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本気

「つまりですね、天出雲さんはアインさんの射撃の単調さ、要は手加減していたという隙を突いたのです。さらには射線がわかっていたこと。〔ジン核〕の半分以下の出力しか持たない〔ハン核兵器〕をアインさんが使っていることも、銃弾を受け止めた要素としては大きいですね。〔ジン核〕を使用した〔裏論武装〕は、使用者に常時、旧時代の兵器では歯が立たない程度の〔論裏障壁(ロジカル・シールド)〕と〔身体能力強化〕を付与します。これを利用した結果の無傷というわけです」



 再開されたアインの猛攻に対し、完璧なタイミングで防御に入った〔苦労丸〕から、鎌足の解説が一虎に届く。しかし、それを聞いたところで一虎達は伏せた姿勢から起き上がれない。

 裏由は単純で、



「だ、だから今アイン先生はちょっと本気になった!それがこの・・・!?」

「ええ、彼女の持ち技の1つ、周囲の物体に弾丸を当て、それが跳ね返る先を計算して攻撃とする跳弾射撃・〔四砲八砲(オールレンジ)〕です」



 そう言う彼の言葉を証明するように、さらに大きく広がった〔苦労丸〕を、全方位、あらゆる角度から銃弾が叩く。少しでも隙間があれば入り込もうとする必殺のそれを、どうやらこれ以上大きくなれない〔苦労丸〕が、見ていてもギリギリとわかるタイミングで、黒い膜状の身体をよじってカバーする。

 そんな中で、一虎はどうしても聞かずにはいられなかった。

 それは、



「ていうか、なんで出てきたんだよ!?隠れてろって言ったじゃないか!」



 一虎の言葉に伏せた身体をビクリと竦ませ、申し訳なさそうにする赫夜への詰問だった。



「で、でも、私・・・」



 言い募ろうとする赫夜に、しかし、



「〔時環帯〕を〔月夜〕にしてもらったのは、〔成長〕した姿のほうが安全だと思ったからなんだよ!?せっかく天出雲さんも守るって言ってくれたのに、これじゃあ意味ないじゃないか!」



 一虎はさらに言葉を重ね、赫夜が傷ついた顔を逸らす。その表情を見て、一虎はやっと我に返った。少し冷静になった頭が、赫夜の行動の真意を捉えなおす。



「ご、ごめん。言い過ぎた。赫夜は、僕を心配してくれたんだよね?」



 言葉に、俯き気味に頷く赫夜。

 一虎が所有者であるという事実。一虎を守り戦うのが〔裏論武装〕としての本分。

 しかし赫夜を突き動かしたのは、そんな裏由ではなかった。



「私、嫌です」

「え?」

「一虎さんが、一虎さんみたいに優しい人が死んでしまったら、そんなの・・・」



 人間として生きてみたいと言った少女が、苦しそうに叫ぶ。自分を受け入れ、肯定してくれた少年に向かって感情を迸らせる。自分の激情に翻弄されて、また溢れそうになる涙を、しかし少女は拭って捨てる。

 そして、



「死んじゃヤダ!」

「赫夜・・・」



 少女、赫夜は、そう言った。対し、息を呑んで動けない一虎に向かって、もう一人の人物が口を開く。



「・・・一虎」

「・・・あ、え?」



 一虎は、傍で自分を呼んだ人物、天出雲深夜の蒼い瞳を覗く。すると彼女は言った。



「・・・赫夜、意志、示した。だから、応える。だから」



 まっすぐな三白眼が一虎の目を捉え、放つ。



「・・・一虎も、本気、出して」



 だが、



「・・・本、気?」



 一虎は深夜の言いたいことを掴み損ねた。

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