

あの子のように自分のやりたい事を楽しみたい…

人は誰かの為だけじゃなく、自分の為に生きたって良いと、みんなは考えてくれるようになった。


それはこれからのみんなに大切なことで、みんなが選ぶこれからの道に必要なこと。


「ちょっとあんたたち!お店を汚さないでよ。」

メイド風の可愛らしい、しかし出る所は出すぎている、なんとも過激な水着姿でバイト中の飯綱が涙目のニャモをつまんでくるのをみんな笑って見ている。


冒険者のお仕事以外にも自分たちが今やってみたい事を見つけてくれた彼女たちは、アルバイトや自分で出したお店でのお仕事も楽しそうに頑張っています。

でもビーチにいるのはビーストやデミヒューマンの子たちだけ。


キャーーーーッ!!

白いビーチに冒険者たちの悲鳴が響く!

「またあの子たち!!」

エプロンを脱ぎ捨てた飯綱がビーチにかけていくと、そこには…

人工の海から次々と這い上がってきた巨大生物たちが海の家を襲撃していた!

逃げ惑う冒険者たちを払い除け、腹を空かせた巨大生物たちはありとあらゆる食料を飲み込んいく!

それは、人工海水をたらふく吸収して巨大化したウンディーネの成れの果て…

それも、うちのマティーニたち…

身体とともに巨大化した胃袋を満たそうと暴走したマティーニ、琥珀、ダージリンの三人は間違えて飲み込んだ冒険者たちを吐き出しながら、まだ調理さえしていない生肉に手を伸ばす…


お水が大好きウンディーネはビーチにくると必ずこうなる。

普段は自制してビーチに近づこうとさえしないのですが、我慢できない日もあるのです。


だってお水が大好きだから!


しかし、哀れな巨大生物たちはご立腹された飯綱さまにより次々と超巨大脱水機にかけられ幼体モードに姿を変えていく…

まあ楽しみ方は人それぞれですから…


暴走したウンディーネの子たちの襲撃はイベントのようでなかなか面白いのですが、お店を出している子たちにとってはたまったものではないのです。

ですので、普段ウンディーネの子たちは別の階層に作ったカジノで遊んでおります!


「うっそーん!」

「…もうやめとこうよ…」

徳川兄妹も…と言うかほぼ妹さまの方ですが、これまでこの世界になかったギャンブルにドハマりして、借金をしてまでかなりの額を落としてくれております。

…借金はもちろんお兄さまがアルフヘイムの内装工事の肉体労働で返済しておりますが、その額は膨れる一方のようで…見ていて哀れでなりません…


このように、まあカジノは別として基本無料で楽しめる施設には、第五火星や第五地球の人々も集まり日々賑やかになってきているのですが、まだ楽しもうと思えない子たちもいます。

それはアンドロイドの子たち。

鉄入くんたちやあの子たちにも、早く楽しんで欲しいんだけどね…



宇宙マンボウ襲撃以来、大規模なエネミーの進行もないのでアルフヘイムの宇宙港に冒険者の姿は少ない。

忙しく動き回るドローンたちの邪魔にならないようギルド艦ヘイムダルのブリッジに上がった俺は、ギルドマスター用に新しく作られた専用席に腰を下ろし、ニャモがこしらえた新たなる電子タバコ《ニャモコス》を吹かす。

火を使わず煙も出ないニャモコスなら空気を汚すこともないし、水蒸気しか吐き出さないから周りの人にも害はない。

カートリッジを交換すれば充電いらずで無限に吸え、効率的にニコチンだけを摂取できるニャモコスは、良いこと尽くめのように思われますが問題がない訳じゃない。

まずは味!

タバコ自体の味は俺の吸っていた物と違いがわからないほど良く再現されているものの、火の味というか匂いがしないのです。

火もマッチやガス、オイルによっても味が変わりますが、そういった僅かかも知れない違いが、どうも再現されていない。

そして色!

