第1話 毒草作戦
毒草から始めることにした。
理由は単純だ。今の私に魔力はない。剣も持てない。策を練るにも手駒がない。ならばまず毒だ。千年以上生きてきた経験の中で、毒草の知識だけは誰にも負けない自信があった。庭に生えているものを調べて、使えるものがあれば朝食に——
庭に出た。
草を1つずつ確認した。スギナ。タンポポ。よく分からない雑草。よく分からない雑草。よく分からない雑草。
ない。
毒性のあるものが、1本もなかった。
雑草まで含めて全部調べた。全部、食べても問題のないものか、せいぜい腹を壊す程度のものだった。丁寧に管理された庭だった。除草の跡があった。アレンが定期的に手を入れているらしかった。
私は庭の真ん中に立って、しばらく草を見た。
作戦終了だった。所要時間15分だった。
「何してる」
振り返るとアレンが立っていた。鍬を肩に担いでいた。
「植物の観察だ」
「ふうん」
アレンが鍬を下ろした。
「興味があるなら畑も手伝えるぞ」
「……興味はない」
「そうか」
アレンが歩き始めた。畑の方へ。私はその背中を見た。
「……どの程度の作業だ」
アレンが振り返らずに言った。
「土を耕すだけだ。難しくない」
難しくなかった。
ただ、重かった。幼女の腕で鍬を振ると、土に刺さる深さが浅かった。アレンの3倍の時間をかけて、アレンの3分の1の面積しか耕せなかった。
アレンは何も言わなかった。自分の区画を黙々と進んで、終わったら私の区画を何も言わずに手伝った。
日が傾く頃、終わった。
夕飯は、今日収穫したばかりの野菜を使った炒め物だった。
(私は何をしているのだ)
箸を動かしながら思った。
(毒草を探しに出て、畑を耕して、野菜を食べている)
アレンが「うまいか」と聞いた。
「……普通だ」
普通ではなかった。採れたての野菜は、甘かった。
翌朝、アレンが言った。
「昨日の続きを頼む」
私は箸を止めた。
「……わかった」
気づいたら農作業の戦力になっていた。




