第14話 それでも、復讐する
覚悟を決めた。今日こそだ。
作戦会議は崩壊した。同盟は締結できなかった。暗殺者は剣を磨いた。落とし穴はまたがれた。毒草はなかった。
もういい。正面から行く。今日、宣戦布告する。アレンの前に立って、全部言う。前回と同じだ。あのときは「知ってる」と言われた。今回も同じかもしれない。それでもいい。言う。
朝食の席で切り出した。
「アレン。私はお前に復讐する。今日だ」
アレンが粥をよそいながら言った。
「飯食ってからにしろ」
「……今日だと言っている」
「冷める」
粥を食べた。
昼、フィルが飛び込んできた。
「ディア! 今日の復讐、ぼくも見ていい?!」
「なぜお前が知っている」
「ゴルダさんが言ってた!」
ゴルダが来た。シェイドが来た。リーナが来た。大工と蕎麦屋と養蜂家まで来た。全員が「がんばってください」という顔でこちらを見ていた。
「……全員帰れ」
「えー!」とフィルが言った。
「魔王様……!」とゴルダが言った。
「では」とシェイドが言って先に帰った。
全員が帰った。
夕方、アレンが縁台に座っていた。
私はアレンの前に立った。3度目だった。
「アレン。私はお前に復讐する」
「そうか」
「……今日だ」
「今日か」
「今すぐだ」
アレンが私を見た。私はアレンを見た。
アレンが「飯にする」と言って立ち上がった。
「待て」
アレンが止まった。
「……結局、今日も何もできなかった」
アレンが私を見た。
「毒草はなかった。包丁は料理に使わされた。魔法陣は踏まれた。落とし穴はまたがれた。シェイドは5回見つかった。ゴルダは剣を磨いた。記憶喪失はバレた。武器は全部別の用途に使われた。同盟は締結できなかった。作戦会議は蕎麦を食べて終わった」
全部言った。
アレンが黙って聞いていた。
「それでも——復讐するつもりだ。やめるつもりはない」
「そうか」
「お前は怖くないのか。私がいつか力を取り戻したら——」
「その話を、お前がしてくれるなら」
「……何?」
「力を取り戻したとき、また話せばいい」
私は口を開けた。閉じた。
千年分の言葉が、また全部どこかに行った。怒鳴ろうとした。できなかった。言い返そうとした。出てこなかった。
先日と同じだった。成長がなかった。
「……明日も、復讐計画を考える」
「そうか」
「やめるつもりはない」
「ああ」
「……以上だ」
「飯にする」
2人で台所に向かった。
夕飯は昨日の残りの汁物だった。
2人で黙って食べた。
食べ終えて、私は言った。
「……今のままでも、悪くないと思うか」
シェイドに聞かれたことを、アレンに聞いていた。
アレンが少し間を置いた。
「さあ」
「……さあ、とは何だ」
「お前が決めることだ」
私は椀を見た。
(お前が決めることだ、と言った)
フィルも同じことを言っていた。7歳の子供と元勇者が、同じことを言っていた。
おかしな話だった。
翌朝、目が覚めて最初にしたことは、復讐計画第3章を考えることだった。
やめる気は、まだなかった。
台所からアレンが粥を作る音がした。
温かかった。