本体の色が…ドブ色…

ワザとこの色にしたのかどうかは分からないけど口をつける物にこの色を選ぶとは…

しかも色にはムラがあり、ますます本物のドブっぽい…


吐き出した臭いのしない水蒸気を、それでもパタパタ扇ぐヘイムダルは、俺のとなりで顔をしかめている。

「…みんなはどうしてる?」

俺がそう言うと、ヘイムダルは黙ったまま空中に浮かびモニターに向かって手をかざす。

そこに映し出されたのは、艦内を巡回しているアップルたち。

冒険者の中でもアンドロイドの子たちはみんなそう…

ギルドに所属している子はギルド艦の艦内巡回、ソロの子はアルフヘイムの内装工事や中央公園の清掃をしている鉄入くんの手伝いをしている。


俺がネフィリムの世界で再会した希望ちゃんの事をみんなに話してから、アップルたちアンドロイドの子たちは命について考えている。

…いや、それは彼女たちがまだサポートキャラクターと呼ばれていた頃から考えていたのかも知れないね…


戦艦やバトルドールと同じように、高額ではあるけれどいくらでも量産できる工場生まれの自分たち。

生命体では無い機械の身体の彼女たちは、例え身体のほとんどを失っても、頭部に残されたデータさえ無事なら身体を入れ替えることで完全修復が容易く出来る。

そのデータだってバックアップを取ることだって不可能ではないだろうし、もし無理なら初期化してしまえば良いんだし…


自分たちは最初からみんなとは違うんだ。


今ここにいる自分は、そうあるように入力されたデータでしかない。

だから初期化後の自分はもうそれまでの自分ではなく、自分だけど自分じゃない別のだれか…


でも…それでも誰かの役には立てる道具でいられる。

自分たちの存在価値は、いくらでも代わりのきく便利な代替品でしかないんだから…


そんな思いが彼女たちにある。


…そんな事はない。

みんな一人ひとりが俺にとって、かけがえのない特別な存在なんだ…

そう口ではいくらでも言える。

俺が本気でそう思っていることを彼女たちも知っていてくれている。

だけどそれではダメなんだよね。


自分が生きている意味を…

自分が自分でいる意味を…

誰かの言葉に甘えるのではなく、こんな自分でも生きていて良いんだと思える答えを、自分自身で見つけたいんだよね。


だから今は何も言わず、あの子たちの答えを探す手伝いをしよう。

そしてみんなが見つけた自分だけの答えを、一人ひとりに聞かせて貰おう。


「マスター。暇ならあの子たちを連れてお散歩にでも行ってきて下さい。こっちが何も言わないとずっと艦内にいるんだから。」

みんなの事を同じように心配してくれているヘイムダルの口調は、なんだかお母さんみたいに聞こえるね。

「…別に暇ってわけではないですよ?」

「でもやる事は何もないんでしょう?」

「…。」


気分転換をしてきなさい!

ヘイムダルはそう言うと、俺とアップルたちを艦内から追い出した。


アップル「…まったく!」

ばなな「艦内巡回も」

カップケーキ「大事な」

ドーナツ「お仕事の」

エクレア「一つなのに!」

フローズン「…さてどうしよう?」

ジンジャー「鉄入さんたちの」

ハニー「お手伝いに」

アイス「中央公園にでも」

ジェリービーンズ「行きますか?」

KK「マスターは」

ロリポップ「どうしますか?」


全員「どうせ暇ですよね?」

俺「それまだやるの?普通にしゃべれるでしょう君ら?!」


そんな訳で俺たちは、俺を先頭にまるでカルガモの親子のように一列になり、中央公園までテクテク歩いた。

時には急に曲がったり走ったり…

まあ暇ですから…

人工ビーチやカジノが出来たことで、冒険者以外の人もこの中央公園を訪れるようになってきた。

そのため中央公園の出店屋台を取り仕切る鉄入くんたちは大忙しで、俺たちが中央公園についた時にはAbashiriから来た鉄入くんたちも出されたゴミの片付けや、休憩所の四阿の清掃など猫の手も借りたい状態でした。


そして手伝いを申し出た俺たちに任されたのが慰霊碑周りの清掃。

今朝ビーチに行く前に訪れた時にはゴミひとつ無かったけど、到着した時には献花された本物の花束で埋め尽くされていた。

それは死んでしまったサポートキャラクターたちの魂と、そして新たに迎えた希望ちゃんとお母さんの為に、みんなが献げた家族への想い。

だけどそのままにしておくと慰霊碑の周りはあっという間に花束で埋め尽くされてしまうので、こうして定期的に回収して別の保管場所に移動させている。

俺たちは運んできたホウキやゴミ袋をリアカーから下ろすと、手分けして集めた花束をリアカーに積んでいく。

花束の数はかなりのものだが、みんなでやれば早く終わるだろう…


「お久しぶりです白瀬さん。」


アップルたちがその声に反応し手にしたホウキで身がまえるなか、俺は落ちた花びらでいっぱいになった袋の口を縛る。


「…今日はどうされました?」


俺はゴミ袋を空のリアカーに乗せると、声のした方へ向き直る。

そこにいたのは白くて豪華なローブを身に纏った地球教の枢機卿〈天草〉と、その取り巻きのシスターたち。


「こちらに希望さんとそのお母さまが埋葬されていると伺いましたので…」

そう言いながら慰霊碑に向かって歩いていく天草は、手にした白いユリの花束を置くと膝をつき、二人のために祈り始める。


俺たちの様子を遠目に見ていた鉄入くんが何処かへ向かって走り出す。

カジノにいる徳川社長に知らせに行ってくれたのかな?

それなら少し時間を稼ぐか…


「箱はここにあるのですか?」


天草は目を閉じ祈り続けたままそう言った。


…無理です…

固まった俺をアップルたちが囲むように守るなか、俺は雲ひとつない青空が映し出された天井を仰ぎみる。

程よい気温に設定された空調からは、なんとも気持ちの良い風が吹いてくる。

しかしその風も、顔から吹き出す大量の汗を乾かすには、まだまだ程遠いようですな…


急げ鉄入!残された時間はあとわずか!!

早く来て徳川社長!俺がやらかすその前に!!





遅くなりました(つД`)ノ

ついにスマホがダメになりまして、機種変しておりました。

…7ではなくSEに…


さて今回から新章です。

ご感想もお待ちしておりますのでよろしくお願いしますヽ(・∀・)ノ


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