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騎士と姫  作者: まめ
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騎士と姫2

「で、私どうすればいいの?」


スズランが言う。


「それは、こちらで用意するから気にしなくて良い。でも、そうだな」


「何?」


「貴女は取り敢えず、行儀作法を習って下さい。舞踏会に出ても、恥ずかしくない様に」


梶花は笑って、そう言った。


だが、それが間違いだったと後に後悔する事となる。


それは、もう少ししたら、分かる事。


取り敢えず、梶花は彼女を見付けた満足で気が緩んでいた。


緩んでいたから、あんな事になった。


それは、彼女を王宮に連れて行って少しして起こった。


彼女に取り入ろうとする者が多く出たのだ。


これは、予想外だった。


だから、後で頭を痛めた。


「どうしたの?」


「予想外でした。貴女の笑みは人を惹きつける。惹きつけることは分かっていたのに、それを計算にいれておかなかったのは、私のミスです」


梶花がそう言うと、スズランは笑う。


「私の話が珍しいのでしょう」


それに、態とらしく溜息を付く。


「如何しました?」


「本人がこれなんですから。あの店の主人が何で貴女に話すなと言ったか分かりますか? 私も同じ気持ちですよ。ですが、立場上私には言えませんがね。彼は貴女を独占したかったんです」


「独占ですか?」


「ええ、彼は貴女と他の者が仲良く話すのが、嫌だったのでしょう。だから、話すことを禁じたんです。亭主とは、話していたでしょう?」


その問いに、戸惑ったように頷く。


「ええ、お店が閉まってから」


「やはりね」


「如何言うこと?」


不思議そうにスズランは聞く。


「多分、貴女を独り占めしたかったんだと思いますよ」


「エー、嘘、本当に?」


如何やら、梶花の言い分に納得していないようだ。


「二人っきりの時は優しかったんじゃないですか?」


「確かに、でも、それならなんで今回手放したの? それが、本当なら手放さないんじゃない」


「良くそこに気付きましね」


そう言って、梶花は笑う。


「あの親父が、貴女を手放したのには、きちんと訳がある。あの親父に貴女の立場を教えたからだ」


「いつ?」


「金に紙を挟んで貴女の立場を教えました。こんなとこにいて良い方じゃないと分かったんでしょう」


「うわー、凄い」


スズランは笑いながら言った。


「人は何事も人より前に行かなければ。それが、モノを言う」


梶花はニヤリと笑う。


「怖い人。敵には、回したくないな」


「敵に回すなよ」


梶花は笑いながら言う。


「私を何時でもどんな時も味方に付けろ。それが、お前にとってはモノを言う」


スズランはそれに、頷く。


「分かった。敵には回さない」


「それが良い。なんせ、執念深いからな」


「それって、普通自分じゃ言わないよね」


「普通が何を持って言っているのか、私には分からないけどな」


梶花に言われ、スズランは悩む。


「世間的にって意味じゃない」


「じゃあ、私は世間からずれているんだな」


「自分で言っちゃう?」


「言ったら何か不味いのか?」


「言わないね、普通。でも、彼方に普通何てつまらないわ」


そう言って、スズランは可笑しそうに、笑う。


「そうですか、普通じゃつまらないですか?」


「うん」


元気良く頷く。


「さぁ、今日の作法は何かな?」


梶花は話を変える。


「言葉だって? 私の話す言葉おかしい?」


「可笑しくはないですが、姫とは言えませんね」


「そっか~」


「落ち込まないで下さい。本来、言葉は通じれば良いと思いますよ。ですが、話し方でその人の出自が分かりますから、貴女が、イヤな思いをして欲しく無い」


「分かった」


スズランは笑う。


「梶花は私のために言ってくれているのよね。どんな時も私の味方だね」


「今はですね。分かりませんよ、いつ敵に回るか」


「その時は、情勢が変わった時ね。いつ変わるか自分の目で見ておくわ。ところで変わる可能性は高い?」


梶花は驚いたように、スズランを見た後笑って言う。


「あなたが主になってくれれば、敵になることはありませんね」


「如何したら、主になれる?」


「貴女を認めれば」


「どうやって?」


「私が仕えるにたる人物だと思わせれば、良いのです」


「それが、難しそう」


「難しいことは何も有りませんよ。貴女が今の貴女のままでいられたら、私は貴女に頭を下げましょう」


「えっ、それだけ?」


「ええ、それだけだからこそ難しいのです」


「でも、私が主を決めるまで、私を信用しないことです。いつてでも疑ってかかって下さい」


「なぜ? 貴方がいい人だって、私は分かっている。貴方は王の命令なんて無視出来たんだ。私を迎えにくる意味なんて無いわ」


「そうですか?」


「ええ、母も死に、王も死んだわ。誰も知っている人なんていない。放っておけば、良かったのに。梶花は何で私を探してたの?」


「おかしいですか?」


「うん、すごく」


「参りましたね」


梶花は苦笑いする。


「でも、私はどんな時も影ですよ」


