糸
「反咲くんによる、〔反咲工房〕セルフコマーシャルが終わったようなので、まずは彼らの〔裏論〕について分析しつつ、〔論戦〕の解析といきましょうか」
鎌足の可笑しそうな声で一連の光景から我に返った一虎は、何からツッコんでいいのかわからず「え?CM?年間最優秀賞?」と目を白黒させて狼狽える。
だがそんな一虎に、鎌足が構うはずもなく、
「〔裏論〕とは、〔ジン核〕によって抽出された〔裏力〕の〔発散〕に伴う、超常能力や現象を指すことは知っていますね?」
と質問してくる。混乱気味の一虎も、鎌足のペースに呑まれて反射的に答えている。
「は、はい。えっと、アイン先生の銃撃とか、反咲くんの、〔操十糸〕?とか」
「ええ。アイン先生の場合は〔拘束衣〕に〔ジン核〕が使用されていて、その効果は〔裏論武装〕の〔基本能力〕である〔論裏障壁〕の強化版、〔重層論裏障壁〕と、〔身体能力強化〕。〔特性能力〕は、〔銃弾の威力強化〕と〔武装のコピー生成能力〕です」
「〔武装のコピー生成能力〕、ってことは、つまり・・・」
「竹叢くんの予想通りです。つまり彼女はその〔特性能力〕を〔ハン核兵器〕である拳銃に使っているのです。本来銃弾を無限にコピーし、補給するための能力で、何丁もの銃を生成。1度撃てば自壊する超威力の射撃を繰り出している、というわけですね。では、反咲くんの場合、〔特性能力〕はなんだと思います?ヒントは、彼が使っている技や技術の〔名付〕です」
一虎は鎌足の言葉に誘導されて幾つか柳児が示した単語を反芻する。
「〔傀儡柔法〕に、桧王は〔形人〕で、〔裏論武装〕は〔操十糸〕・・・これって、まるで」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・人形劇」
いきなり差し込まれた深夜の声。それにビクリと驚いて、今さら傍に深夜と赫夜がいることを思い出した一虎だったが、彼女の言葉に何かを閃く。
つまり、
「そうか、反咲くんは、〔糸〕を操る〔裏論使い(ディベーター)〕」
「正解です。彼の〔裏論武装〕は両手に装着した手袋、そこから伸びる合計10本の〔糸〕が、ほぼ不可視に近い攻撃を行います。先の瓦礫の落下を操ったのも、アイン先生と桧王くんを投げ飛ばしたのも、ビルの倒壊も彼の〔特性能力〕たる〔糸〕の仕業というわけです。このように、〔裏論武装〕の〔基本能力〕と〔特性能力〕を使用して敵を殲滅せんとする行動が、〔論戦〕を構成する1つ目の要素、〔実戦〕です」
「ほ、へええええ」
「では、今説明した〔実戦〕とともに、〔論戦〕を構成するもう1つの要素、〔弁論〕を学びましょう。映像をご覧になって下さい」
鎌足に促され、一虎は深夜と赫夜と共に3次元ディスプレイを覗く。そこには倒壊したビルの前で、カメラを意識して〔操十糸〕をアピールする柳児と桧王がおり、
「〔立証〕しろ」
倒壊したビルの中から立ち上がる人影、無傷で現れたアイン・シュバルツは、柳児と桧王にそう言った。




