一段、二段、三段
それは一体どういうことか、そんな疑念が生徒達の列の間を駆け抜ける。その空気を愉しんでいるのは、やはり一人の男だけだ。男が「説明しておきましょう」と前置いて、彼らの疑問に連続の〔言撃〕で答える。
「〔模擬論戦〕とは、文字通り、自分という存在を披露する模擬戦です。これにより自らの能力をアピールし、君達には〔自らの判断で三段論法〕を作って頂きます」
鎌足の右手の人差し指に黄金の光。空中を奔った指先が、頭上に黄金の文字を象っていく。
「〔三段論法〕とは、外敵の攻撃を最前線で受ける前衛の〔一段〕」
男の口が三日月の笑みを右を向き、文字を象る。
「発動まで時間のかかる、特殊効果系の〔裏論〕や、大規模破壊力を持つそれを行使する、後衛の〔三段〕」
男の指が左に翻り、文字を象る。
「その中間で〔一段〕と〔三段〕のバランサー役となる中衛の〔二段〕をそれぞれの役割とした3人で構成されます」
〔三段論法〕と書かれた文字の下、前中後、それぞれ役割を示した構図で〔段〕が示される。さらにはおまけで、それら全ての〔段〕を丸で囲み、大きく〔全段〕・鎌足と書いて、男は自らの実力を明確に示す。
「君達の半数以上は、中学卒業後の春休みには〔裏論武装〕を得ていたわけですから、ある程度自らの〔裏論武装〕の〔特性能力〕を裏解しているところと思います。その裏解をさらに深め、それを活かせる〔段〕を認識することも〔模擬論戦〕の目的の1つです。ですが私は、そこで馴れ合いから適当に〔三段論法〕を結成することは許しません」
そう言うと、鎌足は先ほどまで中空に浮かんでいた黄金の文字列を腕の一振りで払って霧散させる。
「先日の襲撃も記憶に新しいならば裏解出来ることと思いますが、〔論戦〕とは死の危険を伴う。つまり、仲がいい、性格が合う、好きだから、などの〔裏由だけ〕でお互いに命を預けていては、その甘さに溺れて命を落とす者が出かねない。もちろん信頼関係を築くうち、結果的にそうなることはあります。が、〔論戦〕という実戦において、戦闘において求められる合裏的で効果的な戦術と、それを活かせる戦力としての価値が発揮出来なければ、それは〔三段論法〕ではなく、ただ三人の人間が近くにいるというだけのお粗末になってしまいます」
再び鎌足の指先が黄金を奔らせて中空に描き出したのは、二つのピラミッドを底辺で重ねたような構図を持つ図表。
「よって君達は、見極めねばならない。新入生300人が行うトーナメント方式の〔模擬論戦〕で、誰が自分と組むに値するのかを。映像として記録される模擬戦を見て、誰が自分の命を預けるに足る、信頼出来る人物なのかを判断しなければならない。その判断を冷静に行えるように、裏野近隣に巣くう〔論害〕の積極的排除行動である〔遠征〕に向かい、安全な時間を確保してくれている君達の先輩や〔教師陣〕に、報いなければならない」
そして、
「その上で、それを成せなかった者が退学となる。生き残る可能性の低い者を、ここに居座らせることは出来ないのです」
鎌足が、一虎のもっとも気がかりだった事実を明らかにした。少年の不安に一瞥もくれず、男は続ける。