「それは、誰が決めたの? 貴方は影なんかじゃないわ」


強い口調でスズランは言った。


「本当に参りましたね」


「貴方にも影として生きるんじゃなく、普通の人のように生きて欲しい」


「そうは言いますが、私のような者も国には、必要なんです」


「でも、どんなに功績をあげても認められ無いわ」


「認められたいわけじゃありませんから、はい話は終わり午後の授業も頑張ってください」


梶花が複雑な表情をしていると、近藤がそこにくる。


「如何しました?」


「いや、あの子は良く気付くなと思ってな」


「スズランさんですか?」


「ああ」


「何か聞いても?」


「差し出がましいぞ。お前は私をやり損ねた時点で、そういったことは聞けないと思え」


それに、近藤は頭を下げ引き下がる。多分腹の中は、マグマが噴火して、流れていることだろう。


それに、梶花は笑う。


「悪い悪い。それは、禁句だったな」


「いえ、私は梶花さんに何も出来なかった。私は何を言われても、仕方ないんです。私は貴方に負けたのですから」


「ただ、私も運が良かっただけだ」


「私が狙っていることに気付いていて、それを見逃して下さいました」


「見逃すか。それ、イイな。まるで、お前を下においた気分だ」


梶花は笑う。


「気分じゃなく。おいていますよ」


笑って言われ、梶花も笑う。


「でも、私も助けられた口だからな」


「えっ、誰に?」


「王にな」


「何で?」


不思議そうに、聞く。


「まだ、私が王国の影になる前に、王を殺してくれと依頼された時にその殺す相手に助けられたんだ。情けないよな」


「えっ? じゃあ、それから影に?」


「なわけない。私は王の命を奪うことに躍起になったよ。でも、まるで子供にやる様に、いつも簡単にあしらわれた。だけど、ある時王がすごく落ち込んでいたことがあった。後で妹さんが駆け落ちしたことが分かった。彼が妹さんを何よりも大切なことにしているのは、私は知ってたから彼の落ち込みも私には分かった」


「なぜ、梶花さんには、分かったのですか?」


「彼が言っていたんだ。『殺すのが、私なら妹には手を出すな。出したら、私がお前を殺すよ』ってな。私でなんとかできるならしてあげたかったよ。で、いなくなってすぐ、探したよ。でも彼女は産後の肥立ちが悪く、私が探した時には、亡くなっていた。それを伝えた時の彼の嘆き様は、ひどかった。それ以降、私は影になって、彼を支えようと思った」


「そんな事が?」


「あったら、おもしれえよな」


笑って梶花は言う。


それに、怒ったように言う。


「もう、イイです。どうせ私は、貴方に手だし一つ出せなかったんですから」


「そんなに怒るなよ」


梶花が笑って言えば。


「どうせそんなこと思ってないんでしょう?」


「流石だな」


笑って、言うが梶花の目には、なぜか涙が溜まっていた。


如何やら、王に並々ならぬ思いを持っていたようだ。


それは、恋愛感情ではなく、ただ、梶花に出来た初めての友だったからだ。


たぶん、聞いた事はないが、梶花は、生まれた時から闇の中で生きてきたのだろう。


なぜ闇の中で育ったのかは分からない。


だから、外の世界での友は王が初めてだったのだろう。


身分違いと言うべきか、住む世界が、違がうと言うべきか、でも、そんなこと二人には関係なかった。


友になると言うことは、そんなもの関係なくなる。


また、友の為に何かをしたいと思うモノなのだろう。


梶花を見ていると、そう思った。


「もうすぐスズランの講義が終わる」


「じゃあ、隣の部屋に行ってますか?」


「ああ。そうだな」


近くの部屋にいたが、さらに近くに行く。


「さて、勉強はどうかな?」


と、梶花が言った時、ドアがバタンと開き、スズランの家庭教師が物凄い剣幕で言った。


「私には、あの子を指導できる能力がありません。まぁ、それは私だけじゃ無いでしょうけどね。今日限りで申し訳ないがやめさせて頂く」


それを聞き、梶花は笑って言う。


「己の指導力のなさを子どもに押し付けるか?」


「何だと?」


怒って梶花に殴り掛かろうとする。


梶花は何なく、その拳を受け止める。


「お前バカだろう。あの子は人よりも物事をキチンと見れるよ。表面的な教えはあの子には意味がない」


「意味が無いなら、私がくる意味は無い。私は如何やら、貴方の言う表面的なことしか教えられないみたいなので、これで失礼しますよ」


怒って扉から出て行く。


「ごめんなさい」


小さくなりながら、スズランは言った。


「別にお前が謝ることはない」


「でも、これで、3人目だし」


「今度は私が行って、先生を見て来よう。もう、疲れただろう?」


梶花が笑って言った。


「仕事増やしちゃったね。ごめんね」


「イイや、全然。逆に良い子にスズランがなったら困る。私の仕事だ取らないで下さい」


そう言うとスズランは、笑う。


そして、明るく頷く。


「うん」


この笑みを守るためならば、私は何を犠牲にしても構わない。


そう思った梶花だった。


それが、あんな事になるとは、思わなかった。


それは、スズランが梶花の元に来て3年が経った時に起きた。

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