鎌足という偉業
「ワシは、鎌足を〔教師〕とした男じゃ!」
汚野は、大きく息を吸い、叫ぶ。
「なぜなら奴も、ワシらと同じだったからじゃ!」
それは、自らの組織の根底にあるモノ。
「命を張って子供達を導き、教えることを志せる人間じゃったからじゃ!じゃからこそ!」
そして、
「ワシゃあ、鎌足の判断を信じちょる!あの場において、あんな行動に出た正当な裏由があったのだと!」
汚野を囲む3組織も、敵対してしまうからこそ、〔教師〕という存在の尊さを知っている。彼らは、ただ子供達を教え、導く。その、たった1つの志の下に集い、身を挺して危険に立ち向かう。
だからこそ、汚野の言葉は重く、
「皆様が都合よくお忘れのようじゃから、言わせてもらう!あの男が赴任して以来、この都市の被害は激減したことを!奴の教育によって、強靭な心身を備えた〔次世代〕が育ったことを!裏野を支えているのは誰かを!かの屍の竜を斬った男と同じ、最大国家戦力たる〔全段〕の称号を与えられた男の名を、改めて示そう!」
汚野の言葉の継ぎ目を見計らい、背後に立っていた鞍馬が腰の情報統合端末を操作。校長の巨躯を覆うように、背後に、幾千もの毛虫型の〔論害〕に単騎で立ち向かう鎌足の戦闘映像、数値化した近年の被害状況の推移、彼が育て上げた〔裏論使い〕の中でも、有数の実力者へと育った〔裏論使い〕達を映し出す。
そして、校長は一転して静かに言った。
「じゃから、待って欲しい。奴の言葉に、耳を傾けて欲しいんじゃ」
それは、真摯な願いだった。
だからこそ、円卓に手を突き、深々と頭を下げる汚野の態度に、誰も声を上げられない。
明らかに非のある部下のためにそこまで出来る男に追い打ちをかければ、それは他組織の攻撃材料になりかねず、愚行に他ならない。
「そこまで言うなら、聞いてやろう。そういう状況に持って行けましたね、校長。な~にが〔ワシ、知らんもん〕、ですか」
〔教師陣〕を囲む組織の感想を鞍馬が小さく簡潔に述べ、
「いつも似たような状況じゃし、慣れたわ。ま、後は、鎌ちゃん任せ。いつも通り、自分のケツは自分で拭いてもらうわ」
精神的な疲労で重くなった巨躯を椅子に沈めながら校長が応える。
そしてついに、
「や、お待たせして申し訳ない」
会議室の扉が開き、腕に包帯を巻いた事件の責任者、全学年主任教員・鎌足縁が笑顔で入室した。彼の登場と、常と変らぬ余裕の表情に、汚野はほんのわずか緊張を解く。そして無頼なスキンヘッドは、祈るように呟く。
「た、頼むで~、鎌ちゃん」
その期待の眼差しにチラリと微笑を向けた鎌足は、
「私は〔立証〕します」
連続して、言葉を放った。




