退学
午後。高層ビル群すらその内に納めることが出来る超巨大多目的アリーナ。茶色の板張りに模造された床と、円周に沿って巡らされた観客席の中心。仮7組・仮8組合同授業。微妙な距離をとって立ち、しかし互いにチラ見してしまう一虎と深夜がいた。
「「・・・」」
昼食後。午後は同じ場所での合同授業のため別れる必要がなく、他に知り合いもいなかった一虎と深夜は、流れでそのまま行動を共にしていた。しかし互いに妙な意識を抱いてしまった2人は、
「「・・・」」
授業が始まるまで、終始無言を貫いた。
しかし、
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」」
お互い意識してしまい、幾度か視線を合わせてしまってもいた。咳払いする一虎と桜色の頬を背ける深夜に話しかける者もおらず、永遠とも感じられる長い時間が過ぎる。
そして、授業開始のチャイムが鳴った。
一虎がホッと胸を撫で下ろした直後、だだっ広い、白いドーム型天井を持つアリーナの中心に、仮7組と仮8組の生徒達の視線を受けながら、2人の男と拘束された女が進み出た。
男のうちの1人、鎌足が振り返って言った。
「では皆さん。午後の授業は担任のアイン先生との交流、つまり」
鎌足は傍らで無表情に立ち尽くす女、アインを手振りで示し、
「アイン先生と、〔論戦〕を行っていただきます」
ザワッ、と、困惑の広がる音が響き、一虎と赫夜、彼の側に来ていた仮8組の生徒である深夜を包む。なぜだか鎌足の隣に立つ男、律儀に仮8組担任・鞍馬の名札を下げた青年も、
「え?あ?は?そんな話聞いてませんけど!?」
などと狼狽えている。だがそれで鎌足がペースを崩すことはなく、
「おや?何かおかしなことでもありますか?君たちは、〔裏論〕を学びに来たのでしょう?〔論害〕の脅威を退け、裏野で生きていかねばならないはずだ。ならば〔裏論〕による戦闘、〔論戦〕を実際に行うのが、一番手っ取り早く生存力を上げることに繋がる。さらには自分の得意な〔裏論〕を実感することで、その先にある専門分野、〔裏自由七科〕の選択をより確信的に行えるのですよ?」
それに、と鎌足は続けた。
「これから2か月、君達はずっと〔模擬論戦〕を行って、退学になるかどうかを判定されるのです。まだ〔論戦〕を体験したことのない方にとってこれはチャンスですよ?」
鎌足の羅列する幾つもの事実。その中でも、最も衝撃的で予想外だったそれを、一虎は思わず呟いた。
「退、学・・・?」




