傀儡剛法
黒の長髪を怒りに逆立てる柳児を見て、一虎が怯む。そして、あることに気づいた。
「確かに、さっきアイン先生が出した〔質問〕は、〔立証〕を崩してはいない。だけど、これは」
「竹叢くんが考えている通りです。つまりあれは、実に単純で効果的な精神攻撃、〔揺さぶり〕だったわけですね」
一虎と鎌足が評する通り、アインの言葉に動揺し、ついには青筋を浮かべて怒りを露わにした柳児は、完全に冷静さを失っていた。彼は血走った紫水晶の瞳を傍らに飛ばすと、
「桧王おおおおお!〔傀儡モード〕!5秒設定だあああああ!」
と、犬歯を剥いて叫ぶ。
そんな怒れる主人に、
「了解デゴザイマス。オールセンサーオブオフ。5秒間、〔自己保存〕ヲ最優先事項トシマス」
と応じる桧王。そして〔形人〕の身体が直立不動の態勢をとって、停止した。
途端、
「〔傀儡剛法〕ううううううう!」
柳児が素早く両腕を振り、桧王の身体がアインへ向かって駆け出した。そのスピードは、ぼんやりと柳児を見つめていたアインが目を見張るほど速く、反射的に放たれた〔早撃〕を全てかいくぐるほど疾い。
さらに、
「〔十本奥義〕!〔傀儡正拳〕んんんんんんんんんんんんんんんんん!」
柳児の声と同時に放たれる、桧王の右ストレート。超高速の正拳突きが空気の壁を突き破ったことで、円形の蒸気と爆音が発生。アインが構え、交差した拳銃に桧王の剛拳がぶち当たる。
そして、
「こんな、もの・・・!?」
華奢な桧王のストレートを、あえて避ける必要もないと両足を踏ん張って耐えるアイン。
しかし、
「死に捨てろ!ゴミ女ああああああああああああああああああああああああああああああ!」
そんな柳児の叫びと共に、桧王の右腕が肩から吹き飛び、同時にアインが後方へとぶっ飛んだ。背後に聳えていたビルの壁面に、アインの身体が激突。脆い壁面を貫通。
さらには、
「う、わ!?」
思わずそう声を上げた一虎の前で、映像は、さらに吹っ飛んだアインがビルを三つ貫通して倒壊させたことを告げた。




