デーブルの妖精付き
アルベル達の前に忽然と現れたオアシス。
「あそこに馬車をやってくれ!」
アルベルは御者に指示を出すと、御者は馬車をオアシスの近くに止めた。
そのオアシスはまるで‥‥その場だけが別の世界の様に緑溢れる木々を生やしていた。
「以前調べた時にはこの場所にはオアシスは無かったはず‥‥‥」
アルベルが言うとデーブルは地図を見て
「確かに‥‥‥ないですよね。以前はもう少し先にあったはず‥‥‥これではまるでオアシスが移動しているみたいですよ」
「オアシスが移動‥‥‥」
“「チィーユ、何か感じるか?」”
アルベルはチィーユを見て頭の中で言います。
“「ギッシュ、そうね‥‥‥確かに妖精の気を感じるわ」”
“「妖精の気を?」”
“「ええ、けど‥‥‥弱いのよ‥気が。今にも消えかけそう」”
「そうか‥‥‥、デーブル、あちら側を二、三人連れて調べてくれないか。残りは私とこちら側を調べる」
「「「はい!」」」
アルベルの指示で二手に分かれて、オアシスを調べに入った私達。
けど‥‥未だ謎の多いオアシス。
何故、この不毛の地に存在できるのか?
何故、数カ所もあるのか?
何故、場所を移動?しているのか?
他にもわからない事はいくらでもある。
そう思いながらデーブルが調べていると、
「キャアー!!」と女性隊員の悲鳴。
「どうしました!‥‥‥あっ!」
突然地面に開いた巨大な穴に女性隊員が落ちそうになっていた。必死に穴の淵にしがみついて落ちない様にしている。
「待ってて下さい!今助けますから」
デーブルはそう言うと走って女性の元へ。
そして女性の手を取ると‥‥‥なんとか穴の淵から助け出した。
「あ、ありがとうございます」
「い、いえ‥‥‥に、してもなんなんですか?この穴は?」
「さあ?それよりここから離れましょう」
「そうですね‥‥‥‥あっ!」
デーブルが立ち上がろうとした次の瞬間
「カラ‥ガラ‥‥ガラガラガラ!!!!」
デーブルの周りの地面が一斉に崩壊し‥‥
「あああぁぁぁー」
地面の底に落ちていくデーブル。
◇◇◇◇
「カラ‥‥ガラ‥‥」
小さい小石がパラパラと落ちてくる。
その幾つかは、デーブルの頭の上に‥‥‥
「う、うう〜〜ん、どうなって‥‥」
「デーブルさあ〜ん!大丈夫ですかあ!」
デーブルが上を見上げると、光が近くに見えた。つまりそんなに高い所からは落ちてない、て、事だ。しかし‥‥‥10メートルはあるか?
「大丈夫です!」
それにしてもここは?いったい‥‥‥
デーブルが落ちた穴の周りを見渡すと‥‥‥
泡白い物が見えた。
「あそこは‥‥‥オアシスの中心辺りか?」
デーブルは泡白い物に引き寄せられるように歩いていく。
「なんなんだ?これは?」
デーブルの前には手の平に載るぐらいの白い球体が浮かんでいた。しかしその光は今にも消えかけていた。
『あなたは‥‥誰?』
「えっ?まさか?妖精なのか?」
『あなたは?』
「しかも‥‥こんなに弱まっているんじゃないかよ!如何すればお前を元気にする事が‥‥‥」
『無理です‥‥』
「無理じゃない!まだ、何もしてないのに」
『私は‥‥この場を守る‥‥妖精」
「この場‥‥‥じゃあ、このオアシスはお前が‥‥」
デーブルが手の平に妖精を載せるが‥‥やはり光が消えかけている。
『早く‥‥ここから‥‥離れなさい』
「何故?」
『私は‥‥もうダメです‥‥ここも長くは保ちません』
「如何したらお前を助ける事が出来る?」
『無理です‥‥ここから‥‥』
妖精が言う言葉にデーブルは怒り出す。
「無理じゃない!何もしてないのに諦めるな!」
デーブルはそう怒鳴ると両手で妖精を抱きしめると‥‥‥デーブルの目からは一雫の涙が流れ‥‥‥ポタリと妖精に落ちた。
『!‥‥この人は‥‥この人となら』
『わかりました。私は貴方の‥‥貴方のだけの妖精になります』
「えっ?」
そう言うと妖精の‥‥泡白い球体はデーブルの手から離れ‥‥デーブルの前で女性の姿へと変わっていった。
それがデーブルとの初めての出会い‥‥‥
そして私がデーブルの妖精付きになった瞬間でもあった。




